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AI時代の新常識!
これからの企業成長にはデータガバナンスが不可欠
掲載日:2025/06/10

2025年3月、台湾行政院が政府のIT活用方針に関するイベントを開催し、スマート国家実現の最重要課題としてデータガバナンスを重視することを発表した。デジタル先進国家である台湾でも注目されるデータガバナンスは、国内企業の今後の成長に不可欠なカギとなるだろう。
データガバナンスとは
データガバナンスとは、企業が保有するデータ資産を迅速かつ安全にビジネス活用するための仕組みを指す言葉である。データの分析や収集、保守などを行うための管理体制を定めることで、外部の脅威への対策を行う。
データガバナンスに必要な三つの視点
企業がデータガバナンスを構築する場合、以下の三つの視点からデータの取り扱いを定める必要がある。第一に、正確なデータか否かという点だ。社内のデータは最新であるか、内容に誤りがないかを精査することが求められる。
第二に、データ形式がすぐに活用可能な形式であるかという点だ。データ自体はそろっていても、その形式や種類がそろっていなければ統括して管理できない。データガバナンスを実現するには、データの形式を一定にそろえる標準化の作業が必要である。また、表計算ソフトでデータを扱う場合は、列と行の概念を持った状態への構造化が不可欠だ。
第三に、セキュリティ面の視点だ。サイバー攻撃者が侵入できないような保護された環境でのデータ管理はもちろん、コンプライアンスを徹底し、データを活用する際の全社的なルールを徹底することも求められる。
データガバナンスのメリット
データガバナンスの導入自体にはどのようなメリットがあるのか。最も注目すべきは、従来のデータ管理では得られなかった収益を創出できることだ。顧客やサービス自体のデータを分析することで、属人的な経験則では判断できなかった新たな販売戦略・営業チャネルの開拓などが期待できる。
また、従来はデータを手作業で処理していた企業も、データガバナンスの特性を生かして社内のリソースを無駄なく活用することができる。特に、データガバナンス環境は定型業務のRPA化を実現する土台として相性が良い。
また、情報セキュリティの向上は、情報漏えいによる機会損失や信頼失墜、損害賠償といったトラブルを発生させないためにも必要となる。
企業の経営者は、データガバナンスがトラブルを避けるための手段ではなく、企業力を向上させるための武器であると認識すべきだ。データガバナンスを基盤とした組織に変革することは、新時代において持続可能な企業に成長することを意味する。
データガバナンスの実例

それでは企業におけるデータガバナンスの実例を見ていこう。
数十年先を見据えたデータ基盤を再構築
とある小売系企業では、老朽化したシステムに代わり、社内システム本部で開発したデータ基盤を構築、運用している。
店舗にPOSシステムを導入し顧客の需要分析を進めてきた同社は、近年システムの老朽化により、データのサイロ化が目立つようになった。
そこで、同社は社内のシステム本部自らがデータ基盤を開発することを決断。膨大なデータを一括保存し、種類ごとに自動で分類したのち、ビジネス施策として活用する三層構造でデータを管理する環境の構築に成功した。
この構造はデータへのアクセスに複雑な経路がない分、セキュリティ施策が打ちやすいという特長があるほか、システム基盤にクラウドを活用しており、数十年先の未来も見据えた持続可能性の高い体制を確立している。
スモールスタートから始める労働環境改善
とあるメーカー企業では、今後、全面的なデータガバナンスを導入することを前提に、スモールスタートで取り組みを行っている。
同社はコロナ禍以降自由な働き方を模索していたが、その中でオフィス内の人流データを分析することから新しい労働環境を考えるアイデアが出てきた。
そこで、オフィス内にビーコン端末を複数設置し、従業員のPCやスマートフォンから勤務中のデータを収集する仕組みを開発。回遊ルートやオフィス内の混雑状況などの分析が可能になった。また、Web会議ツールやチャットの利用実績を把握することで、労働状況の改善にも役立てられる。同社はこの施策で得た知見を全社的なDX推進の基盤として、より実践的なデータガバナンスを実現することを今後の目標にしている。
データガバナンスの取り組みとは
データガバナンスを企業が取り入れる場合のコツは、「システム部任せにせず、経営課題として経営者も積極的に施策へ参加する」「最高データ責任者(CDO)を任命し、権限と責任を持って導入を推し進める」「データ品質報奨制度など、従業員がデータガバナンスに積極的に取り組むためにモチベーションアップ施策を打つ」などが挙げられる。すなわち、データガバナンスは全社規模の大きな変革であるといえる。
とはいえ、月額課金制のクラウドサービスなどの導入により、データガバナンスに対応できる基盤づくりのハードルを下げることも可能だ。まずはスモールステップから着手し、確実に変革を進めていきたい。