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AIの発展に影響?
ひそかにささやかれるAIの2026年問題とは

掲載日:2025/07/22

AIの発展に影響? 密かに囁かれるAIの2026年問題とは

高品質なAI学習データが2026年に枯渇するとされる「AIの2026年問題」。この問題は、AIツールの開発や企業のデジタル戦略に大きな影響を与えかねない。本稿ではAIが陥る2026年問題について、その意味や企業への影響、求められる対策まで詳しく解説していく。

AIの2026年問題とは

AIの2026年問題とは、AIの学習に必要なニュース記事や論文などの質の高いデータが枯渇することで、技術進歩が停滞する可能性があるというものだ。プライバシー保護の観点で学習に使用できるデータが少なくなることや既存データが学習し尽くされつつあることなどが背景にある。

まずは、AIの学習メカニズムと2026年問題の発生要因について解説する。

AIの学習メカニズム

AIの学習は、インターネット上に存在するテキスト・画像・動画などを読み込むことで行われ、そのデータは大きく分類すると以下の二種類である。

AIの学習に有効とされているのは高品質データであり、AIサービスを展開している企業やAIの研究機関では、高品質データをなるべく多く確保することが求められる。

高品質な学習データが2026年に枯渇と予想

AIに関する研究機関である「Epoch AI」の調査によると、高品質言語データは2026年までに枯渇すると予測されている。実際、データ提供元のアクセス制限やライセンス契約が厳格化されていることもあり、新たな高品質データは既に枯渇しつつある。また、低品質データや視覚データも2030年以降に枯渇が見込まれている。

AIの2026年問題が及ぼす影響

AIの2026年問題は、「AIツール開発の難易度」、「参入障壁」の二点に影響を与えると言われている。それぞれ詳しく見ていこう。

AIツール開発の難易度上昇

AIが学習する際のデータが不足するため、生成AIの性能向上のペースが落ち着く可能性や、データの使い回しによって汎用性が低下するリスクも否めない。また、AIの性能向上が落ち着くことで、ツールの差別化も難しくなるため、今後ますますAIツール開発の難易度も上昇するだろう。

参入障壁が高まる

学習データについては、小売業や製造業の業務で培われたビッグデータなど、企業内に蓄積された独自データが差別化要素となるため、それらのデータが再評価されるだろう。また、コストをかけないと新規の高品質データが取得できない点からも、資金力がある大企業が有利になりかねない。

このように、企業内に学習データを保有する企業や資金力を持つ企業が、AI開発に有利な状況となるため、今まで以上にAIツール開発の参入障壁も高まるだろう。

AIの2026年問題にどう立ち向かうべきか

AIの2026年問題に対応するため、以下の項目を心がけるとよい。

新規情報源との連携

AIの学習データを確保するためには新規情報源との連携が有効だ。既に通信社や出版社などから高品質コンテンツを有償で取得する試みを行っている企業も出てきている。また音声や動画などの複数種類のデータを組み合わせたマルチモーダルデータや多言語データ、紙データのデジタル化も新たなAIの学習源として期待される。

合成データの活用

合成データとはAI自身が生成する人工データのことを指す。人間自身が作成するオーガニックデータだけでは学習データが不足する場面において、それを補完する手段となる。

ただし、合成データのみで学習を繰り返すと、モデルが劣化して崩壊するリスクがあるとの研究結果も存在するため、あくまでも合成データは補助的役割であり、オーガニックデータとのバランスが重要である。

学習プロセスの変革

学習プロセスの変革も重要である。これまでは事前に与えられたデータセットをまとめて学習する方法が主流だった。しかし、今後はリアルタイム環境で逐次データを学習しつつアウトプットに反映させる方式への転換が期待される。

既に家庭用ロボットの強化学習や対話AIのオンライン学習などについて研究が進んでおり、自ら経験して習得するAIが実現すれば2026年問題の影響は軽減されるであろう。

避けて通れないAIの2026年問題

AIの2026年問題は、今後のAI技術の進歩が停滞する可能性がある重要な課題だ。この問題により、AIツール開発やデジタル戦略が困難になるなどの影響が予測されるため、データの確保やモデル・学習プロセスを見直す必要がある。

自社のクライアントには、AIの2026年問題に対応すべく、早期のデータ戦略の構築や専門特化型AIツールの導入を提案してみるのも良いだろう。