IoT・AI
東京都が発表した「22世紀の予言」
今はどれくらい実現している?
掲載日:2025/09/30

2025年3月、東京都は未来を展望する試みとして、生成AIを用いて100年後の未来を予測した「22世紀の予言」をまとめた。予言では、「地球の外へお引越し」や「瞬間スキルゲット」など22項目に及ぶ未来予測が紹介されている。本記事ではその中でも5つの予測と実現度合いを見ていく。
2025年現在における5つの「22世紀の予言」と実現度合い
早速、東京都が発表した「22世紀の予言」と2025年現在における予言の実現度合いを紹介していく。
天気を操る
予言では「天気を操る」と予測する。説明は次のとおり。
『干ばつに苦しむ地域に雨を降らせたり、日差しを制御して気温を下げたり、台風のエネルギーを巨大風力発電機で吸収するなど、荒ぶる天気から人々を守る』
まず「雨」については、実際に東京都が小河内ダム(奥多摩町)に「人工降雨装置」を設置している。同装置は地上から雨の核となる物質(ヨウ化銀アセトン溶液を燃焼させたもの)を雲の中に送り、降雨を促すというもの。2013年8月には実際に稼働した実績もある。
また「台風のエネルギーを巨大風力発電機で吸収する」について、近いものに「タイフーンショット構想」が挙げられる。同構想では2050年までに「無人航空機からインパクト物資を投下し、台風を減勢」を実現するという目標が掲げられている。22世紀を待たずして台風を制御する時代を目にすることができるかもしれない。
人類総満腹社会
予言では「人類総満腹社会」の到来も予測している。概要は次のとおりだ。
『細胞農業などの技術で人工的に食肉や野菜を製造する工場が普及し、栄養価の高い食べ物が効率的かつ大量に生産され、世界の食糧問題や飢餓問題が解決する』
つまり「食べ物が人工的に製造され、人類全員のお腹が満ちる社会が訪れる」ということになる。既に人工的な食肉である「培養肉」は、2020年にシンガポールのレストランで実際に提供された。また日本でも大阪・関西万博にて培養肉が展示されている。
住所は竜宮城
予言された「住所は竜宮城」の具体的な説明は次のとおりだ。
『陸では味わえない海の幸や深海の資源・海洋エネルギーを活用した新しい自給自足型の海中都市で、海の生物を身近に感じながら、時が経つのを忘れるほど快適な暮らしが実現』
現在、予言で言及された「海中都市」は存在しないが、構想自体は存在する。国内大手建設会社のプロジェクトである「深海未来都市構想 OCEAN SPIRAL」だ。同構想の海中都市は、深海都市のベースキャンプ「BLUE GARDEN」や海底資源の開発・育成などを行う「EARTH FACTORY」などで構成される。海水温度差を利用した発電や深層水を利用した養殖など、深海だからこその機能も搭載される構想だ。
22世紀に実現するかどうかは未知数だが、未来への期待をかき立てられる構想といえる。
五感デリバリー
予言された「五感デリバリー」の詳細は次のとおりだ。
『視覚・聴覚はもちろん、花の香りやペットの手触り、食べ物の味など、離れた人ともまるで同じ空間にいるかのように五感をデータで共有できる』
つまり、五感デリバリーとは「五感の共有」のことを指し、現在、研究開発が進められている。
携帯電話の通信サービスを提供する大手企業では、触覚や味覚などを共有する取り組みを推進中。味覚の共有に関しては、共有したい味の分析&数値化および共有相手の味覚の感じ方を推定したうえで、デバイスで味を再現して相手に共有してもらう。同企業によると、2020年代後半に限定的なサービスを開始、2030年頃の本格的なサービス開始を予定しているという。
五感デリバリーにより、例えば「海外の現地料理の味を自宅で楽しむ」「自宅で南極や月にいる感覚を味わう」などの体験が実現されるかもしれない。
ゴミが消えるゴミ箱
予言の「ゴミが消えるゴミ箱」の概要は次のとおりだ。
『家から出るゴミはすべて自動で分別・資源化し、新たな製品に再利用される。都市全体の自動化リサイクルシステムにより、廃棄物が完全にゼロになる』
ゴミが完全に消えるゴミ箱は存在しないが、生ゴミの量を減らせる「生ゴミ処理機」は販売されている。製品によっては生ゴミを約90%減量し、それを有機質肥料としても活用できる。とはいえ、現状の生ゴミ処理機は予言でいうところの、種類を問わずゴミを放っておけば「自動で分別・資源化するゴミ箱」とは言えない。ゴミが消えるゴミ箱の実現はもう少し先の話になることだろう。
着実に進む研究開発

「22世紀の予言」の未来予測は夢のような話ばかりと感じるかもしれない。しかし、本記事で紹介したとおり、予言を実現し得る構想や研究開発は着実に進められている。予言のうちいくつかは22世紀中に現実化しても決して不思議ではないだろう。