生成AIの活用により営業職は、営業資料の作成やメール文面の整形などの作業を大幅に効率化できる。だからこそ営業職には、コミュニケーション能力によって信頼関係を築き、クライアントの意思決定を後押しする力が求められる。この力は生成AIが代わることはできない。

とはいえ、生成AIはより良好なコミュニケーションをサポートするツールになり得る。例えば、事前にクライアントの情報を生成AIに入力して雑談内容をシミュレーションしたり、提案時に想定される質問への回答例を準備したりしておくことで、コミュニケーションの質を向上させることができるだろう。

マーケティング業務において生成AIは、コンテンツ作成やデータ分析などさまざまな作業で大きな威力を発揮する。そして、これらの煩雑な作業を生成AIで効率化することで、マーケティング職はマーケティング戦略や施策の立案によりリソースを割けるようになる。

さらにマーケティング戦略や施策の立案にも生成AIは活用できるだろう。例えば消費者心理や市場環境の分析も生成AIを用いることで、より有効な示唆を得られるかもしれない。

一方、その示唆を戦略や施策として落とし込む工程は人間であるマーケティング職の手腕が試される。今後のマーケティング職は、生成AIで得た情報や洞察を具体的な戦略や施策として練り上げる力が求められるということだ。

生成AI時代のデザイナー職に求められるのは、生成された出力結果をクライアントのニーズ・要望に応じて選定・編集して、さらなる改善を重ねる能力である。

そのためにはクライアントの潜在ニーズを探る力やそれを引き出すためのコミュニケーション能力も付随して必要になるだろう。

経理職については、生成AIによって各種決算業務や請求書処理など、膨大なデータ処理を伴う業務や定型業務の効率化を図ることができる。

一方、経理業務の中には生成AIが代替できない業務も少なくない。例えば、最新の会計基準への対応やイレギュラーな取引の会計処理判断などが挙げられる。

これらの業務を遂行するためには、経理領域における高度な知識が必要である。だからこそ、生成AI時代においては、経理に関する専門性を磨く人材が重宝されることだろう。

人事職は「キャリアひいては人生」に直結する重要な領域を業務内容に持つ。従って、適切に生成AIを用いるための高いAIリテラシーが求められる。

生成AIなら感情を排して公平な人事評価ができると考える人事担当者もいるだろう。だが、AIを設計するのは人間であり、その出力には設計者の意思や考えが反映される可能性がある。

上記はあくまでAIリテラシーの一例である。こうした生成AIに対するリテラシーを人事職が持っていれば、生成AIに依存し過ぎずに適切な運用ができるはずだ。

情報システム部門は、他職種よりも生成AIを使いこなす能力が求められる。システム開発やヘルプデスク業務、IT機器の調達・管理など多くの業務を生成AIによって効率化し得るからだ。

例えばシステム開発においてはシステムの要件作成やソースコードの自動生成など、多くの工程で生成AIを用いることができる。またヘルプデスク業務は生成AIを活用したチャットボットを導入すれば、その大半を代替できる可能性があるだろう。

このように多くの場面で生成AIを活用し得る情報システム部門においては、例えば先述した「プロンプトエンジニアリング」のスキルや「生成AIの仕組みの理解」、業務内容によっては「AIに関するプログラミングスキル」など、生成AIにまつわる広範な知識と能力が必要だ。

生成AI時代においては職種によって求められるスキルはさまざまだ。例えば、職種別に生成AIに関する社内研修や知見交換などを積極的に行うことで、より生成AIを使いこなせる組織へと変革を遂げられる可能性がある。