中小企業

育児・介護休業法改正
企業が取るべき対応とは

掲載日:2025/10/07

育児・介護休業法改正で企業が取るべき対応とは

女性の社会進出や少子高齢化に伴う労働力不足や介護問題を背景に制定された育児・介護休業法。本法律は複数回改正されており、2024年5月31日に改正内容が公布された。本稿では育児・介護休業法の改正内容や企業が取るべき対応まで詳しく解説していく。

育児・介護休業法の概要

育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)は、労働者が仕事と子育て・介護を両立できるよう支援するための法律である。

本法律は育児や介護に関わる休業制度や休暇取得の権利、さらにはそれらに向け企業が実施すべき措置を規定し、労働者の雇用継続と職場復帰の促進を主目的としている。2024年5月31日に公布された改正内容は、2025年4月1日に施行された(一部10月1日施行)。

育児・介護休業法の改正内容

同法の改正内容に関してについて主要な六つの内容を解説する。

所定外労働制限の対象を拡大

残業免除の請求対象は、今まで3歳未満の子を養育する労働者であった。今回の改正では、小学校就学前の子を養育する労働者にまで対象が拡大され、子育てと仕事の両立に対する選択肢が広がることが期待される。

短時間勤務制度の代替としてテレワークを追加

3歳未満の子を養育する労働者は、これまで短時間勤務制度の代替措置として「育児休業に関する制度に準ずる措置」と「始業時刻の変更等」の二つが選択できた。しかし今回の改正で、さらに第三の選択肢としてテレワークも選択できるようになった。

育児が理由のテレワークを促進

3歳未満の子を養育する労働者に対し、育児が理由のテレワークを柔軟に選択できるよう配慮することが必要になった。これにより、子育て環境の改善が期待される。

育児休業取得状況の公表義務企業を拡大

育児休業取得状況の公表義務がある企業は、これまでは従業員数1,000人超の企業であった。しかし、今回の改正で従業員数300人超の企業まで拡大された。「男性の育児休業等の取得率」か「育児休業等と育児目的休暇の取得率」の公表が必要で、男性育休取得と両立支援の促進が狙いである。

介護離職を防止するための雇用環境整備

介護休業や介護両立支援制度などの申請を促進するため、事業主は研修や相談体制の整備など四つのうちいずれか最低一つを実施しなければならない。

育児との両立について個別で聞き取り・配慮が必要

労働者本人か、その配偶者が妊娠・出産を申し出たタイミング、もしくは労働者の子が3歳になるまでの時期に、勤務時間帯や勤務地など四項目で労働者の意向を個別聴取しなければならない。

育児・介護休業法の改正に企業が取るべき対応

上述した育児・介護休業法の改正に対して企業としてはどのような対応を行うべきなのだろうか。

改正内容の把握

まずは、育児・介護休業法とその改正内容自体を十分把握しておかなければならない。特に企業の人事・総務担当者は、同法の改正により新たに義務化される要件を理解したうえで社内規則の整備が必要である。従業員への周知徹底や社内教育に加え、休業取得実績を開示する準備も不可欠だろう。

また、時短勤務やテレワークは他社の事例を参考にすると良いだろう。育児・介護休業を取りやすい雰囲気作りや職場復帰しやすい環境作りなど、仕事と育児・介護の両立を応援したい企業にとっては示唆に富んだ内容が豊富である。これらの事例集は厚生労働省、経済産業省のHPから確認することができる。

業務体制の見直し

育児・介護休業法改正で、労働者は育児・介護を理由に休業や時短勤務・テレワークをやりやすくなった反面、企業ではこれまでのやり方では業務が回らない可能性が出てきた。そこで、育児・介護休業法に対応すべく業務体制を見直さなければならない。

場合によっては、業務プロセスの見直しやITツールの新規導入も視野に入れる必要がある。必要に応じて補助金も活用すると良いだろう。

業務体制の見直しが不可欠

育児・介護休業法の対象が拡大したことや、育児や介護を理由としたテレワークの推進など、仕事と育児・介護を両立したい労働者にとっては有利な改正内容が多い。ただ、経営サイドにとっては改正内容を前提に業務体制を整備しなければ業務遂行や従業員確保に影響が出かねない。

自社のクライアントには、育児・介護休業法に対応すべく社内システムの見直しやより優れたITツールの提案を行ってみるのも良いだろう。