ワークスタイル改革
もはや「四季」ではなく「五季」!
異常気象に企業はどう対処すればいい?
掲載日:2025/10/21

最近は暑さも落ち着き、秋の訪れを感じる時期となったが、今年の夏の暑さには苦労した方が多いだろう。もはや春夏秋冬の「四季」ではなく夏の猛暑も含めて「五季」と呼ぶ方がふさわしい。地球全体で進む温暖化や気候変動により、ビジネスモデルや労働環境にも影響が出ている昨今、いま一度五季に伴うビジネスの変化や対応事例を振り返っておこう。
温暖化で季節の気温が変化
従来、「日本には四季がある」と言われてきた。暦上は、立春(2月3日頃)からが春、立夏(5月5日頃)からが夏、立秋(8月7日頃)からが秋、立冬(11月7日頃)からが冬。
気象学的には、3月からが春、6月からが夏、9月からが秋、12月からが冬となっている。制服などの衣替えもこれに合わせて、6月から夏服、10月から冬服とするのが一般的だった。
しかし、近年温暖化の影響で、夏の時期が長くなり、春秋が短い傾向になっている。地域にもよるが、10月の前半はまだ半袖で過ごせることも多い。

2023年は9月の日最高気温の月平均は31.2℃、2025年の9月も31.2℃となっており、9月はまだ夏と考えた方がよい気温になっている。そこで、ある大手アパレルメーカーは、商品化計画における分類軸「MD区分」で「春・夏・猛暑・秋・冬」の五季という新しい季節区分を提唱している。

アパレルメーカーが提唱する五季
20年ほど前は50日程度あった秋物衣料の販売期間が、現在は30日程度に短縮している。6月下旬から7月にかけて夏物のバーゲンがあり、その後は徐々に秋物の販売が始まっていたが、この気候では8月や9月頭はまだまだ夏物がほしいと思う人は多いだろう。イタリアの大手ファッションブランド企業では夏物セールの開始時期を7月頭から中旬以降に変更した。
五季の夏~猛暑である5月~9月の間、同じ製品ラインアップでは購入する人もいなくなるため、それぞれの時期に合った製品が販売される。
猛暑には、接触冷感素材や速乾性、通気性のある素材の洋服が並ぶ。主に外で作業をする人に好まれていた電動ファンが付いた洋服にファッション性を持たせたものも開発されている。
秋に差し掛かる頃には、透け感のある薄手の生地で、色味やデザインだけ秋を感じさせるブラウン系や暖色系を増やす。
アパレル業界では季節を先取りすることが慣例になっていたが、気候変動により、その時期の気温に合ったラインアップにシフトしている。8月9月の商品を夏物にシフトしたことで、売上がアップしている店もあるという。
食に関する五季
国内大手食品・化学メーカーのある企業は、2025年から五季に関するプロジェクトを開始した。五季の考え方はアパレル同様で、夏と秋の間を5番目の季節として「まだなつ」と呼称している。
9月の残暑で食欲がない、料理をする気力が湧かないと訴え、それに伴う栄養不足、心身の不調を訴える人も少なくない。
また、農作物の収穫期がずれてきていることも考慮し、同企業は現在の9月に収穫できる素材と自社の商品を用いたレシピを展開している。
暑さによる働き方改革

猛暑の影響を最も受けやすいのが屋外での作業が必須となる業種である。厚生労働省の調べでは、直近5年の熱中症による労働災害の死者数が最も多い業種は建設業だ。農業などは、どんな暑さであっても仕事を止めるわけにはいかないが、道路舗装などの土木工事については対策が考えられている。
国土交通省は、地方整備局発注の全国の土木工事を対象として、「夏季休工」を導入する方針を固めた。これは、真夏の1~2カ月程度、現場作業を休むというもので、工期が2026年の夏にかかる工事から試行的に始められる。
既に、宇都宮国道事務所が独自に試験導入し、請け負った工事業者には、「社員の健康管理に寄与した」「お盆期間以外にも休暇が取得しやすくなった」などと、好評だという。
受注業者は、工事がない期間を従業員の休暇や資材の準備にあてられる。しかし、日雇い労働者の仕事が減るという課題もある。休工期間以外にも、日中を避け、早朝や夜間に作業をずらすなどの暑さ対策が行われている。
上記以外にも、住宅メーカーが遮熱塗装の使用やグリーンカーテンの設置によって猛暑対策を行ったり、観光業界が避暑ビジネスを展開したりしている。
地球温暖化については、環境面でも改善策が進められているが、1年後2年後にすぐその効果が出てくるものではない。まずは、社内体制の見直しで、暑い時期をしのぐ方法を考えていかなければならない。
一般企業でも、暑い時期のリモートワークや時差出勤を考えていくべきだろう。