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トヨタの実証都市「ウーブン・シティ」ってどんな都市?
掲載日:2025/11/11

2025年9月25日、構想から5年の時を経て静岡県裾野市にトヨタの実証都市「ウーブン・シティ」が開業した。同都市のコンセプトの一つが「実証実験の街」だ。一体どんな都市なのだろうか。
ウーブン・シティとは
トヨタの実証都市「ウーブン・シティ」とは、一言で表すと「未来の当たり前をつくるテストコース」だ。ウーブン・シティはトヨタの私有地である。そのため、公道では困難な自動運転や信号とモビリティの連動など、次世代の技術やサービスの実証実験が行える。
さらにテストコースとしての機能面も注目に値する。ウーブン・シティでは、天候や気温などに左右されない「地下の道」や街路灯・信号柱が設置されているほか、実証で用いるセンサーやカメラを取り付けられる「多機能ポール」などがあり、さまざまな実証実験を行える環境が整備されている。
ウーブン・シティが目指す「カケザン(Kakezan)」
ウーブン・シティの特長の一つが、同都市が目指す「カケザン(Kakezan)」による発明だ。カケザンに参画するのは「インベンター(Inventors/発明家)」および「ウィーバーズ(Weavers/住民・ビジター)」の二者。どちらもウーブン・シティ独自の名称だ。
インベンターはウーブン・シティを活用して新たなサービスおよびプロダクトの開発・実証を行う企業・個人のこと。ウィーバーズはウーブン・シティに住む人、および訪れる人のことである。
各インベンターが持つ強みや専門性を掛け合わせることで一社や一人では創り出せない新たな価値をつくり、それをウィーバーズが試す。その感想を基にインベンターが改善を図っていく。このサイクルによる発明がウーブン・シティの目指す「カケザン」である。トヨタでよく知られる単語に「かんばん方式」があるが、将来的にはこの「カケザン」がトヨタを象徴する単語の一つになるかもしれない。
では、具体的にどのような「カケザン」が生まれるのだろうか。2025年10月時点で参画が決まっている三つのインベンターの実証実験を見ていこう。
「最適化栄養食」を継続的に食べたくなる仕組みの構築へ
国内大手の食品メーカーでは、ウーブン・シティにおいて主要な栄養素をバランス良く調整した「最適化栄養食」を用いた実証実験を行う。具体的にはウィーバーズによるフィードバックを「最適化栄養食」メニューの開発に生かしたり、同メニューの継続的な摂取が心身の変化や医学的検査などの客観的指標にどの程度影響を与えるのかを検証したりする。なお、実証ではトヨタの次世代モビリティ「e-Palette」も活用し、ウィーバーズが継続的に「最適化栄養食」を食べたくなる仕組みの構築も目指すという。「食×モビリティ」といえばキッチンカーが思い浮かぶが、そうした既存の形態とは異なるモデルができるのだろうか。
AIも用いてコーヒーが人に与える影響の解明を目指す
国内大手コーヒーメーカーではウーブン・シティ内にカフェを開業し、コーヒーが持つ新たな可能性を探る。同カフェでは、実験参加者の様子をカメラで捉え、AIによる画像解析や参加者自身の気持ちの主観評価などを実施し、店舗環境やコーヒーが及ぼすポジティブな影響を解明する。また将来的には「コーヒーを習慣的に飲み続けることで心や身体の健康に生じる変化の調査」や「コーヒーが介在することでヒトのコミュニケーションに与えられるポジティブな影響の調査」も計画している。なお、実証ではウーブン・バイ・トヨタ株式会社の技術を活用する。
真っ白な自動販売機の活用検証
国内大手清涼飲料水メーカーでは、「自動販売機を通じた新たな価値創造」を実証テーマとしてさまざまな取り組みを画策している。同社は取り組みの第一弾として商品サンプルやボタン、コインの投入口がない自動販売機「HAKU(ハク)」をウーブン・シティに設置した。「HAKU」という名前のとおり、取り出し口以外は真っ白な自販機である。同社はこの新しい発想の自動販売機がウィーバーズにどのように活用されるのか、検証を進めるとしている。
実証都市ウーブン・シティの今後

2025年10月時点では、トヨタ関係者しかウーブン・シティに住むことができない。しかし、ウーブン・シティ公式サイトでは「トヨタや関係者から入居をはじめ、徐々に様々な方々にも参加をいただく予定です。」としているため、今後の動向に期待したい。
ウーブン・シティで行われる各種実証実験が未来の当たり前の出発点になる可能性は大いにあるため、ウーブン・シティの最新情報は随時チェックしておきたい。