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マイナンバーカード発行開始から10年
結局何ができるカードなの?
掲載日:2025/11/25

2016年から発行が始まったマイナンバーカード。2025年9月末時点では、人口に対する保有枚数率が約80%に達するなど普及が広がっている。一方でその機能について全てを把握する利用者は少ないのではないだろうか。そこで本稿ではマイナンバーカードの見逃せない機能についてあらためて紹介する。
マイナンバーカードの基本機能
マイナンバーカードは顔写真付きの公的な身分証明書である。そのため、国内においてはパスポートや運転免許証と同等の信頼性を持つ最高位の身分証として活用可能だ。個人を特定する書類として、携帯電話やクレジットカードの契約、雇用契約、各種行政手続の申し込みなどに使用することができる。
パスポートの発行は最低6,000円、運転免許証の発行は最低3,450円の費用が必要なのに対し、マイナンバーカードは無料で発行できる点もメリットだ。
また、行政手続のオンライン窓口である「マイナポータル」にログインするためには、マイナンバーカードが必要である。マイナンバーカード対応スマートフォンやICリーダーでマイナンバーカードの情報を読み取ることにより、転入届の提出やパスポートの取得・更新申請、公金受取口座の登録などが可能だ。
さらに、全国のコンビニに設置されたマルチコピー機でマイナンバーカードの情報を読み取らせることにより、公的な証明書を発行することも可能である。具体的には、住民票の写し、印鑑登録証明書、戸籍謄本などを発行可能だ。ただし、自治体によって一部異なる場合がある。
役所と異なり多くのコンビニは定休日無しの24時間営業なので、役所が閉庁している土日祝日や深夜でも証書を取得できることもメリットの一つだろう。
健康保険証としての利用が可能
2021年3月からはマイナンバーカードに健康保険証の機能が付与され、プレ運用が開始された。同年10月から本格運用がスタートし、2025年9月現在は全国の病院で約35%の利用率を記録するほど浸透が進んでいる。
マイナンバーカードの健康保険証としての利用、すなわちマイナ保険証のメリットは、マイナポータルに記録された情報を基に、より適切な医療の提供が可能になることである。これは、マイナポータルに利用者の診療・薬剤データが記録されており、医療機関はそれを確認することで必要な情報をスムーズに把握することが可能になるためだ。
患者の診療・薬剤データは、適切な医療判断を下すために非常に重要な情報である。しかし、その内容は専門的かつ複雑で、患者自身が説明をすることは困難だ。マイナポータルに記録された情報を自動的に医療機関へ提供することは、人為的なミスを減らし医療の確度を向上することにつながると期待されている。
なお従来、医療機関の窓口で高額な医療費を請求された場合は、支払い後に申請することで自己負担額の上限を超えた額が払い戻される高額療養費制度という制度がある。払い戻しがあるとはいえ、一時的に高額の医療費を支払うことは患者にとって大きな経済的負担になりかねない。
しかし、マイナ保険証を利用した場合は、前述の申請や立て替えが省略され、上限額を超える額の支払いが免除される。上限額は年齢や所得水準によって変動するものの、高額な医療費をリスクなく減額してもらえることは大きなメリットだ。
確定申告手続きの効率化が可能
ビジネス面における有効活用法としては、確定申告時の手続き効率化が挙げられる。個人事業主や経営者はもちろん、いわゆる「給与所得者」でも一定水準以上の給与を受け取っている場合は確定申告の手続きが毎年必要である。
従来の確定申告は、多数の記入書類と領収書などの補助書類を用意し、税務署に持ち込みあるいは郵送するなどの手続きが必要であった。しかし、マイナンバーカードを使った「e-Tax」と呼ばれる国税申告システムでは、どんな場所からでも必要情報を電子提出することが可能である。また、事前に給与情報や控除情報がひも付けられている場合はそれらの内容がe-Tax内に自動入力されるため、書類作成の手間がかからずミスも少ない。
今後活用が期待される機能とは

2025年10月からは「マイナ救急」がスタートした。これはマイナ保険証同様に、マイナンバーカードに記録された情報を救急搬送時に処置の参考にするというものである。救急搬送が必要な際は、患者本人がコミュニケーションを取れなかったり、家族がパニックを起こして状況をうまく伝えられなかったりという事態が考えられる。そのような事態でも円滑な搬送先選定や病院での治療準備などが進みやすくなるという仕組みだ。
マイナンバーカードは今後も活用の幅が広がると予想されている。特にビジネス分野での活用が期待される機能として、マイナンバーカードを使用した公的個人認証サービスを紹介したい。これはマイナンバーカードに登録された電子証明書を利用することにより、オンラインで利用者本人の認証や契約書などの文章が改ざんされていないことを公的に確認する機能だ。
この機能が一般に広がった場合、例えば今日においては企業が自前で用意しているIDカードなどをマイナンバーカードに置き換えることができる。機器の利用権限などを管理するにあたり、従業員が自前のマイナンバーカードを使用して認証するシステムを構築すれば、大幅なコストカットにつながるだろう。また、個人のタスクや経理データなどもマイナンバーカードにひも付けられて一元的な管理が可能になれば、大きな負担軽減につなげることができる。
なお、当初2026年度中の切り替えが予定されていた「次期個人番号カード(通称新マイナンバーカード)」だが、2025年6月の閣議決定で導入時期が2028年に延期されることが決まった。そのため、「新マイナンバーカードが導入されてから作ろう」と及び腰だった方もぜひ、早急に発行することをおすすめしたい。