官公庁・文教
史上初の女性総理大臣が誕生
高市政権が市場に与える影響とは?
掲載日:2025/12/02

2025年10月21日に高市早苗氏が第104代内閣総理大臣に就任した。日本の憲政史上初となる女性総理大臣として世界中から注目されており、高市政権の経済政策に期待する声も大きい。本稿では高市政権の政策が市場に与える影響やビジネスチャンスが期待される分野まで詳しく解説していく。
高市政権で市場が注目すべき主な方針
ここでは、高市政権で市場が注目すべき主な方針について、「積極財政」「経済安全保障」「既存人材リソースの活用」の三点を解説する。
積極財政
高市政権は「責任ある積極財政」を掲げ、防衛などの危機管理分野や宇宙などの成長分野に重点的に投資を行うことや、「年収の壁」引き上げなどで手取りを増やすことを重視している。これは、税収増で経済成長とデフレ脱却を図ることが目的である。
また、単年度プライマリーバランス(PB)の黒字化目標を見直し、数年単位で健全性を確認する方式へシフトする方針である。
経済安全保障
高市氏はかつて内閣府特命担当大臣(経済安全保障担当)だったため、経済安全保障に関しても豊富な知見を有する。そのこともあり、経済の自立性・優位性・不可欠性を確保するため、経済安全保障の強化も重視している点が特徴である。
例えば、海外からの投資を厳格に審査する対日外国投資委員会で、外資系企業の活動が過度に日本に影響を与えないよう監視する。また、官民連携で核融合やAIなど安定した経済活動に貢献しうる分野の強化も図る。
既存人材リソースの活用
高市政権では、既存人材リソースの活用も重視している。例えば、労働時間規制には労働者を守る目的があるものの、人手不足を引き起こす要因となっているため、長時間労働で稼ぎを増やしたい労働者にとっては不満の種でもあった。
そこで、心身の健康維持と労働者の選択を前提とした労働時間規制緩和の検討に着手した。また、専門性が高い人材を育成するための教育改革や、介護・育児離職への対策、さらには「攻めの予防医療」なども注目点である。
市場の反応
高市政権の発足で、「高市トレード」と呼ばれるほど市場に大きな影響が生じた。その影響と市場の反応について以下で解説していく。
株高
高市氏はこれまで積極財政や成長投資などを掲げており、経済界からの期待も大きかった。その期待から、2025年10月4日に高市氏が自民党総裁に選出されると株価の上げ幅が2,100円を超えるなど、「高市トレード」と呼ばれるほど株価が高騰した。
ある投資情報サイトの調査では、64%もの回答者が「高市政権の政策に期待して株価が上昇した」と答えている。
円安
高市政権が積極財政をうたっていることや、日本銀行の金融緩和が長期化するとの観測から、市場では円安の傾向が強まっている。また、アメリカのいわゆる「トランプ関税」がドル高の要因となり、結果的に円安につながるであろう。今後は政府と日本銀行の方針にもよるが2025年末のドル円は「150~155円」と見込む声も多数上がっている。
債券安
金融緩和や積極財政政策に伴い、超長期国債に売り圧力がかかったことで債券安(債券価格の下落)が発生し、30年国債利回りが過去最高水準まで上昇した。この背景には国債増発や財政悪化への懸念、さらにはインフレ傾向の予想がある。特に、超長期ゾーンの金利に上昇圧力がかかりやすい状況であるため、今後の財政規律に注目が必要である。
ビジネスチャンスの拡大が期待される分野

ここでは、高市政権でビジネスチャンスの拡大が期待される主要分野について解説する。
自動車
日本自動車工業会の調査によると、2023年の日本の四輪車生産台数は889.9万台で、うち442.3万台が輸出された。このように、日本の自動車産業は強力な輸出産業であるため、円安の傾向が強い高市政権では有利になる可能性が高い。
インフラ
インフラ分野も注目分野で、国土強靱化基本法に基づき、今後2026年度から5年間で総額20兆円強が投じられる予定である。今後老朽化が進むインフラの整備やライフラインの強化など、自然災害に強い社会構築を目指す取り組みが行われるため、インフラ業界にとってはビジネスチャンスであろう。
AI
高市氏は「AIサナエ」を公開するなどAI活用にも前向きで、国防強化や国際競争力向上を目的に、成長産業として重視している。欧州ではAI規制が進むものの、日本では積極的な支援策が期待されており、AI関連企業のビジネスチャンス拡大が見込まれる。
変化し続ける市場で生き残るために
高市政権の誕生に伴い、日本経済は大きな転換点を迎えた。高市政権は、積極財政・経済安全保障の強化・既存人材の活用などを方針として示しており、この方針は多くの産業に影響を与えうる。
市場では「高市トレード」と呼ばれるほど市場に大きな影響が生じ、株高・円安・債券安の傾向がみられた。市場の変動や高市政権が重視している政策を考慮すると、今後は自動車やAI、防衛などの各分野でビジネスチャンス拡大が見込まれる。
自社のクライアントには、高市政権誕生に伴う市場への影響や成長が見込まれる分野を踏まえた事業戦略を提案してみるのも良いだろう。