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ガートナーが発表した
「2026年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド」
掲載日:2026/01/13

2025年10月28~30日に開催された「Gartner IT Symposium/Xpo 2025」において、ガートナージャパン社は、企業や組織に重要なインパクトを与える「戦略的テクノロジのトップ・トレンド」を発表した。IT分野における流行や新技術を取り入れるためのヒントが多く含まれており、AIやセキュリティなど、中小企業にとっても無視できない内容となっている。
2026年のトップ・トレンドはAI中心
Gartner IT Symposium/Xpo 2025で、ガートナージャパン社が発表した「戦略的テクノロジのトップ・トレンド」。2026年、企業・組織にとって重要となるであろう10のトレンドを解説している。

2022年11月にOpenAIがChatGPTをリリースしてから一気にAIの活用が広がっているが、2026年のトレンドもAIが中心になるとみられる。また、サイバーセキュリティも重要な課題だ。
これらのトレンドを一つずつ見ていこう。
AIネイティブ開発プラットフォーム(AI-Native Development Platforms)
AIネイティブとは、AIがコアに組み込まれたシステムを指す。ソフトウェア開発もAIネイティブなプラットフォームを用いることで、これまでより迅速、容易に進められるようになる。
従来抱えていた大規模な開発チームは不要になり、小規模な開発チームで、非テクノロジー領域の従業員でもソフトウェアを開発することができる。ガートナージャパン社は2030年までに80%の組織が大規模なソフトウェア開発チームを小規模で機敏なチームに進化させるだろうと説く。AIネイティブな開発環境が構築できれば、中小企業にもチャンスが広がると考えられる。
AIスーパーコンピューティング・プラットフォーム(AI Super Computing Platform)
スーパーコンピューターは、CPU、GPU、AI ASIC、ニューロモルフィック・コンピューティングなどを統合して「AIスーパーコンピューティング・プラットフォーム」となる。強力なプロセッサーや大容量メモリー、新しいレベルのパフォーマンスなどにより、機械学習、シミュレーション、分析などの領域で複雑なワークロードに対応する。
既にさまざまな業界で推進されており、数年単位の時間がかかっていた創薬が数週間で実現できるようになったほか、異常気象の予測などにも用いられる。
マルチエージェント・システム(Multiagent Systems)
マルチエージェント・システムとは複雑な目標を達成するために作用するAIエージェントの集合体を指す。企業が複雑なビジネスプロセスを自動化し、人間とAIエージェントの新しい連携の在り方を創出する。これによりビジネス効率を高めながらリスクを軽減する。
ドメイン特化言語モデル(DSLM:Domain-Specific Language Models)
一般的なLLM(大規模言語モデル)は専門的なタスクに対応できないことがある。ドメイン特化の言語モデルは特定のデータセットでファインチューニングしたモデルで、専門分野領域の知識や推論能力を向上させたものだ。ターゲットとするビジネスニーズに対し、汎用モデルよりも高い正確性、信頼性、コンプライアンスが提供される。
ガートナージャパン社は、2028年までに、企業の使用する生成AIの半数以上をDSLMが占めると予測している。
フィジカルAI(Physical AI)
従来のAIは主にサイバー空間での処理を行うものだったが、フィジカルAIはロボット、ドローン、スマートデバイスなどを用いて現実世界での具体的な作業を行う。
先制的サイバーセキュリティ(Preemptive Cybersecurity)
日本では2025年5月にいわゆる「能動的サイバー防御」に向けた関連法が成立した。サイバー攻撃を未然に防ぐために攻撃の兆候を検知し、攻撃者を特定して排除するものだ。
企業、組織も同様にプロアクティブな防御に転換することが好ましい。それには、AIで強化されたセキュリティ運用で脅威を阻止、妨害し、攻撃者を欺く必要がある。この予測こそが防御になるとガートナージャパン社は説く。
デジタル属性(Digital Provenance)
デジタル属性とは、ソフトウェアやデータ、プロセスの出所、所有者、完全性を検証する能力を指す。ソフトウェア部品表(SBOM)、認証データベース、デジタル・ウォーターマークなどの新しいツールでデジタル資産を検証、追跡できるようになる。
ジオパトリエーション(Geopatriation)
組織のデータやアプリケーションなどを、パブリック・クラウドから各国の法律や規制に準拠したソブリン・クラウドや地域のクラウド・プロバイダー、自社データセンターなどに移設する動きがある。
地政学的なリスクの高まりや国、地域によるルールの変化などに伴うものだ。これまで政府機関や金融機関に限定されていたソブリン・クラウドは、いまや幅広い組織に影響を与えている。
AIセキュリティ・プラットフォーム(AI Security Platforms)
サードパーティー製やカスタム構築したAIアプリケーションを一元的に可視化し、使用ポリシーを適用するプラットフォーム。プロンプト・インジェクションやデータ漏えいなどAI特有のリスクを回避する。
コンフィデンシャル・コンピューティング(Confidential Computing)
パブリック・クラウド内での処理中にハードウェアベースでデータを隔離できるクラウド・コンピューティングテクノロジーのことである。AWS(Amazon Web Services)は「特別なハードウェアとファームウェアを使用することで、処理中のお客様のデータやコードを外部アクセスから保護すること」と定義している。
外部からデータを守るだけでなく、ハードウェアに物理的にアクセスできる人に対しても機密性を保持できる。
今後の展望

ガートナージャパン社は、これらのトレンドはおおよそ5年以内に達成すると見込んでいる。
まずは大企業や政府、自治体が先行して取り入れていくことが予想されるが、中小企業でも徐々に導入しやすくなりそうな技術も多い。近年の技術進化は急速なため、常に最新の情報をつかんでおきたい。