業務改善

業務改善に利用したい生成AI
導入に失敗しないためには?

掲載日:2026/01/20

業務改善に利用したい生成AI! 導入に失敗しないためには?

企業が成長するためには、AIの活用が不可欠といわれるようになってきた。実際に、生成AIの導入を進める企業も増えている一方、期待した成果が出ていない、逆に時間やコストがかかるだけでマイナスの効果を生み出すケースもあるといわれる。
失敗事例を通じて、自社への生成AI導入を成功に導く方法を考えていこう。

生成AIの活用は広がっている

Ragate(ラーゲイト)株式会社が、2025年12月に行った「企業における生成AI導入状況レポート」では、業務への生成AI導入率は約4割となっている。正式導入した企業は21.4%、一部の部門・プロジェクトに限定導入している企業は17.7%、試験運用段階が8.2%という内訳だ。

ツールのシェアは、以下のとおり。

「日本国内のビジネスパーソン(勤務先における生成AI活用について回答可能な方)」を対象としたインターネットリサーチのため、母集団に偏りがある可能性は否定できないが、デスクワークでは生成AIの活用が広がっているとみて間違いないだろう。

生成AIでの成果は出ていない?

その一方で、2025年8月にマサチューセッツ工科大学(MIT)が発表した「The GenAI Divide: State of AI in Business 2025」によると、生成AIのパイロットプログラムの95%が、収益増加に寄与していないという結果が出ている。

国立情報学研究所 情報社会相関研究系 教授 佐藤一郎氏は、著書『2030次世代AI日本の勝ち筋』の中で、AI導入が進んだ企業で起きている問題として、「言語生成AIが『文書の大量生産装置』となり、文書の洪水が起きて、組織の生産力を下げている」と述べている。

ただし、佐藤氏はこれが生成AI独特の事象ではなく、ワープロ専用機、PCなどへの移行時にも同様の事象は起きていたとも述べている。

生成AIの導入失敗例

生成AIでマッチポンプ状態に

佐藤氏が相談を受けた事例の中に次のようなものがあった。

生成AIを導入したことで、それまで2~3行で済んでいた業務報告書が長文に変わり、上司は報告書を読むために生成AIで要約させるというマッチポンプ状態になっていたというのだ。当初のとおり、2~3行の業務報告で問題ないのなら、無理に生成AIを使用しなくてもよいという事例だ。

マーケティングでの失敗例

ある小売業のチェーン店が、AIで需要予測を行うようになった際、商品の発注過多や欠品が続き、コスト増加につながってしまった。失敗の原因は、データの入力ミス、データ統合の不足などにより、AIに提供された情報が不十分だったためだ。

マネジメント層がAIの予測を過信し過ぎたこと、スタッフの理解、協力が不足していたことで運用がうまくいかなかったという。

製造業で起きた問題

AIによる異常検知システムを製造ラインで導入したが、過去の故障データ、センサーデータなど、生成AIの分析に必要なデータの質、量が整備できていなかったために、正確な判断ができなかった。

現場スタッフが、AIが出力したアラートの意味を把握できていなかったり、実際の作業手順や条件に合致していなかったりしたことがうまくいかなかった原因だ。

セキュリティ、コンプライアンスの問題

保険会社が顧客リスク評価に生成AIを活用。しかし、セキュリティ対策が不十分でデータ漏えいの疑いが生じてしまった。

エッジAIやオンデバイスAIなど、インターネットに接続しないで利用できるAIも増えてきているが、外部クラウドサービスで動作する生成AIも多い。この失敗ケースでは、外部クラウドサービスの選定時にセキュリティレベルを過小評価していたという。また、業界独自の規制に準じたコンプライアンスチェックの不備や、社内ルールの理解不足もあった。

生成AI導入を成功に導くには

失敗しない生成AI導入のためには、以下のポイントを必ず押さえる必要がある。

目的を明確にする

具体的な目標や用途を定めないままに、曖昧な「業務効率化」だけを目的にして導入すると、逆に業務を複雑化させるだけで終わってしまう。例えば、人月をこれだけ削減するといった数値による目標を定めるか、あるいはどのような問題を解決したいのかなどを明確にし、プロジェクト全体あるいは全社で共有しよう。

意思決定者と現場でコンセンサスをとる

トップダウンで「生成AIを導入する」と決めても、現場で混乱が生じるだけだ。現場で、解決したい問題や改善したい業務フローをヒアリングしてから設計した方がよい。

スモールスタートで

いきなり全従業員に生成AIを与えるのではなく、特定部署で一部の業務に取り入れ、徐々に拡大していく方が効果的だ。

人材育成にも力を入れる

生成AIも他の機器やソフトウェア同様、使いこなしてこそ価値が出るものだ。

会話形式で使えるため簡単なイメージがあるが、漫然使用していただけでは適切な出力が得られない。

企業は社内研修などを通じて従業員の育成に注力する必要がある。

データ品質を高める

失敗例に挙げたように、学習データの品質が低ければ思うような結果が出ない。精度を高めるためにデータの質と量を高めよう。

生成AIはあくまでも「道具」であることを意識し、業務改善や企業成長につなげる施策の一部に利用することが大切だ。