セキュリティ
認証の手間を最小限に
マルチモーダル生体認証の意味や認証方法を解説
掲載日:2026/01/27

複数の生体情報を組み合わせて本人確認を行う「マルチモーダル生体認証」。認証時のユーザーの負担を軽減しつつセキュリティ強化を実現できる仕組みである。本記事ではマルチモーダル生体認証の意味やメリット、主な認証手法まで詳しく解説していこう。
マルチモーダル生体認証とは
マルチモーダル生体認証とは、二つ以上の生体認証を組み合わせる手法である。現代社会では、デジタル化の進行によって利便性が向上している半面、セキュリティリスクがますます増大している。
しかし、セキュリティを強化することでIDやパスワードの管理などが煩雑になってユーザーの手間が増えることも望ましくない。そこで、セキュリティ強化とユーザーの快適性を両立させる手段としてマルチモーダル生体認証が注目されているのだ。
ここでは、マルチモーダル生体認証のメリットについて、以下の三点を解説する。
コストパフォーマンス良くセキュリティ強化
マルチモーダル生体認証は、複数の生体認証技術を組み合わせることで今までよりも高度なセキュリティを確保できる。
もちろん、一つの生体認証技術だけで認証するよりもコストは増大するであろう。それでも、全く新しい技術を開発するより実績がある既存技術を組み合わせる方が結果的に優れたコストパフォーマンスを発揮する。
認証精度を向上
一つの生体認証技術だけを活用している場合、体調や照明の当たり方などの条件次第では本人なのに他人と判定される恐れがある。反対に、本人が他人と判定されるリスクを回避するために判定条件を緩めると、今度は他人が本人と判定されることもあるかもしれない。
しかし、複数の生体認証技術を取り入れることで、いくつかの認証で本人と判定されなければ認証をクリアできないように総合的な判定方法を構築できる。そのため、結果的に認証精度が向上して間違いが減るうえ、認証スピードも向上するであろう。
さまざまなユーザーに配慮
複数の認証方式を導入することで、多様なユーザーに配慮できる。例えば、指にけがをしているユーザーや職人など仕事柄で指紋が薄れているユーザーでは、指紋認証をうまく実行できないかもしれない。
しかし、マルチモーダル生体認証であれば、指紋認証が使えない場合でも音声認証や虹彩認証など他の方法で本人確認が可能である。このように、多様なユーザーに対して認証を行うためにも、マルチモーダル生体認証は役立つ。
マルチモーダル生体認証で用いられる認証方法
前述のとおり生体情報を二つ以上組み合わせるのがマルチモーダル生体認証である。ここでは、マルチモーダル生体認証で用いられる認証方法について、特に代表的な以下の方法を解説する。
顔認証
輪郭・目・鼻・口など顔のパーツが有する特徴から、本人確認を行う認証方法である。カメラで撮影するだけで、装置に接触せずに認証できるため衛生的であり、心理的な負担をかけずに利用してもらえる。
指紋・掌紋認証
指先の紋様(指紋)や手のひら全体の紋様(筋模様)を読み取る認証方法である。生体認証の中では比較的早い段階から普及した技術の一つであり、指紋や掌紋は加齢による変化も少ないため、導入コストを抑えつつ高い認証精度を期待できる。
静脈認証
ヘモグロビンが赤外線を吸収する特性を利用し、手のひらや指などを通る静脈のパターンから本人確認を行う認証方法である。赤外線センサーで静脈の分布状況を読み取って照合することで、コストはかかるものの高い認証精度が期待できる。
音声認証
人間の声を分析して、本人確認を行う認証方法である。人間の声は、発声器官の形状・大きさ・調音などおのおの異なる特徴を有するため、認証にも活用できる。一般的なPCやマイクでも容易に導入できる点がメリットである。一方、認証精度が比較的落ちる点には注意しなければならない。
虹彩認証
目の虹彩で本人確認を行う認証方法である。虹彩とは黒目のうち瞳孔を除くドーナツ状の部分で、その紋様は各人および左右の目で異なり、生後数年で成長が止まった後は変化しない。そのため、偽造が難しく認証精度が高い点がメリットだが、コストが高くなりがちな点には注意しなければならない。
マルチモーダル生体認証の例
ここでは、マルチモーダル生体認証の例について、以下の二点を解説する。
顔認証×虹彩認証
顔認証×虹彩認証のマルチモーダル生体認証を、ウォークスルー形式で実行する事例を解説する。入国審査などでは厳格なセキュリティ対策が必要であるものの、本人確認を徹底するあまりプロセスに時間がかかり、混雑を生む原因になることが課題であった。
しかし本事例の技術を活用することで、厳格な本人確認が必要であっても、手ぶらで立ち止まることなく認証を行うことができる。本技術のベンダーは世界トップクラスの顔認証技術と虹彩認証技術を有しており、認証の精度とスピードの向上を支えている。
顔認証×静脈認証
顔認証×静脈認証のマルチモーダル生体認証を、非接触で実行する事例を解説する。顔認証では、マスク着用の顔画像を生成して学習させることで、マスクを着用していても99%以上の高精度で本人の特定が可能である。
手のひら静脈認証では、ユーザーインターフェイスを改善し、適切な位置にあるかどうかを色で示すことでスムーズに手のひらの位置を調整できる。
非接触の静脈認証と顔認証を組み合わせることで、安全かつスピーディーにセキュリティチェックを実行できる点がメリットである。
マルチモーダル生体認証で認証の手間を増やさずセキュリティ強化

顔・指紋・静脈など複数の生体情報で認証を行うことで、コストパフォーマンスや精度の向上が期待できる。また、単一の生体情報による認証と違い、より多くのユーザーに配慮できる点もメリットである。
自社のクライアントには、セキュリティ強化の有効な手段として、マルチモーダル生体認証の活用を提案してみるのもよいだろう。