IoT・AI
注目の技術「フィジカルAI」の活用法は?
掲載日:2026/02/10

「生成AI」の次にブームが起こるAIとして「フィジカルAI」が挙げられている。「フィジカルAI」とは、AIが物理的な身体(phisical body)に統合し、実世界で自律的に行動、学習できるようにする技術領域のことである。サイバー空間でのみ動作するAIがどのように実世界で活用されるのか。想定されている活用法を見ていこう。
フィジカルAIとは?
ChatGPTのリリース以来、「生成AI」が世界を席巻しているが、次にブームが起こるのは「フィジカルAI」だといわれている。
フィジカルAIとは、AIが物理世界、つまり実世界を理解して行動し、学習できるようにする技術。サイバー空間のみで動作する生成AIに対して、フィジカルAIはセンサーやカメラ、外部システムなどを用いて実世界の情報をAIが分析し、その結果に応じてロボットなどの物理的なデバイスが動作するシステム全体を指す。つまり、単なるアルゴリズムだけではなく、物理空間で動く自動運転車やロボットまでも含んでいる。
生成AIとのもう一つの違いは、視覚センサー、触覚センサー、距離センサーなどを通してデータを取得し、実世界の中で目標に対して「自らを最適化しながら学習する」点にある。
フィジカルAIの仕組みと技術
フィジカルAIのゴールは、認知、推論、行動、学習を統合して自律的に動作できるシステムの実現だという。
「認知」を担うのはセンサーによる環境の認識。例えば、視覚としてのカメラ機能で物体や位置を認識し、LiDAR(Light Detection And Ranging)ではレーザー光を照射して反射、後方散乱で戻ってくる光を検出し、距離や形状を3Dマッピングする。IMU(Inertial Measurement Unit=慣性計測ユニット)はジャイロセンサーで体勢や加速度を計測する。複数のセンサーを統合し、視覚、触覚などを通じて高精度に実世界の環境を認知する。
「推論」は、センサーで収集したデータから状況を解析し、次のアクションを判断すること。ここで使用される技術は、視覚、触覚、距離情報を同時に処理する「マルチモーダルAI」や、位置特定と地図作成を同時に行う技術である「SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)」、摩擦や重力、衝突を予測する「物理シミュレーション」などだ。これらによって移動経路の安全性や成功確率の高い動作などを判断する。
「行動」は、実世界のロボットや自動運転車、ドローンの動作・制御のことを指す。衝突しない軌道を計算する「モーションプランニング」、数ミリ秒ごとに制御信号を更新する「リアルタイム制御」などを用いて、実世界において安全かつ正確にロボットや自動車などを動かす。
実際に動作を経験したフィジカルAIはさらに学習を続け、「強化学習」として、試行錯誤を繰り返しながら成功率が高い行動を選ぶ。また、シミュレーション環境で学習してからロボットに転送する「Sim-to-Real技術」も用いられる。環境変化に対応し、運用が長期化するにつれて性能が向上することもフィジカルAIの特長だ。
フィジカルAIのユースケース

フィジカルAIは、人手不足の製造業やインフラ、物流、介護などの現場での活用が期待されているほか、近年激甚化する自然災害発生時の救助や復旧などの作業で、人間の立ち入りが困難な場所での利用も望まれている。
物流、製造
ピッキング作業や製造ラインでの検品、突発的な事象に対して動作を最適化することなどが見込まれる。
建築、インフラ
足場が悪い場所や危険な状況があっても、ロボットが自律的に点検作業を行う。設備に異常があれば、状況を判断して自律的にメンテナンスを行う。
医療、介護
患者、被介護者の動きや身体の状態に合わせ、安全に介助する。施設内での物品搬送も状況を判断しながら行う。
災害対応
倒壊リスクがある建物内や、毒ガスが生じる可能性がある場所で、人の立ち入りが難しい所にロボットを派遣できる。フィジカルAIは危険度を自ら認識し、安全なルートで任務を遂行する。
自動運転
周囲の歩行者や車両の動きを予測し、安全に走行する。天候や渋滞、事故など状況の変化に応じて、自律的に最適な経路を選択する。
フィジカルAIのこれから
経済産業省「AIロボティクス検討会参考資料」(2025年10月)には、「ヒューマノイドを含む多用途ロボット(ヒューマノイドや4足歩行型、モバイルマニピュレーターといった形態)市場は2030年頃を境に急拡大し、2040年までに約60兆円規模となる見込み」だという。
また、毎日新聞は、「TSMCはロボットと人工知能(AI)を組み合わせた『フィジカルAI』の需要増を見据え、第2工場では回路線幅が2ナノメートル(ナノは10億分の1)相当の最先端品を含めた半導体の生産を検討しているという」(2026年1月15日)と報じている。
この先間違いなく活用が広がっていくフィジカルAIはどのように進化し、ビジネスにどう生かせるのかをリサーチしていく必要がありそうだ。