セキュリティ
リチウムイオン電池の事故が多発!
「リチウムイオン電池総合対策パッケージ」とは?
掲載日:2026/02/17

リチウムイオン電池は小型ながら大容量、高出力、軽量で、充電して使用するPCやスマートフォン、家電などに搭載されている。また、外出先でも機器を充電でき需要も大きいモバイルバッテリーにも採用されている。しかし、リチウムイオン電池は熱や衝撃によって爆発、出火するリスクが高く、実際にリチウムイオン電池の発火による火災などが増えている。それに伴い、リチウムイオン電池の事故対策として、政府は「リチウムイオン電池総合対策パッケージ」を発表した。
多発するリチウムイオン電池による事故
2026年1月21日、東京メトロ日比谷線の車内で、乗客の持っていたモバイルバッテリーが発火し、一時運転見合わせになる事故があったことは記憶に新しい。2025年10月6日には、京都の10階建てホテルの2階客室から出火し、火事になった。この原因もモバイルバッテリーだと見られている。
埼玉県戸田市にあるごみ処理施設「蕨戸田衛生センター」では、2025年7月中旬に火災が発生し、焼却施設の復旧と、可燃ごみ処理を他自治体に委託する費用などで約41億円の損害を出した。この火災も、リチウムイオン電池が可燃ごみとして捨てられていたことに起因する可能性があるという。
このように、モバイルバッテリーを含むリチウムイオン電池による火災の事例は後を絶たない。
独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)は、2024年度までに収集した事故情報を取りまとめた「2024年度 事故情報解析報告書」を2025年10月31日に公表しているが、これによると、2024年度に発生したモバイルバッテリーによる事故件数は2015年度の約7倍にまで増加している。
リチウムイオン電池の発火の理由
充電を行いながら繰り返し使用できる電池を「二次電池」という。二次電池にはリチウムイオン電池のほかに、ニッケル・カドミウム電池(ニカド電池)、ニッケル・水素電池(Ni-MH電池)などがある。PCやスマートフォン、タブレット、コードレス電化製品などの機器に利用されるリチウムイオン電池は、小型ながら他の二次電池に比べて大容量、高出力、軽量という特長をもつ。
エネルギー量が大きいため、リスクも高い。ニカド電池、Ni-MH電池が水溶性電解液を用いているのに対して、リチウムイオン電池は可燃性の有機溶媒を使用しているため、衝撃を受けたり高温の環境下に置かれたりすると、内部の正極板と負極板が短絡し、急激に加熱してしまう。その結果、揮発した有機溶剤に着火し、出火してしまう可能性がある。
実際に出火したケースでは、以下のような問題があった。
バッテリー製品の不良
バッテリー内部の劣化によって「発火の危険性がある」とリコール対象になっていたにもかかわらず、使用を続けて発火した。または、PSEマークのない粗悪品の使用で事故が起きたケースもある。
非純正品の使用
純正品のACアダプターと出力が異なるACアダプターを使用して充電したため、不具合が生じてバッテリーセルが内部短絡して出火。
非純正品の海外メーカー製を使用して出火に至ったケースもある。
過充電
過充電によって急激に発熱、膨張することがある。
暑い場所、直射日光が当たる場所での使用
高温環境下に置かれると、内部で異常な反応が進行して発熱、発火が起こる場合がある。
落下などの衝撃
強い衝撃や圧力がかかると損傷し、発熱・発火につながる。その時は問題なくても、時間がたってから発熱・発火することもある。
環境省の「リチウムイオン電池総合対策パッケージ」
リチウムイオン電池事故の多発を受け、政府は2025年12月に「リチウムイオン電池総合対策パッケージ」を策定した。目標として、「2030年までに、リチウムイオン電池に起因する重大火災事故ゼロを目指す」ことと「国内に十分なリサイクル体制を構築すること」を掲げている。
同パッケージでは五つの施策が定められた。
国民・事業者への周知啓発
政府全体ワンボイスで情報発信を行う。ポータルサイトを消防庁に設置し、多言語で啓発する。「リチウムイオン電池の3つのC」として、「賢く選ぶ」「丁寧に使う」「正しく捨てる、そして資源循環」の3点を挙げている。

製造・輸入・販売時の対策
モバイルバッテリーに適用すべき規格「電池単体の規格IEC62133-2/JIS C 62133-2(リチウム二次電池の規格)」は一般的な要求事項のみで、電気的要因による火災への対応などはカバーされていなかった。それらをカバーする「機器側の規格IEC62368-1/JIS C 62368-1(AV機器の規格)」を適用することが望ましいとされる。国際的にも、モバイルバッテリーの安全基準として機器側の規格が選択されている。
国内の消費者に直接製品を販売する海外事業者も規制対象として明確化。連絡が取れず「違反有無」の確認が困難な事業者に対しては「連絡不通事業者リスト」をホームページで公表する。このリストは、製品の安全性が保たれているのかを判断する材料になる。
ネットパトロールによる監視で違法製品を発見すると共に、NITE(製品評価技術基盤機構)による発火原因の究明を体制化する。また、リチウムイオン電池の再資源化を促進するために、製造事業者や輸入事業者にリサイクルマークの表示を求めると共に、製造業者がリチウムイオン電池を取り外して回収する製品として指定する場合は、リチウムイオン電池を使用している旨の表示や記載も求める。
使用時の対策
特に若者や高齢者に対して、効果的な情報発信を行い周知する。リコール情報は、購入時のみだけでなく、購入後にも定期的に確認するように促す。公共交通機関を利用する際の持ち込みルールの徹底も行う。
もし出火してしまった場合の対応を利用者に周知し、関係機関では調査・情報共有を行う。
廃棄時の対策
2025年5月に成立した「資源有効利用促進法」の改正法では廃棄物処理の特例条項(認定制度による廃棄物処理法の業許可の不要化)を設置(2026年4月1日施行)し、リチウムイオン電池の自主回収・再資源化を促進する。
処理・再利用の対策
廃棄物処理施設への高度選別機・検知設備の導入に対する支援、広域処理を行うための回収拠点拡大・収集体制の構築支援、リチウムイオン電池からリチウムなど重要鉱物の回収・精製に向けた実証支援などを行う。
リチウムイオン電池を使った製品を取り扱う企業は、「リチウムイオン電池総合対策パッケージ」の内容をよく確認し、利用者に向けて注意喚起を行っていきたい。