IoT・AI

政府が発表「人工知能基本計画」とは?

掲載日:2026/02/24

政府が発表「人工知能基本計画」とは?

政府は2025年12月23日に「人工知能基本計画」を閣議決定した。生成AI、AIエージェントなどが進化し、業務活用が広がる中、「AIを最も開発、活用しやすい国」を目指し、信頼できるAIの創出を目標とした国家戦略だ。本記事ではその概要を紹介していく。

基本構想

「人工知能基本計画」には“「信頼できるAI」による「日本再起」”というスローガンが掲げられている。

世界各国でAIの利活用が進み、官民一体での取り組みが強化されている。しかし、まだ日本でAIを業務に取り入れている企業、団体は多いとは言えない状況だ。その理由として、本来近接するはずのAIの基礎研究から社会実装に至る過程に多くの時間を要していることが挙げられている。

政府は、AIの利活用と研究開発を積極的に推進し、経済・社会構造の変革、付加価値の創出につなげる「AIイノベーション」および「AIに関する国家戦略」を構築していくとしている。業務の効率化や生産性向上だけにとどまらず、AIの活用によって新事業・新市場の創造や包摂的成長も実現し得るとし、人口減少や賃金停滞などの課題を解決する有効な手段として見込む。

また、AIの利活用に伴うさまざまなリスクを適時適切に把握し、AIの透明性、公平性、安全性などを担保する。

「3つの原則」と「4つの基本的な方針」

この計画では、「3つの原則」として以下を挙げている。

イノベーション促進とリスク対応の両立

イノベーション促進とリスク対応の両立を徹底する。これは2019年に統合イノベーション戦略推進会議で決定した「人間中心のAI社会原則」に掲げられた理念を実現するものだ。

アジャイル(柔軟かつ迅速)な対応

前項の両立のために、PDCAサイクルを循環させ、柔軟かつ迅速に向き合うアジャイルな対応を志向する。

内外一体での政策推進

国内外の垣根を越えた積極的な国際連携を通じ、4つの基本方針のもとでAI政策を一体的に推進する。

AI利活用の加速的推進:「AIを使う」

組織を越えてAIイノベーション推進の基盤となるデータを集積し、徹底した利活用につなげ、AIの性能向上を実現する。

AI開発力の戦略的強化:「AIを創る」

インフラからアプリに至るまでのAIエコシステムの開発を各主体で進めながら、それらを組み合わせて「信頼できるAI」を開発する。社会全体でAIを使い、生じた課題を解決するAIを創り、広範な技術革新へとつなげていく。

AIガバナンスの主導:「AIの信頼性を高める」

AIの利活用と技術革新が好循環する環境を構築するために、国際的なガバナンスを主導する。

AI社会に向けた継続的変革:「AIと協働する」

先導的かつ継続的にAIを用いて、産業や雇用の在り方、制度や社会の仕組みなどの変革を実現する。

AI関連技術の研究開発および活用の推進

これまで他国に比べて日本でのAIの利活用が進まなかった要因は、AIがもたらす効果やリスクへの理解不足があったとみられる。その要因を取り除くため、世代を問わずほとんどの国民が能動的に「まず使ってみる」という意識の醸成を目指す。

具体的には、政府や自治体でガバメントAIを推進するなど、適切な利活用によって業務の質向上と効率化を図る。また、医療や介護、金融、防災、環境保全、製造業、インフラ、物流などあらゆる分野で、AIエージェントやフィジカルAIを含むAIの開発、実証、導入、社会実装を促進する。そのために、デジタル化・AI導入補助金なども拠出する。

AI開発力の戦略的強化

日本独自のAIの研究開発と自律的な運用のため、データ、データセンター、基盤モデル、アプリといったAIエコシステム全体を戦略的かつ統合的に構築する。
エネルギー効率が高いAI基盤モデルなどの研究開発、利活用によって「新技術立国」の実現や社会全体でのGXに貢献する。

AI研究者・開発者として国内外から「トップ人材」を集めるために、待遇面や生活環境の向上などに取り組み、先進的な知見を収集するために、大学・研究機関や民間事業者など産学官での連携、協働を推進する。

日本が信頼できるAIの開発拠点となり、リーダーシップを発揮して国際的なネットワークを構築し、「富岳」の次世代を担うフラッグシップシステムの開発、整備も推進する。

AIガバナンスの主導

信頼できるAIエコシステムを構築するため、AIセーフティ・インスティテュート(AISI)を抜本的に強化し、適切にAIモデルの技術的評価を行う。

ディープフェイク、サイバー攻撃、詐欺などAIを悪用した犯罪や問題を調査・研究し、適切な対応を図る。各分野でのセキュリティ確保にもAI利活用を進める。

AI社会に向けた継続的変革

AIの進展により、格差や排除が生まれないようにする。誰もが恩恵を享受できる包摂的成長を実現するためにAI技術を活用する。AIによる影響が危惧される雇用についても、産業構造や職種の変化などを丁寧に分析し、全ての世代が新しい働き方に適応できるように、教育、リスキリング支援などの対策を講じる。AIに関連する基礎的、学術的な知見・知識は初等中等教育段階から向上を図り、人材の育成に取り組んでいく。

「人工知能基本計画」は1年ごとに内容を見直し、アップデートしていく予定だ。現在のAIの進展の速さから考えると、かなりの部分がアップデートされる可能性がある。注意深く追っていきたい。