IoT・AI
学習データが枯渇する!?
AIの「2026年問題」とは
掲載日:2026/02/24

昨今、AI分野の大きなリスクとして問題視されている、AIの「2026年問題」。大規模言語モデル(LLM)の学習に必要となる高品質なテキストデータが、早ければ2026年中にも枯渇すると予測されている問題である。本記事ではAIの「2026年問題」について、その意味や対策まで詳しく解説していこう。
AIの「2026年問題」とは
AIの「2026年問題」とは、AI学習に必要となる高品質なデータが枯渇しつつあり、それによってAIの進化が滞るとされるリスクである。2022年に発表された論文では、現在のペースでAI学習が進むと2026年中には言語データが不足する可能性があると指摘された。
これまでAI技術はデータ量の拡大に伴って進歩してきたが、データ量に依存する従来の開発方法は、限界を迎えつつある。ここでは、AIの「2026年問題」が発生する背景について、以下の4点を解説する。
LLMが急激に進歩
AI開発に不可欠な大規模言語モデル(LLM)のディープラーニング(深層学習)技術は飛躍的に発展したものの、それに伴ってAI学習に必要な情報量が急増した。想定を上回るペースでインターネット上の既存データが使われているため、学習に適した高品質な既存データの量が急激に減少してきている。
新規の高品質コンテンツが枯渇傾向
AI学習に必要なデータの量が急激に増大しているため、人間が生み出す学習データとして高品質な記事や書籍などが追いついていない。その分、インターネット上にはAIによって生成された低品質な情報が増えており、AIモデルの構築に必要なデータが枯渇しつつある。
個人情報の法規制
欧州の「GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)」など、世界各地でデータ保護の法整備が厳格化されてきた。これにより、従来は自由に収集できていた、個人情報を十分に利用できず、学習に活用可能なデータセットを確保する手段が狭まっている。
既存データの利用率が上昇
既存のデジタルデータは、既に主要なAIモデルに数多く取り込まれつつある。その分、まだ取り込まれていない有効なデータが減少し、限られた既存リソースを複数の企業が奪い合う形になっていることも供給不足の要因である。
AIの「2026年問題」が引き起こす変化
ここでは、AIの「2026年問題」が引き起こす変化について、以下の3点を解説する。
AI技術の進歩が停滞
学習データの枯渇により、学習データの規模を拡大することで知能を高めてきたこれまでのAI開発手法だけでは限界を迎える。そのため、新たな高品質のデータが得られなければ、モデルの精度向上は頭打ちになるため従来のスピード感で進歩することは困難である。
競争環境にゲームチェンジが発生
インターネット上で公開されているデータを新たに活用することが限界に達しつつあるため、企業が独自に保有する非公開データの価値が高まると想定される。そのため、特定の専門領域で独自の知見を有する組織や、それらのデータを買い取れるほど豊富な資金力を持つ組織が、強力な競争優位性を確保するであろう。
データに関するコストが増大
今後ますます希少になる高品質な学習用データを確保するために、データの独占契約料や収集費用が高騰すると考えられる。その分開発に必要な原価が上昇し、資本力のある巨大IT企業以外が先端モデルを維持することが難しくなるであろう。
AIの「2026年問題」に向けた対策

ここでは、AIの「2026年問題」に向けた対策について、以下の5点を解説する。
アルゴリズムを改良
これまでのAI開発では、大量のデータ投入によって精度を向上させる手法が主流であった。今後は、限られたデータでも学習効果を最大限に引き出せるアルゴリズムに改良することが求められている。AIモデルのアルゴリズムを向上させることにより、少量のデータでも精確に分析や生成が実行できる。
特化型のモデルを活用
特に、データ量が限られた環境では、汎用モデルよりも特定の分野・業務に特化した専門モデルの方が有用である。近年はオープンソースの中規模モデルを独自にファインチューニングして活用する企業も増えており、業務特化モデルも実用化されつつある。
合成データを活用
データの不足を補う手段として、AIが人工的に生成したデータ(合成データ)の活用も進んでいる。著作権やプライバシーに関するリスクを軽減できる半面、合成データを繰り返し学習させると精度の劣化(モデル崩壊)につながりかねない。そのため、人間が作成したデータと合成データのバランスを保つことが重要である。
新規データ源を発掘
インターネット上のテキストデータ以外に、音声・動画・センサー情報などのマルチモーダルデータも今後重要な学習素材となりうる。特に動画データは、画像・音声・テキストを複合的に含む豊富な情報源であり、活用できる余地が大きく残っている。また、書籍のデジタル化や少数言語データの収集なども、学習データの枯渇問題への対策として有効である。
AI学習のプロセスを変革
現在、AI学習では事前に用意されたデータセットを一括で学習し、知識を蓄える手法が一般的である。しかし、既存データが枯渇しつつあるため、今後はリアルタイムで情報源と連動して自律学習できるAIの開発が求められる。対話型AIやロボットの経験を直接学習素材として活用できれば、データ収集に依存する従来の手法の限界を克服できると期待されている。
AIの「2026年問題」に対処するにはデータの質が一層重要に
AIの「2026年問題」を経て、今後のAIの開発手法は、データの量よりも質が重視されると見込まれる。既存データが枯渇しつつある状況だからこそ、アルゴリズムを磨き上げると共に独自のデータを確保することも欠かせない。これができれば、まだまだAI技術を進歩させることは可能である。
自社のクライアントには、AIの「2026年問題」に対処すべく、アルゴリズムの改良やAIによる人工的なデータ生成などによって生まれる新たなデータを活用することを提案してみるのもよいだろう。