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IT業界ホットニュース

配信日:2010-04-01

新進気鋭の地方ITベンチャー 差異化はIT技術ではなく「業務知識」

 IT産業が決して盛んな地域とはいえない山梨県で、独特の事業基盤と提案手法で着実に業績を伸ばしているITベンダーが存在する。甲府市に拠点を置くシンク情報システム(高山尚文代表取締役)だ。メインターゲットに据える顧客の業務知識を保有していることをスタッフ採用の条件にしており、ほぼすべての従業員が流通・小売業や製造業に勤務した経験をもつ。システム開発はマイクロソフトやオラクルをベースにしていて特徴はないが、業務知識が豊富であることを売りに差異化。開発手法や技術ではなく、「知識」を武器にしているのだ。

 シンク情報システムは、山梨県甲府市内に本社を置く中小ITベンチャーで、従業員数はわずか13人。県内の有力企業を顧客に抱えるほか、近隣の県や東京からの仕事も多い。東京都内に本社を置く企業からの売上高が全体の30%を占める。県内では、食品スーパー40店舗を経営するオギノや、ホームセンター25店舗を経営するくろがねやが顧客で、東京都内のユーザーとしては、文具店10店舗を経営する伊東屋などを抱えている。

 知名度に乏しい地方のITベンダーである同社がビジネスを伸ばしているのは、戦略的に強化している特色があるからだ。それが顧客企業に関する業務知識だ。シンク情報システムのメインターゲットは、卸売・小売業や製造業で、全売上高の80%を占める。同社は、この2業種の業務知識を習得・蓄積することをポイントに置いており、卸売・小売業と製造業に勤務した経験をもつ人材を戦略的に採用。スタッフのほぼすべてがこの2業種出身者で、高山代表取締役も県内の大手小売店で5年ほど経験を積んだ後、シンク情報システムを創業している。

 高山代表取締役は、顧客の業務知識にこだわる理由をこう話している。「極端にいえば、システム開発の手法や技術で差異化できる部分なんてない。どこが開発しても同じ。であれば、ITベンダーが差異化できるポイントは顧客の仕事に適したシステムをどこまで開発できるかだ。そのためにはユーザー企業の業務知識を保有していることが大切になる」。

 同社の開発手法は、Windowsプラットフォームが基本で、マイクロソフトや日本オラクルのパートナーで、「開発手法に特別競争力があるとは思っていない」(高山代表取締役)。だが、トップがこだわっている「業務に即したシステムづくり」が高い評価を受けて、営業人員はいなくても、客が客を呼んで有力顧客を掴まえることに成功しているのだ。

 2010年には、ベンチャーには珍しく自社でデータセンター(DC)を設置して、SaaS型サービス事業にも進出する計画。サービス事業で3年後の黒字化を目指す。中期的には海外市場にも進出する考えで、積極姿勢だ。

 多くのITベンダーは、技術や開発手法の強化に走りがち。「業務知識の取得」は、二の次、三の次に位置づけられるケースが多い。だが、シンク情報システムはそれとは逆の戦略をとっている。技術や開発プラットフォームは標準・汎用的なものを選択して、代わりに業務知識の取得を徹底強化し、他社と差異化。ビジネスを伸ばしているのだ。地方にあって知名度に乏しくても、特色を鮮明にすれば勝てることを証明している。(木村剛士)



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