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配信日:2010-10-28
アジアで通用するか、国産パッケージ 現地地場企業のニーズ取り込みが課題
近年、国内メーカーやSIerはアジアなど新興市場にこぞって進出している。国産パッケージソフトウェアベンダーは、日系企業の海外事業所を中心に販売攻勢をかけてきた。ここへきて、現地の地場企業に軸足を移すベンダーもみられるようになった。だが、本当に現地のニーズにマッチしたプロダクトが提供できているのか。国産パッケージソフトは世界に通用するかどうかが試されている。
生産スケジューリングシステム「Asprova」を開発・販売するアスプローバの藤井賢一郎・上海法人総経理/日本本社副社長は「日本の国内ビジネスはこれからの伸びが見込めない」と断言する。2009年度は、ユーザーのすそ野を広げるために、明確に中国の地場企業へのシフトを打ち出し、地場企業に約50ライセンスを販売した。日系企業への販売実績は皆無だったという。ただ、「Asprova MS」の廉価版「Asprova MS Light」がその中核を占めているため、「日本と比べると、数を捌かなければならない」(藤井副社長)という事情がある。
アスプローバは、東南アジア地域の現地サポート充実とグローバルビジネスの拡大に拍車をかけるために、2010年9月1日、DATA COLLECTION SYSTEMS(DCS)との共同出資でマレーシアに現地法人を設立した。マレーシアは、複数民族で構成されている国家。「華人系の人は、家庭では中国語やマレー語で話していても、ビジネスでは公用語である英語が通じる。これはコミュニケーションをとるうえでの利点となる」。こう語るのはDCSの栗田巧・President/CEOだ。東南アジア地域は、AFTA(ASEAN自由貿易地域)での関税の引き下げ伴い、生産拠点や販売市場としての期待が高まっている。
こんな状況下で国産の生産管理システムの戦況はどうか。アジア地域での納入実績はあるが、主要ユーザーは日系企業のようである。「中国の製造業の多くはIT投資をするまでに至っていない」(東洋ビジネスエンジニアリングの石田壽典社長)、「現状は日系企業が中心で、徐々に地場企業に展開していきたい」(日立製作所の竹山雄一・エンタープライズパッケージソリューション本部GEMPLANETソリューション部部長)といったように、中国の地場企業向けのビジネスは、まだこれからというところだ。
中国での商流をみると、現地パートナーであるDealEasy、ティービーケー・システムズ(TBK)を通じて販売を推し進める東洋ビジネスエンジニアリングのような再販中心の売り方と、完全子会社である日立信息系統(上海)経由で販売する日立製作所などの自前主義に分かれる。中国は国土が広大なため、販売チャネルの整備が重要なポイントとなる。上海に支店を開設しても、華北と華南に代理店をもたなければ販売の拡大は難しい。
海外で販売する場合は価格体系の見直しも迫られる。あるベンダーの幹部は外資系ベンダーについて「各国の経済水準により、国ごとのライセンス価格を弾き出す計算式をもっている」という。
市場ニーズの把握や現地化の推進による人材育成・活用、地場パートナーの拡大など、国内勢が取り組むべき課題は多い。(信澤健太)
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