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IT業界ホットニュース

配信日:2010-10-28

<Industry Chart 業界の今を俯瞰する>
アンチウイルスソフト 市場は成熟、価格勝負の様相に 主要メーカーのチャネルは類似

 ユーザー企業の業種業態や年商規模を問わず、必要不可欠なソフトとして確固たる地位を築いたアンチウイルスソフト。しかしながら、ユーザーがこの汎用ソフトを導入するのはもはや当たり前となっており、市場の成熟とともに成長率は鈍化している。その一方で、メーカーのシェア争いに際立った動きはなく、動きの少ない業界ともいえる。今後の市場規模を予測し、メーカーの勢力やチャネル構造など、多角的な視点で業界の様相を俯瞰する。

figure 1 「市場規模」を読む>
需要一巡で価格競争が進行中

 2009年度(09年1~12月)の法人(企業・団体)向けアンチウイルスソフト市場の規模は383億円。成長率は、前年度比0.5%(金額ベース)でほぼ横ばいだ。国内全企業・団体のうち80~90%は導入しているとみられている。中小企業、SOHOでもコンシューマ製品を導入しているなど、何かしらの製品が使われているため、マーケットはすでに成熟期を迎えている。2009年から2014年までの年間平均成長率(CAGR)は0.5%に留まる。IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ 花岡秀樹・セキュリティリサーチマネージャーは「大きな変動要素がない限り、この状況は変わることはない」とみる。そのうえで「企業ではコスト見直しの観点からアンチウイルスソフトをより安価な製品に乗り換える動きが一部で見られ、ベンダー、チャネルは値下げを余儀なくされる傾向にある」とも分析している。PC向けだけでは成長が見込めないと判断した主要メーカーは、ノンPC製品に着目し、携帯電話などのモバイル端末や、ATMやPOS、産業用機器向け製品の開発・販売を強化。新たな成長分野を探し始めている。

figure 2 「勢力」を読む
トレンドが圧勝、世界の構図とは乖離

 国内市場のメーカー別売上シェアをみると、上位3社で92.6%を占める。国内には約10社のアンチウイルスソフトメーカーが存在するが、トレンドマイクロとシマンテック、そしてマカフィーの3強が市場を牛耳り、他社の追随を許していない。なかでも、トップのトレンドマイクロは51.9%ものシェアを獲得し、独り勝ちの状況。全世界の売上高のうち41%(09年度第4四半期)を日本で稼ぐ。世界市場でのシェアをみると、1位シマンテック、2位がマカフィーで、トレンドマイクロが圧倒的に強い日本の市場は非常に特殊といえる。強さの源は、そのサポート力にある。本社を日本に置き、他の外資系メーカーとは違う点をアピールしているが、日本企業独特のニーズに迅速に対応するサポート体制は評価が高い。「国内商習慣への適応度が高い。事業部をSMB(中堅・中小企業)と大企業に分ける戦略は他ベンダーも追随している」と、IDC Japanの花岡マネージャーは評価する。

figure 3 「メーカーの戦略」を読む
パッケージに加えてサービスを強化

 一服感が漂うマーケットで、一部のメーカーは、サービスビジネスにも注力している。ウイルス対策機能だけでなく、フィッシングやスパイウェア対策など、複数のセキュリティ機能を盛り込んだソフトを月額・年額のサービスとして提供するモデルである。この領域で先行しているのは、マカフィーだ。2000年頃から、自社のデータセンターでSaaS/ASPサービス「McAfee Total Protection Service」を提供してきた。トレンドマイクロは、自社でサービスを提供するのではなく、パートナーの後方支援に回る戦略をとっている。パートナーに技術やソフトを提供して、パートナーが自主サービスを提供できるようにしているのだ。大塚商会やソフトバンクBB、リコーはすべてトレンドマイクロのエンジンを活用し、自社のブランドでアンチウイルスのサービスを提供している。シマンテックは、この分野では後発で、パートナーとの協業によってサービスビジネスを展開することを検討している段階にある。製品面ではデバイス制御、アプリケーション制御、ぜい弱性対策など、昨今世間をにぎわすセキュリティリスク回避のための機能アップが図っている。最近ではパターンマッチングでは防御しきれない攻撃も増えたことや、システム負荷を軽減するために、クラウド上から提供する評価データベースでマルウェアを防御する「レピュテーション技術」を採用する動きが活発になってきている。

figure 4 「チャネル」を読む
相違点がみられない販売体制

 アンチウイルスソフト業界では、トレンドマイクロ、シマンテック、マカフィーの主要3メーカーのライセンスの販売チャネルは、1次店のソフトバンクBB、ダイワボウ情報システム、2次店の大塚商会、日立情報システムズなどとなっており、各社とも大きな変化がないのが特徴といえる。しかし、マカフィーは3強のなかでも国内市場では後発であったことから、1次店と2次店の顔ぶれが微妙に異なるのが興味深い。マカフィーは1次店としてマクニカネットワークスやテクマトリックス、住商情報システムなどと手を組んでいるのがほかの2社にはない動き動きだ。また、2次店については、シマンテックでは富士ゼロックス、トレンドマイクロはリコーが主要パートナーに名を連ねており、プリンタ大手がそれぞれ販売に力を注ぐメーカー製品に違いがあるのが面白い。トレンドマイクロはリコーの展開するサービスのウイルス対策メニュー「マネージドウイルスバスター」向けに、独自にカスタマイズして供給している。また、右の商流図にはないが、トレンドマイクロと富士通も古くから強い結びつきをもっているようだ。一方で、マカフィーは、NECフィールディングや日立電子サービスといった大手コンピュータメーカーの保守サービス会社が上位のパートナーとして名を連ねている。

●文/鍋島蓉子


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