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IT業界ホットニュース

配信日:2010-10-28

<トップインタビュー>大塚商会 社長 大塚裕司
5年先も「街の電気屋さん」が理想像

 大塚商会は、来年7月に「創業50周年」を迎える。クラウドの時代に突入し「売るモノ」が変化する。大塚裕司社長は、それでも「街の電気屋さん」のごとく、「従来のスタンスを変えない」と明言する。幅広い顧客層を背景にした地道な戦略は、50周年の先も揺らぐことはない。ITインフラにサービス、保守サポートの提供と、これらを柱にした「複合提案」を定着させ、事業全体の底上げを目指す。

●オフィスに必要なモノはまだまだある

──ITは「モノ売り」から「サービス売り」へと変化しています。その両面をもつ大塚商会の5年後、10年後には、何が中核のビジネスになっていますか。

大塚 基本的には変わらないでしょう。大塚商会はオフィスや事務所など、法人向けにビジネスを展開しています。法人で使う事務機器やサプライ、サービスなどを「お手伝い」しているのが、いまの姿。その「お手伝い」の幅が広がるだけで、メニューは変わらない。

──それはなぜでしょうか。

大塚 現在、「たのめーる」だけ、「電話回線」だけ、という取引先を含め、取引企業(口座開設)は約81万社。このうち、過去に1アイテムだけお取引いただいた企業が、まだ6割もあります。当社が提供しているアイテムは、コンピュータや通信回線、サービス、サポートなど、たくさんあります。いろんな商材を組み合わせ、使われることで、よりITの付加価値が生まれる。1アイテムだけの利用顧客を深掘りするだけで、新たな需要が生まれてきます。

──具体的には、どういうことでしょうか。

大塚 インターネットを使いながら、VoIP環境を整備するのは当然で、そこに情報系のデータを流し、時にはモバイルフォンでそのデータ受け取る、といったIT環境を構築することで、業務を効率化することができます。

──御社の場合は、デジタル複合機(MFP)を使ったソリューションがいい例でしょうか。

大塚 そう。MFPでスキャンやOCRしたデータを当社の情報系ソリューション「eValue」に流して電子管理したり、または非接触ICカード「Felica」などを使って旅費精算を自動化したりなど、さまざま考えられる。MFPを、単にファクスしたり、コピーしたりすることだけに使っていては、付加価値は生まれないわけですよ。顧客の大半には、まだ十分な「お手伝い」ができていない。

──つまり、まだまだやれていないところが、たくさんあるということですか。

大塚 当社では1アイテムしか取引のない企業を「O-One(オーワン)」と呼んでいます。オフィスに必要なモノは七つも八つもある。だから、7倍も8倍もビジネスの可能性があるということです

──御社のアイテムを複合的に利用・購入してもらうために、どんなことをしていく必要がありますか。

大塚 当社の顧客管理&営業支援システム「SPR(Sales Process Re-engineering)」のデータ化や個人の提案力や、ヒアリング能力といったスキルアップなどを効果的に行っていく必要があるでしょう。

──1アイテムだけの利用企業が6割もあるということですが、ここを深掘りするために足りないことは。

大塚 いや、全部足りないですよ。当社は部門の壁をなくしたことで、それぞれがお客さんの立場で提案できるようになってきました。ただ、どうしても自分の売りたいモノを優先してしまう。それが、ある面で「壁」になっている。昨年度(2009年12月期)からは「全製品をお客さんに語っていこう」と、行動スタイルを変えています。

●ビジネスの立ち位置は変わらない

──オフィス全体への顧客の要望も変わってくると思いますが、どう変化するとみておられますか。

大塚 中堅企業クラスでは、省エネ法の準拠やコスト削減、労務管理もコンプライアンス(法令順守)が求められてきます。会計基準の改正や、EDI(電子データ交換)を含めた企業間連携などサプライチェーン上の回線の見直し、アドレスの枯渇が迫るIPv4からIPv6へ通信環境が変わるなかでの見直しといったことが必要になってくるでしょう。

──ところで、コンピュータ側のパソコンやサーバーなど、ハードウェアの取り扱いは、どうなりますか。

大塚 なくなりはしないでしょう。今後、携帯電話を利用しながらiPhoneやiPadも携帯し、なおかつパソコンも持つというシチュエーションが生まれる。そのデータをサーバー側に置くのか、クライアント側に置くのかという単純なことではない。基幹システムと連携して何かをするのであれば、遠くのデータセンターに置くより、近くの企業内に置いたほうがいいでしょう。

──ただ、システムの所有傾向は弱まっています。

大塚 インターネットを含めたオープンな環境でネットワークをどう使うかが問われているにすぎない。ケースに応じて、なにが最適なのかで違ってくる。幅広い商材のなかから、各企業に応じて最適なモノを組み合わせて提案ができることに、当社の価値があるのです。

──今後の業績の推移をどうみておられますか。

大塚 これだけの顧客を抱えていれば、自然にリプレース市場とストックビジネスが生まれてきます。ハードウェアが売れれば、それに付随して保守・サポートなどストックがアドオンされてくる。あとは、他社を含めて新規事業を取りながら、既存ビジネスの深掘りを進めることは、これまでと変わりありません。買い控えがあって、1社当たりの取引単価がシュリンクすると、全体が縮みます。それでも今の収益は株式上場当時(2000年)と変わらない。現状のビジネスを伸ばしつつ、市場の変化に応じて新規ビジネスを成長させます。

──売るモノは変わるけれど、ビジネススタイルは変わらないということですね。

大塚 ハードがどれだけ伸びるかは一概に予測は立てられない。ただ、売るモノのミックスは変化する。ハードはなくなりはしませんし、それを補うツールも出てくるでしょう。価格や利便性は変わるかもしれませんが、大塚商会がオフィスのITに関わっているということでは、これまでと同じです。大塚商会も少しずつ変化しますが、単品商売から「ワンストップソリューション」を提供していく方向に行くことは確かです。今後も「街の電気屋さん」のように親しみのある会社でありたいです。

・こだわりの鞄

 折り紙つきの頑丈さを誇る米国製「TUMI」の「Alpha」というバッグ。1泊程度の出張に最適で、パソコンも収納できる。大塚裕司社長はこれをIR活動で愛用する。「IR資料をガサっと入れて、ガサっと出せる」と満足げ。1日5軒以上になる訪問先にも、これを持ち歩くという。

<プロフィール>
(おおつか ゆうじ)1954年東京都生まれ、56歳。76年に立教大学経済学部を卒業、横浜銀行入行。80年リコー入社。81年大塚商会に入社した。90年には一時退社し、ソフトウェア開発・販売のバーズ情報科学研究所に入社。92年に大塚商会に再入社し、取締役。業務改革やグループ会社の再建などを手がけ、93年常務、94年専務、95年には副社長に就任した。2000年、先代の大塚実社長当時に株式上場を指揮。2001年8月から代表取締役。クラシックカーやカメラを趣味とする。

<会社概要>
 1961年7月17日、先代の大塚実社長が複写機事業を主に手がける会社として東京・秋葉原で創業した。76年には日本電気(NEC)と取引を開始し、翌年「第1回ビジネスシステムフェア(現:実践ソリューションフェア)」を開催。基幹系ソフト「SMILE」をオフコン用で発売したのは79年。2000年には東京証券取引所第一部に株式上場。04年にはサプライサービス「たのめーる」「ぱーそなるたのめーる」を開始した。来年(2011年7月)、創業50周年を迎える。


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