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配信日:2010-11-04
<Industry Chart 業界の今を俯瞰する>ページプリンタ “眠れるプリンタ”が目覚めた 市場低迷から脱出、伸びの兆し
従前の“箱売り”販売からソリューション販売への移行が進みつつあるページプリンタ市場。ここ数年、市場は低迷し続けたが、ようやく伸びる兆しがみえてきた。各社は、プリンタと独立系ソフトウェアベンダー(ISV)などの製品を組み合わせて販売したり、小売店や医療業界向けの「特定用途プリンタ」など、新たな市場を切り開きつつある。ここ5年間ほどのプリンタ業界の変遷を解説する。(文/谷畑良胤)
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「市場規模」を読む
モノクロ需要増と新規市場で「回復基調」
国内ページプリンタ〈用語の説明は16面〉市場が回復基調にある。IT調査会社のIDC Japanによると、2009年第4四半期(09年10~12月)まで減少し続けていた国内ページプリンタ市場は、10年第1四半期(2010年1~3月)で13四半期ぶりに前年同期比を上回った。伸び率は、前年同期比で16.2%に達した。
昨年の今頃は「リーマン・ショック」の真っただ中。プリンタの販売台数は大幅に落ち込んでいた。この反動もあって、今年は前年同期比で増加した面は否めない。ただ、メーカー各社に聞く限り、今後も「回復基調」は持続しそうだ。一般オフィス向けは、限られた市場でメーカー各社が“陣取り合戦”を繰り広げていたが、モノクロのリプレースが増加。これ以外には、新規市場として狭隘スペース用プリンタの需要が増え、小売店舗や医療関係など特定用途での販売台数が伸びた。「環境とコスト削減」を謳ったメーカー各社の策も奏功している。
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「コピーメーカーのチャネル・戦略」を読む
SIer経由が台頭、全国区のユーザーは直販が主
リコー、キヤノン、富士ゼロックスなど、デジタル複合機(MFP)のコピーをベースに販売するメーカーは、「MFP中心」の販売からシングルファンクションであるページプリンタも組み合わせて、ユーザー企業でニーズが高まっている「分散環境」向けの提案を積極化している。
これらコピーメーカーが展開するページプリンタの「商流」は、おおむね次の通りだ。メーカーと年間売上高をコミットした売り上げ上位の有力事務機ディーラーで数百から数千社を束ねたパートナー組織を構成。売り上げ下位のディーラーは、メーカーのグループ販売会社や大手流通卸からプリンタを仕入れる。大手流通卸は、1社当たり数千社の「取次先」や家電量販店を抱え、ここにプリンタを卸している。最近ではSIerへ卸すケースも増えている。一方で、コンビニエンスストアなど他店舗をもつ小売店に対しては、グループ販社や本社が直販で大量台数のプリンタを拡販。これが「ソリューション販売」として総販売台数比率で増える傾向にあるようだ。
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「シングル機メーカーのチャネルと戦略」を読む
OKIデータ、ブラザーの台頭、大手流通卸の「2次店」拡大
ページプリンタ市場は、5年ほど前までリコー、キヤノン、富士ゼロックス、エプソンで大半を占めていた。ところが最近は、コピーメーカーに対し、シングル機中心の製造・販売メーカーであるOKIデータやブラザー工業が台頭。中堅・中小企業(SMB)に絶大な影響力を誇っていたプリンタメーカーのエプソンを追随あるいは超える勢いを示している。
OKIデータは08年に「5年間無償保証」を売りにした「COREFIDO」、ブラザーは07年に小型・高速の自社開発機「JUSTIO」の新ブランドを出したことで攻勢を強めている。とくに大手流通卸経由では、この両社のプリンタが「顧客から指名買いがくるほど、販売に勢いがある」(某大手流通卸の幹部)という状況だ。このほか、富士ゼロックスからプリンタをOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けるNECやカシオ計算機も、他の自社IT製品と融合したITメーカーの総合力を生かした展開で市場を攻略している。
とくにこの1年間は、プリンタメーカーがキーワードとして掲げる「環境」「コスト削減」を前面に打ち出した展開が当たった。現在使用中のプリンタをCO2排出量や電力消費が少ない新機種に買い替えれば、環境に配慮しながらコスト削減ができると訴求して需要を喚起した。
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「販売方法」を読む
ISVと融合、SI力ないディーラーへもソリューション提供
従来、ページプリンタの売り方は、印刷スピードやドキュメントの再現性など、機能差を打ち出す“箱売り”が中心だった。事務機ディーラーでは、いまだにこの傾向が続くが、各メーカーは独立系ソフトウェアベンダー(ISV)のソフトや「環境」「コスト削減」に関係する機能やアドオンソフトなどと連携させた「ソリューション販売」へと重心を移している。
例えば、リコーはISV製品と同社製品を融合させテンプレート化させる「Operiusパートナープログラム」を展開。富士ゼロックスも、文書管理ソフトウェア「DocuWorks」とISV製品と連携させる作業を本格化した。両社に限らず、こうした連携製品を作りSIerやソリューション展開が苦手な事務機ディーラーの販売機会を増やす戦略を打ち出している。
エプソンやOKIデータ、ブラザーなどプリンタメーカーでも、この傾向は同じ。プリンタ単体の“箱売り”では、すでに市場を伸ばすことが難しくなっているのだ。エプソンが、昨年中盤あたりから失地を回復してきたのは、「お得祭り」と題した戦略にある。インターネットから申し込まれた案件を事務機ディーラーが刈り取るキャンペーンだが、これが継続的に需要を生んでいる。エプソン直販でなく、パートナーを噛ませたことが「作り手」「売り手」「買い手」にメリットをもたらした。
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