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配信日:2011-06-09

サイボウズの奇策 業種特化型グループウェアで打って出る

 グループウェア最大手のサイボウズが、新たな挑戦を始めた。建設業など、ユーザー企業の業種・業界ごとに個別に求められる専門機能を他のソフトメーカーと組んでグループウェアに付加し、それをクラウドサービスに仕上げて提供しようとしている。これまでのサイボウズにはない奇策ともいえる新戦略だ。第一弾として、建設業向けグループウェアを発売した。ラインアップを増やし、「全業種に向けたサービスを展開したい」と同社の企画・開発担当者は意気込む。新戦略を打ち出した背景には、国内グループウェア市場の飽和状況がある。今回の新サービスは、ナンバーワンメーカーでも、新たな策を講じなければ国内では成長できないという危機感の現れだ。(木村剛士)

●市場の飽和状況を打開する策として

 第一弾としてリリースした建設業向けグループウェア「現場クラウド for サイボウズ Office」は、サイボウズの中堅・中小規模向けグループウェア「サイボウズ Office」と、建設業向けパッケージソフト開発を得意とする現場サポート(福留進一代表取締役)の「現場管理館 EX 情報共有サービス」を組み合わせたもの。

 「サイボウズ Office」が建設業に利用されているケースもあるが、「ワークフロー機能など、一部の機能は建設業の業務では使いにくい部分があった」(営業・マーケティング本部DSパートナー推進部の野水克也部長)ことは否めない。この課題を解決するために、現場サポートの力を借りて、建築作業中に必要な専用文書の作成機能や建設業に適したワークフロー機能を組み込んだ。「どの業種・業界にも適した汎用アプリ『サイボウズOffice』を建設業の業務に適した建設業専門『サイボウズ Office』に仕立て上げた」(同)というわけだ。クラウドサービスとして提供し、価格は初期費用が1万5000円で、月額費用が1万2000円(5ユーザー)。2011年3月末までに100件の受注を目指す。

 この新クラウドサービスで注目に値するのは、販売元とサポート元がサイボウズではなく、現場サポートである点だ。野水部長は、これについて「建設業へのアプローチは、われわれよりも現場サポートのほうが強い。サポートについても同じだ。ユーザーからの問い合わせに対して、建設業の専門用語で会話することも考えられる。そうした場合、サイボウズよりも、現場サポートのスタッフに任せたほうが顧客とスムーズに話が通じる」と説明している。現場サポートが販売し、その売り上げの一部をサイボウズに支払う仕組みだ。

 サイボウズは「現場クラウド for サイボウズ Office」を第一弾として、こうした各業種で求められる固有の機能を追加した業種特化型グループウェアを、専門ソフトを開発するメーカーを選び出して共同開発する考えだ。その場合、今回の現場サポートと同様に、「開発・販売元が協業先であってもかまわない」(野水部長)という。「場合によっては、サイボウズのグループウェアをOEM供給してもいい。サイボウズのブランドが表に出なくても問題ない」と野水部長は言い切る。

 こうした新展開を始めることになった背景には、サイボウズが抱く危機感がある。国内のグループウェア市場はすでに成熟している。IT調査会社であるノークリサーチの岩上由高・シニアアナリストは、「国内でグループウェアを導入しているユーザー企業は非常に多く、すでに飽和している。市場規模はよくて横ばいだろう」とみている。有望マーケットではない、というわけだ。そうなれば、競合メーカーのシェアを取りにいくしか成長の道はない。伸びない市場環境下で、ユーザー数を増やしていく術を模索した結果、業種特化型のグループウェアを他のソフトメーカーと協業して、クラウドで提供するという方法を考案したのだ。ナンバーワンメーカーでも新たな手を打たなければ成長はない──。国内グループウェア市場はそれだけ厳しい環境にあるということを印象づける。

●表層深層

 飽和したマーケットでいかにシェアを伸ばしていくか。これこそが、サイボウズが今回の新施策を打ち出した理由だが、DSパートナー推進部の野水克也部長の頭にはほかの思惑もある。マイクロソフト、グーグルなどの外資系クラウドベンダーの存在だ。

 「外資系ベンダーがグループウェアの機能をもつクラウドを本格展開してきた時、サイボウズはどう対峙していくかを考えた」と野水部長は漏らす。オンプレミス型のシステムからクラウドに最も移行しやすいフロントアプリケーションは、グループウェアといわれる。グループウェア市場は今後、クラウドが主戦場になるだろう。その時に、サイボウズは日本企業としてどこで独自性を発揮して差異化するのか。野水部長はそのことを考えて、日本企業の各業種のオリジナルニーズに適したグループウェアを提供していくという方針に行き着いた。

 グーグルの「Google Apps」は従来以上に存在感を強めており、「Googleカレンダー」をグループウェアとして採用するケースも増えてきた。一方、米マイクロソフトは「Office」やグループウェア、さまざまなコミュニケーションツールを盛り込んだ「Office 365」という新クラウドサービスを満を持して発表した。

 サイボウズは、外資系クラウドベンダーのサービスの攻勢をどこまで食い止めることができるか。今後のグループウェア市場は、「サイボウズ VS 外資系クラウドベンダー」という見方もできる。

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