IT業界ホットニュース
配信日:2011-09-22
<Industry Chart 業界の今を俯瞰する>ロードバランサ まだまだ伸びる有望な市場
DC間のトラフィック分散に新規需要
figure 1
「市場」を読む
2015年までに300億円規模に拡大
ロードバランサ(レイヤー4-7スイッチ)市場は、今、活況を呈している。調査会社のIDC Japanは、2010年の国内ロードバランサ市場は前年比で19.6%と大きな伸びを記録し、市場規模は201億8400万円に達したとみている。2011年は、東日本大震災によるIT投資抑制の影響を受けて成長率は落ちるものの、金額ベースでは2010年とほぼ同等のレベルを維持する見込みだ。ロードバランサは、インターネットサービスプロバイダを中心とするユーザー企業にとって事業拡大に欠かせない機器なので、設備投資の抑制機運が高まっている状況下でも、導入を重要視する企業が多いようだ。売上規模は、2013年以降はこれまでのピークだった2007年を上回り、2015年をめどに、およそ300億円規模に到達すると予測されている(IDC Japan)。今後、DCやクラウドサービス事業者向けの高性能機種に加え、これまでは導入費用がかさんで普及が進まなかったローエンド市場でも需要が増えると見込まれる。
figure 2
「勢力」を読む
“新参プレーヤー”が強みを発揮
ロードバランサ市場の活性化につれて、メーカーの勢力図が変わりつつある。ここ数年の間に、市場の有望性に着目して日本市場での事業展開を開始する外資系メーカーが相次ぎ、現在は彼らのビジネスが本格化する時期を迎えている。大企業に強く、2010年のメーカー別シェア(IDC Japan調べ)で40%超を獲得しているのはF5ネットワークスジャパンだ。同社は、引き続き市場をリードしているが、事業拡大中のA10ネットワークスやアレイ・ネットワークスなど、ハイエンド市場に強みを発揮するプレーヤーが増えてきている。また、中堅・中小企業(SMB)向けの市場でもメーカー間の競争が激しくなっている。2008年、バラクーダネットワークスジャパンがSMBをターゲットに据えて参入し、セイコープレシジョンなどと競争するようになった。セイコープレシジョンはSMB市場での競争の激化を受け、昨年、中規模以上の企業向け製品を投入するなど、新市場の開拓に取り組んでいる。
figure 3
「勢力の変動」を読む
競争が激化、市場構成の変化が進む
これまでのロードバランサ市場は、1位の座にあるF5ネットワークスジャパンをはじめ、日本ラドウェアやシスコシステムズ、シトリックス・システムズ・ジャパンなど、上位メーカーのポジションにはそれほど大きな変動がなかった。ところが、2009年から急速に事業を伸ばし、順位を上げつつあるメーカーが現れている。次世代サーバロードバランサの「AXシリーズ」を展開しているA10ネットワークスがそれだ。最近、IDC Japanや富士キメラ総研、ITRなど、複数のIT調査会社が、A10ネットワークスの継続的なシェア拡大を予測している。富士キメラ総研は、2010年度のロードバランサ市場で「AXシリーズ」が20%のシェアを獲得し、2011年には29.2%までに拡大すると見込んでいる。A10ネットワークスは今年7月にソフトバンクBBと販売代理店契約を締結し、販売チャネルの拡大・強化を急ぐ。さらに8月にはオフィスを移してスペースを増大するなど、積極的に事業拡大を推進している。一方、このほど社長が交代したF5ネットワークスジャパンは、A10ネットワークスの動きをみて、SMBや製造業といった新市場を開拓することに力を入れている。ロードバランサは今後、メーカー間競争が激しくなり、市場構成が活発に変動する時代に入るとみられる。
figure 4
「トレンド」を読む
DCの分散化がカンフル剤に
ロードバランサ市場に刺激を与えるトピックとしては、DCを基盤とするクラウド型サービスの普及や、スマートフォンをはじめとするモバイル端末を活用したインターネットサービスの広がりなどが挙げられる。ロードバランサの重要顧客となるDCのサービス市場は、2010年の1兆2020億円から2015年までに1兆5022億円へと拡大すると見込まれており(富士キメラ総研)、それに伴って、高速で負荷分散ができる高性能なロードバランサの需要がますます拡大していくだろう。
ロードバランサは、DC内の負荷分散にとどまらず、複数のDC間のトラフィック分散に関しても欠かせない装置だ。そのため、DC事業者はDCを分散化するにあたって、DC間のトラフィック分散を行うロードバランサを求めている。企業の間でBCP(事業継続計画)に対する認識が高まっており、DC事業者が相次いで複数のDCをセットで提供するサービスを開始。確実なデータバックアップを目指して、DCを全国に分散化させる動きが活発になっている。今後は、国内のDCだけでなく、海外DCを利用してバックアップを図るDC事業者やユーザー企業も増えると考えられる。ロードバランサのメーカーは、こうしたトレンドに対して、機器の性能面で迅速に対応することが、事業拡大のポイントとなる。
■関連記事
<Industry Chart 業界の今を俯瞰する>ロードバランサー(負荷分散装置) クラウド/スマートフォンが刺激剤に
ハイエンドの開拓に期待高まる
http://biz.bcnranking.jp/article/explanation/1103/110317_125708.html
<暗号アルゴリズムの2010年問題>ロードバランサーに新たな可能性
http://biz.bcnranking.jp/article/special/1103/110303_125587.html