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配信日:2011-11-02
グーグル Google Appsビジネスのアクセル踏む パートナービジネスの足固めへ
グーグル(有馬誠代表取締役)がエンタープライズ部門におけるコラボレーションツール「Google Apps」事業の強化に乗り出した。今年に入り、日本オラクルでグローバルアカウントや製造業を所管する営業担当執行役員を務めた阿部伸一氏が国内のエンタープライズ部門のトップに就任。阿部氏は、中堅・中小企業(SMB)向けの販売パートナーの拡大や販売パートナーに対する支援制度の再構築などを進める考えを示した。(信澤健太)グーグルの企業向けサービスは、コラボレーションツール「Google Apps」と地理空間情報サービス「Earth & Maps」、自社ウェブサイトとイントラネット向け検索ソリューション「Enterprise Search」の三つに大別される。なかでも「Google Apps」は、市場が大きく、主力としている事業だ。これらのサービスを取り扱う国内のエンタープライズ部門は7年前に立ち上げたものだ。企業向けサービスを統括する阿部伸一・エンタープライズ部門マネージング ディレクターは、「私が今年2月にグーグルに入社してから、エンタープライズ部門の人員は1.5倍程度に増員した」と、陣容拡大に努めてきたことを説明する。
阿部ディレクターは、「Google Apps」事業の拡大に向けて、「大きく二つの施策を考えている。一つは、パートナー企業自身が提案から導入、サポートまで一貫して提供できる体制づくりだ。われわれは、これをパートナーイネーブルメントと呼んでいる。パートナー企業の質の向上に加えて、SMB向けのパートナー企業をさらに増やすことも実行したい。SMBは販売機会がまだまだ多く存在する。現在、積極的にパートナー企業を募集しているところだ」と説明する。
現行のパートナープログラムでは、従業員数250人未満の企業を対象とする「Google Apps SMB 販売代理店コース」と、従業員数250人以上の企業を対象とする「Google Apps エンタープライズ販売代理店コース」の2種類の選択肢をパートナー企業向けに用意している。なお、国内で初の1万IDを自社に導入した富士ソフトが有力パートナーの1社であり、近年はソフトバンクテレコムが実績を伸ばしているという。 サービスに関する能力や経験、ユーザーへの貢献を積み重ねると、プレミア販売代理店になることができる。パートナー企業はプログラムに参加することで、技術トレーニングやサポート、販促物、ユーザーアカウントを作成/管理するためのコンソールの提供を受けることができる。
阿部ディレクターは、「成長の伸びしろを考えて新しい仕組みを考えている。とはいっても、180度方向転換するわけではなく、より最適なプログラムにしていく」と見通しを語る。例えば、成熟度別や導入伸び率を考慮しながらパートナー企業を分類。それに応じてパートナー企業を支援する。
SMB向けのパートナー企業の数は、「増やせるだけ増やす」(阿部ディレクター)方針。ホームページ上で既存のパートナー企業を公開しているが、すべてではないという。
同社は「Google Apps」の利用実績は公開していないが、大企業や中堅企業で幅広く導入が進み、充実したサポートも求められるようになったため、パートナービジネスの強化を迫られていたようだ。これまでは、複雑なシステムや大手企業向けの導入案件に対し、グーグルが先頭に立つ「ダイレクトモデルに近いやり方」(阿部ディレクター)を採っていた。「課題は、いかにスピードを落とさずにビジネスのスケーラビリティ(拡張性)を維持できるか。われわれの人員を増やしすぎるとスピードが落ちてしまう」。
「Google Apps」の特徴は、コンシューマ向けサービスを出自としている点だ。阿部ディレクターは、「コンシューマ向けサービスをそのまま企業にも提供しているわけではない。アクセスコントロールや認証などセキュリティに懸念を示すユーザーのことを考えて、企業で必要とされるものすべてをアドオンしている。ただし、コンシューマ向けのよさは残しており、マニュアルもトレーニングも不要となっている」と強調。稼働率においても、2010年度実績が99.984%だったことをアピールする。
「当社はわかりやすくやっているつもりだったが、パートナー企業にとってはわかりにくい部分があったと思う」。阿部ディレクターは反省の弁を口にする。今年に入り、パートナービジネスの強化に本腰を入れ始めた。
●表層深層
調査会社アイ・ティ・アール(ITR)によると、国内グループウェア市場では年商100億円未満の中堅・中小企業(SMB)に加え、年商1000億円以上の大企業でもSaaS型の導入が徐々に進んでいる。SaaS型は、パッケージに比べると市場規模はまだまだ小さいが、高い成長率を誇る。
グーグルは、国内での「Google Apps」の導入実績を公表していないが、市場成長の一端を担っているのは間違いない。約60法人への「Google Apps」導入実績をもつ日本事務器の平山宏・事業推進本部クラウドサービス事業推進部部長は、「今年度に入り、引き合いが多くなってきた。東日本大震災の影響があったのかもしれない」と話す。
グーグルの国内エンタープライズ部門のトップに就いている阿部伸一氏は、自社について「スケールと技術力を兼ね備えるアジリティ(敏しょう性)に富む組織」と評する。「パートナー企業には、われわれが基盤インフラや標準部品を提供できる。例えば、『Google Apps』の各機能は他のプログラムからもオープンなAPIなので、ウェブプログラミングに呼び出せる。無数にあるAPIを使ってマッシュアップできる」(阿部氏)ともアピールする。
前出の平山部長は、「最近ようやく企業向けのSLAが出てきたが、パートナー向けのサポート体制をより充実させてほしい」と、グーグルに要望する。パートナービジネスの強化にあたっては、こうしたパートナー企業の声を拾い、応えていくことが求められている。
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