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配信日:2011-11-17

サイボウズ クラウドサービスの外資勢と真っ向勝負
「創業以来、初の大勝負」をかける

 国内グループウェア市場で最大手のサイボウズ(青野慶久社長)が、クラウド事業で新ブランド「Cybozu.com」を立ち上げた。同社が主力ソフトを自社でクラウド化して販売するのは、今回が初めてだ。これまでパッケージとして提供してきた複数のソフトを自社で構築したクラウド基盤に載せ、月額課金制で提供する。「8億円は投資した」という戦略サービスで、青野社長は「創業以来、初めての大勝負」と新ブランドを表現する。グループウェアのライセンス販売で、国内最大手のポジションを掴んだサイボウズが一気にクラウドにシフトする。グーグルやセールスフォース・ドットコムなどの外資系クラウドベンダーに真っ向勝負を挑むつもりだ。(木村剛士)

 「Cybozu.com」は、サイボウズが提供するクラウドサービスの総合ブランド。この名称の下に複数のクラウドを用意して、ユーザー数や利用期間に応じた従量課金制で販売する。まずは、ライセンス販売している自社開発のパッケージソフトをメニュー化。11月下旬に販売を開始する。

 中堅・中小規模システムに適したグループウェア「サイボウズ Office」と、大規模向けの「Cybozu Garoon」、アプリケーションソフトの開発基盤「kintone」をクラウド化して販売する。価格は、「サイボウズ Office」が1ユーザー月額500円(スタンダードコース)。「kintone」が880円。将来的には、営業支援(SFA)ソフトなど、サイボウズがもつ他の自社開発パッケージソフトも、「Cybozu.com」上に載せるほか、他社製ソフトもOEM供給を受けてラインアップする計画。すでに2社のITベンダーから調達することが決まっている。

 販売は、直販とITベンダーを通じた間接販売。間接販売では、一般的な再販モデルで、再販するITベンダー(パートナー)はサイボウズからサービスを購入し、それに自社の利益分を付け加えて価格を決め、ユーザー企業に販売する仕組みをとる。

 青野社長の考えでは、グループウェア未導入のユーザー企業の開拓と、他社製品からの乗り換えを促す武器として「Cybozu.com」を活用する。また、既存の自社パッケージソフトのユーザーも、「Cybozu.com」への移行を推進するという。

 クラウドを提供する設備は、建物は他社のビルを使うが、ハードウェアは自社で購入し、関連するソフトもすべて自社で用意した。このクラウドインフラを国内に構築した。「Cybozu.com」を立ち上げるにあたっては、「着想した時期から数えれば、研究・開発に約4年を費やし、投資金額は合計約8億円」(青野社長)という。今回の新ブランドの立ち上げを設立メンバーである青野社長は、「創業以来の大勝負」と表現している。目標については明言を避けているが、意気は高い。

 クラウドへのシフトは、「既存ビジネスが縮小することも考えられる」(青野社長)。それでもクラウドに傾注するのは、外資系のクラウドサービスベンダーの存在を意識しているからだ。サイボウズのグループウェア市場における国内シェアはトップ。中堅・中小規模向けと、大規模向けの両タイトルを合わせれば、シェアは27%になる。ユーザー企業数は3万社、利用者数は300万人にも及ぶ。だが、サイボウズが得意としている分野のアプリケーションを外資系ベンダーはクラウドで提供し、着々とユーザー企業が採用している状況は見逃せない。青野社長は、この状況を打破する必要があると感じているのだ。青野社長の口からは、ライバルとして日本マイクロソフト、セールスフォース・ドットコム、グーグルの3社が挙がり、国内勢は相手にしていない。

 サイボウズは、スケールメリットをもつ外資系と戦うためには、今ここでクラウドを自社開発のクラウド基盤をもとに販売しないと、中期的にみて成長できないと判断したのだ。

●表層深層

 「意外と思われるかもしれないが、ある一定のユーザー数を獲得できれば利益率は高い。ビジネスとして、クラウドは十分メリットがあり、損益分岐点を超える時期は割と早いタイミングに設定している」。青野社長は、インタビューの後半にこう漏らしている。

 パッケージソフトのライセンス販売は、最初に売り上げる金額は大きいが、「保守契約を結ばないユーザー企業がかなり存在するのが実情」(青野社長)なので、大半は〝売り切り〟に終わっているケースが多いという。一方、クラウドは少額を月額で積み上げるモデルで、最初の契約時に入る売り上げは少ないが、契約を更新してもらえれば毎月必ず売り上げがある。大きな金額を初期だけ稼ぐか、少額を毎月得るか。それを試算した場合、後者のほうがメリットは大きいと判断したのだ。

 また、コストの削減にもつながるという。ライセンス販売では、更新を促す営業活動や新版のインストールに伴うトラブル解決費用といったコストがかかるが、クラウドになれば、常に最新の環境を自動的にユーザーに提供するので、こうした費用が省ける。つまり、同じ売り上げでも利益は膨らむというわけだ。

 既存のライセンスビジネスではユーザー企業の要望に応えられない、外資系の競合ベンダーに太刀打ちできないという危機感はもちろん大きい。だが、青野社長はそれだけではなく、ライセンスからクラウドへの移行を進めることでビジネスの拡大が図れるという自信を抱いているのだ。


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