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配信日:2012-02-02
ソフト製造の“サプライチェーン”をつくれ
有望視される成長国でのソフト・クラスタ化計画
そこで参考になるのが、アップルの製造手法だ。中核となるOSは自前で開発するものの、部品を含めたハードウェアの製造は日本や台湾、韓国のベンダーなどに発注し、その多くは中国で製造している。今年に入って156社のサプライヤーを公表し、そのなかにソニーやシャープなど日本メーカーと並んで、鴻海科技集団をはじめとする台湾の大手電子機器受託生産メーカーの名前もある。ざっくりとした表現だが、日本や韓国などから部品を仕入れ、台湾メーカーに委託して中国で製造するアップルの水平分業型のサプライチェーンが浮き彫りになる。アップルは付加価値の中核であるOSやサービスに経営資源を集中し、人手を要する部品開発や製造工程はアウトソーシングすることで生産力と競争力を高めてきた。
これは製造業の一手法ではあるものの、情報サービス業でも、中核となる要件定義や設計は自ら行い、ソフト部品や製造は海外の有力ベンダーにアウトソーシングするビジネスモデルは成り立つのではないか。例えば、中国地場のビジネスを着実に伸ばしているNECは、山東省済南市でソフト開発のクラスタ(高度集積)化を推進。大連華信計算機技術や共興達信息技術(瀋陽)、上海其加軟件など、4~5社の有力パートナーにブリッジSE的な役割を担うラボを済南に開設してもらい、このラボに向けては安定的に開発案件を渡す“専属契約”的なものだ。
NEC自身の済南拠点は直近で年に20~30%ずつ人員を増やし、すでに420人体制になっているが、「とても需要に供給が追いつかない」(NECソフトの古道義成社長)と悲鳴を上げる。NECの済南を中心としたクラスタ化は2011年4月から本格的に始まり、生産力向上に貢献しつつある。だが、もちろんこれは中国で日本的な多重下請け構造をつくる類いの動きではない。自らが要件定義や設計のイニシアチブをとりながらも、製造工程では水平分業型を積極的に採り入れるものだ。自前主義のままでは、アジアの成長国で大きな仕事はできない。情報サービス業でも、こうした水平分業によるソフトウェアの“サプライチェーン”の構築が、急成長する市場を手に入れる鍵になるのは間違いない。(安藤章司)
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