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配信日:2012-02-09
日本HP 強力パートナー獲得でチャネルを増強
三菱電機系SI会社と戦略提携 悲願のシェア30%獲りに向けて
MDITは三菱電機グループのSIerで、年商317億円(2010年度)。IT製品の販売とシステムインテグレーション(SI)に加えて、情報システムやIT機器の保守サービスも手がける。営業範囲は国内全域で、東京本社のほか、全国11か所に支社・支店を置き、3か所に事務所・事業所を設置。約1100人の従業員を配置している。三菱のブランドを生かし、国内の老舗企業に強いなど、独特の商圏を築いている。
パソコンとx86サーバーでは、三菱電機の「apricot」(パソコン)と「FT8600」(x86サーバー)を販売してきた。年間販売台数は、パソコンで3万台、x86サーバーで3000台ほどだ。しかし、「三菱電機の製品群ではラインアップが乏しく、ユーザーの要求に応えられないケースがあった」(MDITの経営幹部)という。とくに、「FT8600」にはニーズが徐々に強まっているブレードサーバーがなく、大きなマイナス要素だった。加えて、他社に比べて価格競争力が弱いともみていた。
このままではビジネスの拡大は困難と判断し、日本HPを含め、数社のコンピュータメーカーとの協業を検討・交渉することにした。その結果、日本HPとの提携に至ったのだ。日本HPとは、2011年7月に具体的な内容を詰める作業を始め、年末に合意した。MDITの経営幹部は、「充実したラインアップでコストパフォーマンスにすぐれ、柔軟な姿勢で協業内容を詰めてくれた」と、日本HPに決めた理由を説明している。
日本HPは、パートナーとの協業体制強化をミッションとする「エンタープライズアライアンス営業統括本部ストラテジックパートナー営業本部」を中心に、「パソコンとx86サーバーの事業部門担当者との連携部隊を発足させ、交渉を重ねてきた」(日本HPの鈴木敬二・ストラテジックパートナー営業本部本部長)という。日本HPとMDITは、コンピュータの販売では20年前から協業しており、これまでは「HP-UX」を搭載したUNIXで結びつきが強かった。今回の提携は、協業範囲をパソコンとx86サーバーに広げた格好だ。
MDITは、日本HPのパソコンとx86サーバーを調達して販売するほか、販売後の保守サービスも手がける体制を整えて、今年1月中旬からユーザー企業向けに告知している。日本HPが自社製品の保守サービスを他社に任せるのは、厳格なチェック基準を満たした企業だけで、数は少ない。MDITはその数少ない企業となる。「UNIX時代からのつき合いの深さと、長い年をかけて構築してきた信頼関係があってこその協業内容」(鈴木本部長)という。
また、日本HPは、防塵性能にすぐれたサーバーなど、MDITが求める特別仕様のサーバーを、日本HPの現行の製品群にはなくても製造することも検討する。さらに、パソコンとx86サーバーだけでなく、条件次第でストレージやネットワーク機器まで協業範囲を拡大することも考えている。
MDITは、今回の提携を機に、年間の販売台数をパソコン5万台、サーバー5000台まで引き上げたいとしている。従来に比べて原価コストも抑制することができ、利益の増加にもプラスに働く。パソコンとx86サーバーで世界でNo.1メーカーと組むことで、そのスケールメリットを生かす戦略だ。
一方、日本HPは、三菱電機グループが強い業種で自社製品を拡販する体制を一気に整えたことになる。日本HPが掲げる国内のx86サーバーの台数シェアで30%、ブレードだけでいえば50%のシェア獲得につなげようともくろんでいる。
●表層深層
親会社がブランド製品をもつのであれば、それを売るのが子会社の役目のはず。にもかかわらず、MDITは、日本HPとの協業の道を選んだ。「apricot」と「FT8600」を併売していく方針は変えないものの、競合メーカーの製品を担ぐ意味は大きい。
パソコンもx86サーバーも、ハードで差異化できる部分が年々小さくなっている。どのメーカーも同じ部品を使うので、当然といえば当然だ。そうなると、ユーザーも販社も、調達・購入の判断基準は、価格とラインアップの充実度に照準を合わせることになる。今回のMDITの決断は、それを示した事例だろう。
パソコンもx86サーバーも、世界ではNo.1のポジションを確保しており、スケールメリットを生かせるHPは有利だ。「シェアを引き上げることへの意気込みが、どの事業部門でもかなり強い」(日本HP広報)という日本HPにとって、ハードの主役であるx86サーバーで、2位に甘んじている状況は許せないはず。今回の協業でも、専門チームをつくって臨むなど、他社よりも柔軟に丁寧に接した姿勢がうかがえる。
もう一つ見逃せないのが、「apricot」と「FT8600」は、三菱電機のブランドではあるものの、三菱電機そのものが製造する製品ではない点。大手コンピュータメーカー製で、OEM供給を受けているのだ。自社で製造設備やスタッフを抱えているなら、なかなか決断しにくいが、OEMなら敷居は高くない。今回の提携には、こうした事情もあったのだ。
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