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IT業界ホットニュース

配信日:2012-02-09

エムオーテックス 社長 高橋慎介
“高橋カラー”を打ち出し、新コンセプトを提唱

 「LanScope Cat」というヒット製品を生み出し、国内を代表するソフトメーカーとなったエムオーテックス(MOTEX)。設立から21年目に実施したトップ交代人事で創業社長がバトンを渡したのは、高橋慎介氏だった。外資系の大手IT企業の日本法人で数々の要職を歴任した高橋氏は、豊富なキャリアを生かし、どう自分の色を出していこうとしているのか。

「LanScope」は経営資源の最適化ツール

──日本IBM、日本マイクロソフトという外資系IT企業から日本のソフトメーカーへの転身されました。勝手が違って、戸惑うことがあったのでは?

高橋 もうすぐ1年が経ちます。東京と(MOTEXの本社がある)大阪との移動にも慣れて、新幹線に乗車している間の時間の使い方も、だいぶ上手になってきました。30~40分の睡眠と文庫本を一冊、そして仕事。これが、最近の移動時間の過ごし方ですかね(笑)。

 籍を移して感じたことは、たくさんありました。最大の強みは何といっても会社の若さ。従業員の平均年齢は28歳で、働きぶりも遊びぶりもパワーが違う。とにかく力がみなぎっていて熱気に溢れている。私が日本IBMに入ったとき、社員の平均年齢は27歳だったのですが、その雰囲気とすごく似ています。日本マイクロソフトにいたときも、MOTEXとは協業していましたので、一部のスタッフからその力強さを感じていました。なかに入って、改めて組織全体がパワフルだな、と肌で感じ、心強く思いました。それと、大手外資系からコンパクトな組織に籍を移したわけですが、小さな企業は何でもかんでも目を配らなければならず、社長の負担はけっこう大きいなぁ、とも感じています(笑)。

──創業社長が約20年間、会社を引っ張り、主力製品のネットワークセキュリティツール「LanScope Cat」は、長い間、トップシェアを保っています。そのなかで、新社長である高橋さんのカラーをどう出していくお考えですか。

 高橋 迷いながら進めているというのが正直なところです。よい部分は継承しますが、これまでと同じでは私が入った意味がありません。私の経験・ノウハウをこれまでのMOTEXにどう融合させるか。今の段階で確信しているのは、MOTEXの製品は非常にポテンシャルが高い、ということです。

──「ポテンシャルが高い」というと?

高橋 入社前、私はMOTEXの製品を「ネットワークセキュリティ」とか「IT資産管理」のツールとしてしかみていなかったのですね。でも、この会社に入って、製品の中身を研究して気づいたことは、もっと活用範囲が広いということです。セキュリティ対策とIT資産の管理には確かに貢献しますが、私は「経営資源最適化ツール」だと思いました。

 従業員が操作するパソコンやプリンタなどのIT・OA機器、ネットワークトラフィックの利用状況をログとして収集し、分析するのが、MOTEX製品の強み。そのログというのは、イコール社員の動き、会社の動きなんですよ。従業員がどう働いているか、購入したIT・OA機器は適切に使われているかどうかなどがわかります。つまり、われわれのツールが、ユーザー企業の生産性を高めたり、業務を効率化するための素材(情報)をたくさん集める役割を果たすということなんです。

 ただ、私も入社以前はそうだったように、ユーザーの大半はセキュリティ・資産管理ツールとしかみていない。ツールがもつ本来の価値の50%しか評価されていない印象です。この点を打開したい。われわれのツールがもつ機能を有効活用していただければ、既存ユーザーの満足度が上がり、もっとたくさんの人に利用してもらえるようになると考えています。50%しか理解されていないのにトップシェア……。そう考えれば、ポテンシャルはもっとあるわけです。

 ユーザーが購入した動機も、今はセキュリティ対策や資産管理を目的に導入するケースが多いですね。ただ、今後は経営資源を最適化できるツールとして、もっとアピールしていきたい。情報システム管理者だけでなく、事業部門のマネージャーや経営幹部層も、利用価値があるツールであることを知ってほしいと思います。

早期に売上高50億円突破を目指す

──製品の打ち出し方はわかりました。では、目指す経営指標として何を掲げていかれますか。

高橋 売上高は一つの指標です。今が30億円程度ですから、これをなるべく早い段階で50億円程度に引き上げます。社員数をあまり増やさずに達成するということもポイントに置いています。

──手を打たなければならないことは何ですか。

高橋 先ほどお話しした経営資源最適化ツールというコンセプトを広く認知させるためのマーケティング活動、それをしっかりと提案・説得できる社員とパートナーの育成です。若さが武器と言いましたが、これはデメリットでもあります。経営資源最適化というからには、ユーザー企業のマネージャーや経営幹部層と対等に話し、説得できるスキルが必要です。ただ、MOTEXは50代は私しかいなくて、40代も一人だけ。組織としてまだまだ経験と知識が乏しいのは否めません。こうした分野をもっと強化しなければいけないと考えています。

──足りない力を補うために、資本提携や企業買収は念頭に置いておられますか。

高橋 今はそうした考えはありません。MOTEXは独立系で20年やってきて、新卒で入った社員が多い。その遺伝子を大切にして、社内教育で強くする方法をとります。

──高橋さんのコンセプトを早く浸透させるために、新製品の投入は考えておられますか。

高橋 「LanScope Cat」は機能が豊富ですし、私が打ち出したコンセプトを具現化する機能も多数備えています。ユーザーの業種も規模も問いません。規模でいえば、パソコンを3台しか保有していない企業にも利用してもらっていますし、4万台もある企業に納入したこともあります。ですから、「LanScope Cat」が主力であることは変わらないでしょう。それと、ネットワーク技術が当社のコアですから、ここから逸脱するような新製品は考えていません。ただ、人の行動を分析するというテーマで、どのような可能性があるかは探っていきたいですね。

──マーケットを広げる意味で、海外展開は?

高橋 考えていますよ。「Windows Azure」ベースでつくったクラウド「LanScope クラウドキャット」は、海外でも販売できると感じています。マイクロソフトのアプリ販売基盤「Windows Azure Marketplace」を活用すれば、日本にいながら、ネットワークを通じて世界で販売できる機会を得られることになりますから、注目しています。ただ、国内のISVが海外に挑戦しても成功を収めているケースは稀ですから、リスクは極力減らし、慎重に、粛々と進めていくつもりです。


・お気に入りのビジネスツール
靴や革製品で有名なフランスのブランド「Berluti(ベルルッティ)」のノートカバー。2010年夏に、「自分へのご褒美に」とニューヨークで購入した。「Berluti」はお気に入りのブランドで、「デザインが好き」。財布やキーケースも「Berluti」製品を愛用している。

<プロフィール>
(たかはし しんすけ)1960年10月27日、東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、83年、日本IBMに入社。98年、PC事業部コンシューマー事業部長。02年、理事ibm.comセンター事業部長。04年、理事ゼネラル・ビジネス事業部長。05年、米IBMに移り米本社の副社長補佐を約半年間務めた後、日本IBMに戻り副社長執行役員補佐に就任。06年、執行役員パートナー事業担当。09年、マイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に移籍し、執行役パートナービジネス営業統括本部長に就く。11年4月25日、エムオーテックス(MOTEX)の代表取締役社長に就任。

<会社概要>
 1990年設立のソフトメーカーで、資本金は2000万円、従業員数は約170人。主力製品であるネットワークセキュリティツールの「LanScope Cat」は、約5800社のユーザー企業・団体に納入し、480万クライアントが利用する。富士キメラ総研の調べでは、「端末管理・セキュリティツール市場のIT資産/PC構成管理ソフトウェア部門」で31.6%のシェアを獲得し、トップベンダーの地位にある。2010年には、IT資産管理機能などを装備したクラウド「LanScopeクラウドキャット」を開始した。


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