モバイルバッテリーの普及が進む一方で、バッテリーの発熱による火災事故も目立つ。国内で使用するモバイルバッテリーには、電気用品安全法により、PSEマーク等が付いているものでなければ、電気用品を販売し、又は販売の目的で陳列してはならないと定められている。

モバイルバッテリーの選び方

スマートフォンの普及に伴い、その稼働時間を補強するモバイルバッテリーも一般化している。主流となっているリチウムイオンバッテリーには可燃性の電解液が用いられており、内部でショートが発生すると異常発熱し焼損に至る。製造過程で内部に金属片の混入や電極板の不良が発生したケースのほか、落下や激突といった衝撃で内部ショートが起きる事例もある。

万が一、発火に至ると被害は甚大だ。2016年に起きた事例では、Amazon.co.jpで購入した中国製モバイルバッテリーが充電中に出火して家屋が火災となり、1,000万超の損害が発生している。被災者はAmazonを介してメーカーに連絡を取ったが、相手が日本の法律には規定のない「家財損壊証明書」の提出を要求するなど交渉は難航。結果的にメーカーは「直接の製造業者は別」などとして火災の責任自体は認めず、補償は受けられなかった。

この事例からいえるのは、まず安全を第一とした製品選びが重要ということだ。経産省はこうした火災事故の増加に鑑みて2018年にモバイルバッテリーを電気用品安全法の規制対象とし、翌年2月1日から技術基準に適合する製品のみを販売可能としている。この施策により、モバイルバッテリーの製造または輸入を行う事業者は、電気用品名と形式区分の確認や事業開始の届け出、出荷前の検査といった法定の手続きが必要になった。そのうえで製品には「PSE(Product Safety/Electrical Appliances & Materials)マーク」および、届出事業者名、定格容量、定格電圧を表示されるよう義務付けられた。

これ以降、事故の発生件数は減少傾向にあることから、施策には一定の効果があったといえる。ただ、国内限定のルールゆえ、ネット通販ではいまだに規定を満たさない製品も見受けられる。製品選びの際は、電源容量やサイズ等の仕様を見る前に、「PSE認証済」や「PSE技術基準適合」と明記されているか確認のうえ、保証の有無と内容を確認しておくことが肝要だ。

これらに留意すれば、危険な個体に当たるリスクは軽減できるものの、バッテリーは通常の経年劣化でも電解質の酸化が起こり、最悪の場合は発火にまで至る。このため、普段の取り扱いにも注意が必要だ。長時間充電したまま、あるいは充電を怠ることによる過充電・過放電も避け、バッテリーへの負担を軽減するのも重要だ。

また、リチウムイオンバッテリーの最高許容周囲温度は摂氏45度程度のため、高温の場所も避けたほうが安全。また、スマートフォン等に接続し、給電しながら機器を使用するのも、発熱の原因となるため避けるべきだ。

加えて、強い衝撃を与えないようていねいに扱い、劣化を抑えれば発火のリスクは軽減できる。製品寿命も延ばせて一石二鳥だ。

劣化を感じたら正しく廃棄

それでも長期間使用したバッテリーには劣化が訪れるもの。充電スピードの遅延や異常な発熱、バッテリー部分の膨張といった現象はその兆候となる。仮に発火はしないまでも、使い勝手は落ちるため、無理に使い続けず早めに買い替えるほうが安全だろう。

だだし、モバイルバッテリーはほとんどの自治体で不燃ゴミとしての回収が不可とされている。処分の際には使用されているバッテリーの種類を確認のうえ、適切な処置が必要だ。多くのバッテリーはリサイクルの対象となっているため、公共の回収に出すのがベストといえる。小型充電式電池の回収およびリサイクルを手がける一般社団法人JBRCがスーパー等に設置している、専用の回収ボックスを利用されたい。原則としてリサイクルマークの表示された製品が対象だが、ニカド・ニッケル水素・リチウムイオン電池であれば回収してもらえる。

なお、大手家電量販店でも同様の回収ボックスを設置しているが、膨張したものやリサイクルマークのない製品が対象となるかは店舗によってまちまち。また、回収に出す際は安全のため、USBポートをビニールテープで保護し、絶縁するよう求められるケースもある。専門の回収業者やリサイクルショップを利用する手もあるので、手近な手段を選んで正しく処分したいところだ。

モバイルバッテリー購入の際は、まずPSEマークもしくは「PSE技術基準適合」といった記述の有無を確認することが必須といえる。ていねいに扱うのはもちろんだが、使用期限のある製品だと心得て、劣化を感じたら早めに買い替えを検討したい。