10月にWindows 10のサポート終了(EOS)という一つの転換期を迎えた2025年は、PCリプレースをはじめとする積極的なIT投資によって大きな特需が生まれた。EOS後もパートナー様が成長を維持し、さらにビジネスを加速させるためには、ダイナミックに進化するテクノロジーと最新のトレンドを押さえてエンドユーザー様のニーズに適したソリューションを提供することが重要となる。本特集では、AIエージェントが実装のフェーズへと突入し、サイバー攻撃の脅威も増大する中、2026年にパートナー様が着目すべきIT投資のポイントについて解説する。

昨年来のメモリー価格高騰でPC値上がりが不可避に

2025年のITビジネスのトピックとして、まず挙げておきたいのがWindows 10サポート終了(EOS)だ。Windows 7、Windows 8.1の移行先として広く普及したOSであることに加え、後継のWindows 11ではTPM2.0など高いシステム要件が設定されたことから、EOS特需もかなり大きなものであったとみられている。

PC販売の観点では、文部科学省が推進するGIGAスクール構想の2ndフェーズである「NEXT GIGA」もトピックの一つだ。GIGAスクール構想がスタートしたのは2019年。コロナ禍を受けて2020~2021年にかけ、前倒しで1人1台端末環境の整備が進んだこともあり、既に2024年には端末更新時期に入っている自治体もあるという。こうした中、端末更新支援に合わせ、さらなる活用促進を図るというのがNEXT GIGAの基本的な考え方になる。小中学校の端末更新は2025年に一段落しているが、高校のNEXT GIGAは今年本格化する。デジタル人材育成を目的として、高度なデータ処理を可能にするハイスペックPCやIoTセンサー機器、高性能カメラやドローンの配備など、多様な取り組みを行う「DXハイスクール構想」とも併せ、注目する必要があるだろう。

PC関連では、昨年末から始まったメモリー価格の高騰も注目トピックの一つだ。背景にあるのが、生成AI需要増に伴う世界的なデータセンター建設ラッシュだ。AIモデルの稼働には大容量のDRAMが不可欠だが、データセンター建設に伴う需給ひっ迫が昨年下期のDRAM価格高騰の大きな要因になったとみられる。

また、DRAM価格高騰と、NVIDIAによる「2026年末までに省電力型メモリー規格『LPDDR5』に準拠したメモリーを自社GPUに標準採用する」という発表との関連を指摘する声も多い。データセンターの電力使用効率改善は、重要な課題の一つである。ノートPCやスマートフォン向けに開発された省電力型メモリー規格の採用はうなずけるところだが、それを受け、メモリー生産を高付加価値なLPDDR5にシフトした結果、PC向けDRAMの需給ひっ迫が一気に進んだというのが見立てだ。

さらに、大容量DRAM生産への注力がNAND型フラッシュメモリーの不足につながり、結果としてSSD価格の高騰が懸念される点にも注目が必要だ。PCの値上げは避けられない状況で、既に値上げを発表したメーカーも少なくない。こうしたメモリー需給ひっ迫が一段落するのは2027年下半期以降になるとみられ、Windows 10 EOS特需の終了と合わせ、PC販売はしばらく苦戦することになりそうだ。

エントリー層を中心に始まったAIによる雇用代替

データセンター建設に伴うメモリー需給ひっ迫を含め、今年のITビジネスの最重要キーワードが「AI」になることは間違いない。生成AIや予測AIの業務への活用は国内でも確実に進行中だが、既に米国ではAIによる雇用代替、いわゆる「AI失業」が現実のものになりつつある。

ChatGPTがリリースされたのは、2022年11月。現時点では直接的な関係は明らかではないが、米国労働統計局の職業別雇用者数からは、2023年を境に「マーケティング調査」「グラフィックデザイン」「文書作成などのビジネスサポート」「システム構築・関連サービス」などの分野の雇用者数が減少傾向に転じていることが確認できる。同じく労働統計局の資料からは、2023年以降、特に「16~19歳」「20~24歳」の若年層の失業率が急上昇していることも確認できる。さらに、このところニュースに取り上げられることも多いビッグテックの大規模レイオフが、エントリー層を中心に行われていると指摘する声も多い。

AIによる雇用代替が進む米国では若年層の失業率が急増している

ここから浮かび上がるのは、代替が容易なエントリー層を皮切りに、AIによる雇用代替が始まりつつある状況だ。企業のAI利用の消極性が指摘されることも多い日本の場合、雇用制度・慣行の違いもあり、米国と同じ現象が今すぐに現れることは考えにくい。しかし中期的には、米国同様、AIによる雇用代替がエントリー層を中心に進むとみて間違いないだろう。

現時点では、生成AIのビジネスにおける用途は、AIチャットによる情報収集やアイデアのとりまとめ、ドキュメント作成・要約、プレゼンテーション資料作成の支援などが中心である。これらの業務を主に担ってきたエントリー層がAIによって代替されようとする中、次のステップとして浮上するのが、業務を理解し、業界慣習や組織のナレッジに精通するシニア層の業務代替である。具体的には、設定した目標達成に向け、AIが自律的に複数のツールやシステムを連携させて複雑なタスクを実行するAIエージェントや、予測AIを利用した売上上位の営業担当のノウハウ可視化などが挙げられるが、リソースの制約がある中小企業の場合、そのハードルは決して低くない。

生成AIの活用方針策定状況

こうした中、AI活用の次のステップとして注目したいのが、社内に蓄積された業務関連データの利活用促進である。例えばMicrosoft 365 Copilot ビジネスの場合、Microsoft 365契約時に自動生成される組織専用のテナント内のデータにアクセスし、SharePoint / OneDriveに格納される各種ファイルから情報抽出や関連ファイルの要約などを行う機能が備わっている。特に中小企業への提案では、生成AI利用時のデータアクセス権が個別ユーザーのMicrosoft Entra ID(旧 Azure AD)に基づいて設定されるなど、テナント内のデータ利活用がほぼ自動的に行われる点は大きな意味を持つはずだ。またコネクタを利用することで、オンプレミスサーバーやSalesforceなど、テナント外のデータへのアクセスも可能になる。Microsoft 365アップセルの観点からも、注目したい機能といえる。

さらに、情報セキュリティの観点から、生成AIをオンプレミスで運用したいという要望も根強い。Copilot+ PCに代表されるAI PCや、設置が容易なタワー型筐体を採用し、高い日本語性能を備えたNEC開発の生成AI「cotomi」を外部ネットワークとの接続がないセキュアな環境で利用する「美琴 powered by cotomi」など、ローカル環境でのAI運用も今年注目したいテーマの一つだ。

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