AIエージェント台頭がAIの業務領域拡大につながる
その理由は、AI利活用の可能性の幅広さにある。ここでAI利活用を用途別に整理してみたい。オフィス業務におけるAI利活用は以下のように整理できる。
●文章・コンテンツ系
テキスト生成AI:送信・返信メールの自動作成や企画書、商品説明文の作成などテキスト作成全般を担う。ビジネス領域では、新事業のアイデアや営業提案を考える際の壁打ちに利用されることも多い。キャッチコピーやランディングページの文言といったマーケット用途をはじめ、特定用途に特化したツールも現れている。
資料作成AI:プレゼン資料やレポート、企画書などのビジネス文書を自動生成し、構成に沿って整形し、レイアウトまで行う。文書作成はテキスト生成AIが行い、資料作成AIはレイアウトに特化するなど、その機能はさまざまだが、レイアウトや図表作成など一連の作業の自動化は業務の省力化に大きな意味を持つ。
●メディア生成系
画像生成AI:テキストとして入力した内容に応じて画像を自在に生成。広告バナーやSNS用画像、ECサイトの商品イメージ作成、チラシのイメージ画像などで既に活用が進む。
動画生成AI:テキストや画像を元に映像コンテンツを自動生成。一貫したキャラクター・場所・オブジェクト表現を維持する高品質な動画生成サービスも登場し、数十秒程度の動画であれば、プロが作る動画と遜色ない映像をプロンプトだけで作成できる段階に到達している。アニメーションやゲームといったエンターテインメント分野のほか、一般のビジネス領域でも、プロンプトによる業務マニュアルの解説動画の生成やSNSにアップロードする短尺動画の量産など、その活用が急速に進んでいる。
音声生成AI:音声データの学習を通し、人間の声や楽曲など「音」のコンテンツを生成する。その代表がテキストからの音声合成(テキスト読み上げ)で、LLMとの組み合わせによる音声チャットボットなど、多様な領域で普及が進んでいる。さらに、音楽を自動生成する音楽生成AIも既に定着し、曲調や歌詞の傾向を指示するだけでオリジナル楽曲が複雑なアレンジによって自動生成されるという目覚ましい性能の向上は、音楽業界の悩みの種にもなっている。
●開発・システム系
コード生成AI:ビジネス領域で今最も注目されているのは、おそらく、コードを書くことなく業務システムを開発する「ノーコード開発におけるAI活用」だろう。テキスト生成AIでもコード生成が可能だが、プログラミングコード生成に特化したAIによって効率的なコーディングが行える。米国株式市場においてソフトウェア企業の株価低迷に大きな影響を与えていると指摘する声も多く、その進化はITビジネスにも大きな影響を及ぼしつつある。
システム設計支援AI:要件定義からアーキテクチャを設計し、コーディングを行う一連の流れを自動化。設計やコードの不具合をチェックすることで、手戻りの削減と品質の向上に貢献する。
●会議・コミュニケーション系
議事録作成AI:会議や打ち合わせの音声データを自動で文字起こしし、要点を整理して議事録や要約を生成する。Web会議ツールの法人プランへの組み込みも進み、会議への参加が遅れた際の議論の要点把握などにも活用されている。また、LLMと音声生成系AIの組み合わせによる自動翻訳AIの普及も進んでいる。
問い合わせ対応AI:社内ヘルプデスクやメール自動対応、顧客チャットボットへのAI活用は既にかなり進んでいる。
●スケジュール・タスク系
スケジュール作成AI:プロジェクトチームの会議日時の調整に手間取ることは少なくない。AIによるスケジュール調整の自動化は、調整作業の省力化に大きな役割を果たす。
タスク整理・ToDo生成AI:メーラーやスケジューラーと連携し、タスクを抽出・整理する。
●ナレッジ・検索系
社内ナレッジ検索AI(RAG):ビジネスにおけるLLM活用の一例として注目されるのが、LLMが外部データと連携し、より高精度な回答を生成するRAG(検索拡張生成)だ。規程やマニュアル、議事録、契約書などを外部データとして設定することで、業務の目的に見合った回答を引き出す。社内規程集と連携したAIチャットボットはその代表例である。
●分析・予測・最適化系
予測AI:生成AIと並ぶもう一つの柱が、膨大なデータの中に関係性を見出し、将来を予測する機能である。これまで、データドリブンな意思決定には統計学など高度な専門知識を持つ人材を必要としてきた。AIによるデータ分析、予測の自動化はDXの観点でも大きな役割を果たすことが期待される。
異常検知AI:機械学習などを通し、大量データから通常とは異なるパターン(異常)をリアルタイムで特定。サイバー攻撃からの防御に加え、クレジットカードの不正使用や経費精算時の不正処理の防止、製造ラインの故障予測などを行う。
最適化AI
:予測AIの機能を基に、流通企業の在庫や物流企業の配送ルートなど、個別ニーズに応じた最適化を行う。
●業務自動化・エージェント系
組込み型AIエージェント:営業リスト作成・メール送信から商談アポイントメント獲得にいたる一連の流れや、顧客問い合わせ対応などの特定業務に半自動的に対応する。営業支援やマーケティングオートメーションなど、専用ツールに組み込まれる形で既に普及が進んでいる。
自律型AIエージェント:AIが一連の業務を複数のタスクに分割し、既存ツールを活用したり、RPAプロセスを自動生成したりすることで業務を自律的に遂行する。現時点では全てをAIに任せきれる段階には達していないが、急速な進化を遂げている。特に、RAGとの組み合わせによる事務作業の自動化は現在大きな注目を集めている。
中小企業だからこそできるAI導入における強み
上記の分類はオフィス業務に即したAI利活用にすぎず、オフィスの外に目を向けると、人間の作業をロボットが物理的に代替するフィジカルAIなど、用途はさらに広がる。今後の展開として特に注目されるのが、AIエージェントの進化である。現時点では、旅行予約やコールセンターの対応支援など特定業務における利活用に限られるが、今後は、目的に応じて多様なITツールやAI機能を自動的に組み合わせることで、部下に指示を出すように業務を遂行する自律型エージェントの実用化も既に予測されている。
また、対話型AIによるノーコードコーディングの可能性にも注目したい。経営DXでは「データに基づく迅速な経営判断」が目標として設定されることが多いが、特に中小企業の場合、データサイエンティストやデータエンジニアと呼ばれる専門人材の確保が難しいこともあり、データ利活用が大きな課題であり続けてきた。対話型AIの進化はこうした課題を簡単に乗り越え、対話を通した経営者自身による各種経営レポート生成を可能にしている。
対話型AIと予測AIの連携も注目すべき点の一つだ。膨大なデータを自動分析し、売上の予測や、変数を抽出して効果的な施策立案に貢献する予測AIは大企業を中心に普及が進んでいるが、その運用には統計学の知識を持つ専門人材が必要とされてきた。しかし、対話型AIと連携することで、専門知識がなくても、予測やそれに基づく施策立案が可能になる。
こうした中、あらためて強く感じるのが、AI利活用の遅れが企業の競争力に与える影響の大きさである。まずは導入し、そのうえで問題の洗い出しを行うというアジャイル開発の有効性はAIにも当てはまる。
一方で押さえておきたいのが、効率化だけを見据えたAI導入の落とし穴だ。その例として挙げられることが多いのが、サポートセンターのAI導入である。困り事があってサポートセンターに電話をした際、AIに対応されたという経験を持つ方は少なくないはずだ。しかし、宅配会社の配達時間変更のような単純な手続きを除くと、AIは多様な問い合わせに必ずしもスムーズな対応ができるわけではないのが実情だ。その結果、「機械相手に無駄な時間を費やした」と感じさせることで顧客満足度は大きく低下し、不満を持つ状態で電話を転送された顧客に対応するサポートスタッフの負担も確実に増大する。業務効率化と顧客満足度の向上を目指したはずの取り組みが、人件費以上の大きな対価を支払う結果につながるかもしれない。こうした落とし穴に陥らないためにも、AI導入では企業価値に影響を与えることも念頭に入れて進めなければならない。
現時点では、大手企業と中小企業のAI利活用に大きなギャップがあることは間違いない。しかし、今後のAI利活用を考えると、中小企業ならではの優位性もある。経営者とビジネス現場の距離の近さがその一例である。また、中小企業が直面してきた人材不足という課題に対する、生成AIのノーコードコーディングの意義にも注目したい。業務へのAI導入は、早ければ早いほど効果も大きい。それはパートナー様も同じだ。実際の業務における利活用を通して得たさまざまな知見は、営業提案において確実に生かされるに違いないからだ。

