2018年9月28日発行

「Autodesk University Japan 2018」レポート
3Dモデルやロボットを活用したものづくりに貢献

オートデスク株式会社は、製造、建築、土木、CG・映像の設計や製作などに関わる人々を対象に、オートデスクの最新ソリューションやユーザー事例などを紹介するカンファレンス「Autodesk University Japan 2018」を2018年8月31日にグランドニッコー東京 台場で開催した。今回は、基調講演の内容を中心にレポートする。特に3Dモデルやロボットを活用した生産ラインや建設作業の自動化によって生産性の向上を図る取り組みが大きなトレンドになっている。

【基調講演】
製造業や建設業などにおいてロボットによる自動化が進展

オートデスク株式会社
代表取締役社長

織田 浩義氏

基調講演では、最初にオートデスク株式会社 代表取締役社長の織田 浩義氏が挨拶。オートデスクは「創造の未来」のサポーターであると語り、そのうえで、都市部のインフラ整備の需要が急増する中で、労働人口が大幅に減少している。そうした環境下では、これまでの仕事のやり方を変え、少ない人数で生産性を高めていく必要がある。そのためには、3Dモデルをフル活用することが重要であると指摘。それより、日本政府が推進している働き方改革に貢献できると述べた。

続いて、米国オートデスク社 ワールドワイド フィールドオペレーションズ担当 上級副社長のスティーブ ブラム氏が登壇。都市部の人口が急速に増え続けている中では、新しいビルの建設やメンテナンスの需要が急増。同時に限りある資源を無駄にしないように、建設廃棄物を減らさなければならない。そのためには、製造業のみならず、建設業界においてもロボットを活用した自動化が重要なポイントになる。例えば、オランダの住宅メーカーは、工場のロボットが全ての部材を生産し、それを現地で組み上げている。この新しい手法により、わずか3日間の現場作業で家づくりを実現。その際、オートデスクのジェネレーティブデザインツールを活用し、最適な家の作り方や庭の配置などを検証している。その結果、より少ない人数で高品質な家づくりが行えるようになり、競合優位性を高めていると指摘した。自動化によって職が奪われると考えがちだが、自動化は単に仕事の仕方を変えるだけではなく、より良いもの、意味のあるものを作る新しい機会を創出している。

【キーノート】
最新技術を有効活用することで生産性や品質が飛躍的に向上

米国オートデスク社
ワールドワイドフィールド
オペレーションズ担当 上級副社長

スティーブ ブラム氏

引き続き行われたインダストリーキーノートでは、米国オートデスク社 ビジネスストラテジー・マーケティング AEC担当 副社長のニコラ マンゴン氏が登壇。現在は35億人が都市部に住んでおり、毎日20万人が都市部へ流入している。その反面、建設業界の生産性は30年間ほとんど変わらない。そうした中、日本の安部総理は建設業界の生産性を20%高める必要があると指摘。しかし、それを実現するためには、ジェネレーティブデザインツールの活用が不可欠であると強調した。その具体例として、3Dモデルでデザインしたものを工場で生産し、それを現地でロボットが組み立てるモジュール型の建設手法を紹介。その結果、生産性が30%アップし、建設期間が大幅に短縮。事故の数は4分の1に削減。建設廃棄物は90%も削減することに成功している。さらに、コネクテッドBIMの活用事例として、建設作業員にIoTセンサーを取り付け、気温や粉じん、有毒ガスの有無などを常に検知しながら。建設作業の最適化と安全性を高めている事例も紹介した。

米国オートデスク社 製造業向け市場開拓戦略担当ディレクターのスリナス ジョンナラガッダ氏は、顧客のニーズにマッチした高品質な製品を作れるメーカーだけが生き残る。そのために、製造工程に必要なあらゆる情報を一元的に管理できるProduct Design &Manufacturing Collectionが役に立つと強調した。例えば、セスナ機の製造事例では、Inventorなどで設計や衝撃時の解析を実施したところ、技術的な問題を短期間で解決し、数多くの品質改善に成功。また、自動車メーカーは、ジェネレーティブデザインツールをパーツのデザインに活用し、強度の解析などを行うことで大幅な軽量化を図ることに成功している。

また、特別講演では、建築家 京都大学教授の平田 晃久氏が登壇し、3Dのコンピュータ技術と植物を用いた手づくりの良さを融合した建築物の設計手法などを紹介。近畿車輛株式会社 設計室 取締役 設計室長の南井 健治氏は、3Dモデルを活用したドバイの鉄道車両の開発秘話などを通じて、海外では文化の違いを考慮したデザインづくりが重要だと述べた。

このほか、「Autodesk University Japan 2018」では、最新の3D技術を用いたさまざまなセッションが行われ、今後のものづくりに役立つ実践的な情報交換の場となった。


1,000人を超える来場者で、会場は超満員。ものづくりの未来について、いかに関心が高いのかがうかがえる。

【展示エリア】
中高生が製作したロボットがロボコンの世界大会で高評価

「Autodesk University Japan 2018」では、展示エリアも充実。千葉県の中高生のロボットコンテストチーム「SAKURA Tempesta」は、Fusion360で製作したロボットを出展。これは、四角い箱を高さ2メートルの場所に迅速に設置できるロボットで、FIRSTRobotics Competitionの世界大会に日本で初めて出場し、ルーキーに与えられるアワードを多数獲得している。

また、株式会社松永製作所は、空港・機内用の車いすを出展。非金属の樹脂を採用することで、金属探知ゲートを乗り換える必要なく、そのまま通過できるようになり、利便性を大幅に向上させたもの。Inventor Professionalで設計し、3Dプリンターを用いてリンク機構の強度解析などを行うことで実現し、2016年度のグッドデザイン賞「金賞」などを獲得している。

このほか、産学協同プロジェクト「1964 TOKYO VR」は、東京オリンピックが開催された1964年当時の写真を3Dデータ化する取り組みを紹介。当時の町並みや看板などがリアルに再現されているVRを体験できるなど、最新の3D技術を活用した展示物が数多く出展された。


会場には大塚商会のブースも展示し、来場されたお客様との交流を行った。