2019年3月28日発行

「Autodesk University 2018」レポート
オートデスクのテクノロジーを活用した、ものづくりの自動化が社会に革新をもたらす

オートデスクのグローバルイベント「Autodesk University 2018」が、昨年の2018年11月に米国ラスベガスで開催された。Opening Keynoteでは、オートデスク CEO Andrew Anagnost氏が登壇し、オートデスクの最新のテクノノロジーやビジネストレンドを、事例を交えて紹介。特にジェネレーティブデザインなどの自動化ツールを活用することによって、製造分野のみならず、建設分野でも大きな革新をもたらしているとアピールした。

自動化の急速な進展により創るものや創り方が変わる

Opening Keynoteに登壇するオートデスク CEO Andrew Anagnost氏。

「Autodesk University 2018」のOpening Keynoteでは、オートデスクCEO Andrew Anagnost氏が登壇し、「自動化は、私たちが創るものや、その創り方を変えつつある」と語った。

ものづくりを自動化することで、その性能が向上し、寿命が伸び、より価値のあるものへと変化する。自動化が進むことで、新しいエコシステム、新しい雇用、新しい働き方が生まれる。

例えば、米国では40%の人が農業に従事していたが、現在はわずか2%に過ぎない。しかし、食品のバリューチェーンによって、以前よりも増して多種多様な食品を入手できるようになった。さらに食品製造の自動化により、効果的かつ正確に農地を利用できるようになり、人は単純な繰り返し作業から解放され、より価値のある役割を果たせるようになる。

現在、米国で運転に携わる仕事に従事している人は約400万人いる。しかし、運輸業の自動化が進めば、より多くの人を効率的に移動させることが可能になる。それにより、車の衝突事故が減り、専門性や創造性を活かしたより大きな付加価値を生む業務に集中する時間が増える。

ロサンゼルスはエネルギッシュな地域だが、すさまじい渋滞に悩まされている。オリンピックが開催される2028年には、人口が1984年の2倍に増え、世界中から200万人が訪れると予想されている。しかし、インフラ整備の自動化が進めば、繰り返し行う作図や再設計の作業から解放され、建築家、エンジニア、協力会社、そして他の分野でプロジェクトに関わるあらゆるスタッフと協力し合う時間を増やせる。その結果、より快適な選手村などの施設を短期間で効率的に建設できる。また、誰もが必要な情報にリアルタイムにアクセスできるようにしておけば、市全体のデジタルツインを見渡すことで、市の職員は渋滞箇所に目を配り、渋滞が発生する前に適切な対策が行える。アスリートはいつでも行きたいところにたどり着く。

さらに、Andrew Anagnost氏は、「自動化はすべての人の体験全体を改善する」と強調し、多国籍コンサルティング企業の成功事例を紹介。その企業は、クラウドコンピューティングとAutodeskForgeプラットフォームをフル活用し、設計ワークフローを自動化して改善するアプリを独自に開発。これにより、プロジェクトチーム内の連携が強化され、反復作業が迅速に行えるようになり、意思決定もスピーディーになったという。

ジェネレーティブ デザインで建設会社が長年の課題を解決

オートデスクの最高技術責任者であるScott Borduin氏は、ジェネレーティブ デザインなどの自動化ツールの活用事例を紹介。その中で、日本の建設会社A社の先進的な取り組みを大きく取り上げた。

A社は、長年、長期的な住宅需要の増加と手に入る土地が少ない現実との折り合いをつけたいと考えていた。そこで、オートデスクがジェネレーティブデザインによって、都市部の狭い土地で最高の小規模開発が行えるように支援。ジェネレーティブ デザインは、地元の人口統計、敷地への交通アクセスや路線などを可視化し、地元のニーズと居住者のニーズの折り合いをつけるための提案を行う際に活用されている。同時に、プロジェクトの収益やROIのモデリングを作成する際にも効果的に利用されている。

自社の業効効率を高めるために、オートデスクのテクノロジーを利用したデータプラットフォームを構築。それにより、営業チームが土地を評価したり、土地所有者にとって理にかなう提案を策定したりできる業務基盤を整えている。営業チームが作成した提案データは、設計チームに効率的に受け渡すことができる。さらに、全ての提案で何がうまくいったのか、どの設計手法が提案内容に一番ふさわしいかといった知見を得るために機械学習でデータを生成。それにより、設計プロセスに関する知見が大幅に向上する成果をもたらしている。

A社は、より優れた住宅の建設と、先行投資とリスクを減らした経済的価値を高める努力を続けている。その中で、ジェネレーティブ デザインは、特に衝突の起きそうな相反する目標の調整を行う際に役立っている。今後は一般住宅のみならず、病院、高齢者福祉施設、高齢者住宅施設、要支援者施設など、より大きなプロジェクトにも活用していく考えだ。

Scott Borduin氏は、「今やジェネレーティブ デザインによるものづくりの自動化は、製造分野から建設分野に広がり始めている」と強調。今後も、さまざまなお客様とパートナー関係を結びながら、ものづくりの未来を切り開いていきたいと語った。

適応性、回復力、コミュニティ3つの成功要因をスキルアップ

最後にAndrew Anagnost氏は、未来で成功するためには、適応性、回復力、コミュニティが重要であると指摘。適応性とは、新しいスキルを習得して社会のニーズに柔軟に対応できること。回復力とは、ものごとが突然変わったときの備えができており、すぐに立ち直ることができること、そして、コミュニティとは、他者と連携して取り組めることである。

オートデスクは、この3つの成功要因を身につけるための支援を積極的に行っている。例えば、Autodesk Universityを通じて、今後のテクノロジーの動向をより深く理解することで適応性をさらに高めることができる。また、業務改善やキャリアアップを図るために必要なスキルを学べるように、従来の製品ベースの認定制度を役割ベースに変更する。例えば、BIMマネージャーの認定取得の方が、特定の製品の認定取得よりもはるかに重要になるからだ。

また、より良いコミュニティを実現するためには、誰もが利用できる自動化ツールの開発が最重要事項である。例えば、単一のソリューションでは全ての人の役には立たないので、クラウドを利用したオープンな開発プラットフォームであるForgeの存在意義は大きい。これにより、チーム全体で業務の自動化を効率的に推進できるようになる。

「今後も、新しい価値を創出する自動化を推進することによって、皆様がより多くのプロジェクトに携わり、より良い仕事、より良い社会を実現できるように努めていく」と語った。