2020年05月28日発行

AutoCAD 2021とAutoCAD LT 2021をリリース。7つの業種別ツールセットで作業時間を短縮!

オートデスク株式会社は、2020年3月末にAutoCAD 2021とAutoCAD LT 2021を新たにリリースした。その顕著な特長は、7つの業種別ツールセットを用意し、自社の業務内容に合わせて追加費用なしで利用できることだ。さらに、AutoCAD WebアプリやAutoCAD モバイルアプリとクラウドストレージを活用することで、いつでもどこからでもCAD図面の閲覧や編集が可能。新機能も実装されているので、よりスマートにCAD図面の作成や管理が行えるようになる。

追加費用なしで利用できる業種別ツールセットを提供

AutoCAD 2021とAutoCAD LT 2021は、①業種別Auto CAD、②つながるAutoCAD、③スマートなAutoCADという大きく3つのキーポイントがある。

まず、業種別AutoCADでは、サブスクリプションユーザーがAutoCADをベースにした業種別ツールセットを追加費用なしで利用でき、生産性の向上に大きく寄与する。具体的には、7つのツールセットを用意。それらの中から自社の業種に合ったものを選択し、PCにインストールすることで使えるようになる。

Mechanicalツールセット(機械設計用)は、70万以上の機械部品に対応。機械コンポーネントの自動生成や部品表の  作成などに特化した機能を提供し、機械設計を効率的に行える。

Architectureツールセット(建築設計用)は、8,000以上のインテリジェントな建築オブジェクトとスタイルに対応。平面図、断面図、立面図の自動作成を実現する。

Electricalツールセット(電気制御設計用)は、6万6,000以上のインテリジェントな電気シンボルに対応。回路図情報から機器配置図を効率的に作成できる。

MAP 3Dツールセット(地図情報用)は、GISとCADデータを統合することで計画設計やデータ管理をサポート。ファイル、データベース、Webサービス内の空間データに容易にアクセスできる。ESRI社のArcGISとの連携機能も提供されている。

MEPツールセット(設備設計用)は、1万500以上の機械・電気・配管オブジェクトに対応。空調設備や配管、電気設計が効率的に行える専用機能が実装されている。ただし、現時点ではこれだけ英語版のみの提供となる。

Plant 3Dツールセット(プラント設計用)は、プロセスプラントの設計や3Dプラント設計モデルの作成・統合が効率的に行える。BIM 360 Designとの連携機能も提供。Plant 3DのプロジェクトファイルをBIM 360 Designを介して共有することでコラボレーションを容易に実現する。

Raster Designツールセット(ラスター画像処理用)は、手書きの図面をスキャニングしてラスターデータにしたものを、AutoCADに取り込んでDWGオブジェクトに変換できる。ラスターデータとベクターデータを混在して利用することも可能だ。

いつでもどこからでもCAD図面の閲覧や編集が可能

つながるAutoCADとは、いつでもどこからでも、さまざまなプラットフォームでAutoCADのデータを取り扱えることだ。Windows版やMac版、さらに、Webブラウザで使えるAutoCAD Webアプリ、iOSやAndroidのタブレットやスマホで使えるAutoCAD モバイルアプリも利用できる。

例えば、AutoCAD Webアプリは、特別なソフトウェアをインストールすることなく、Webブラウザだけで利用可能。「Web.AutoCAD.COM」にログインすれば、AutoCADの図面データの確認やちょっとした編集作業が行える。まだ英語版のみだが、PDFの書き出し機能、外部参照ファイルのアタッチ機能など、最近のアップデートによってさまざまな機能が追加実装されている。

クラウドストレージとの連携機能も強化。AutoCAD WebアプリやAutoCAD モバイルアプリを使って、オートデスクのクラウドストレージはもちろん、他社のクラウドストレージに保存してあるCAD図面の閲覧や編集も行える。具体的には、DropboxやOneDriveに加え、今回新たにGoogleドライブにも対応。利便性がより一層アップした。会社でAutoCADを使って作成したCAD図面をクラウドストレージに保存しておけば、デバイス側にCAD図面を保存して持ち歩く必要がないので、外出先でCAD図面の確認や手直しをしたいときに大いに役立つ。


AutoCAD Webアプリの画面。操作はWebブラウザで行う。

新機能とパフォーマンス向上でスマートなAutoCADへ進化

AutoCAD 2021とAutoCAD LT 2021は、ユーザー目線の新機能がいくつか実装されている。これにより、スマートなAutoCADとして進化を遂げている。

例えば、サブスクリプションの特典として、図面履歴機能を利用できる。 DropboxやOneDriveなどのクラウドストレージにCAD図面を保存すると、それらに保存されていたバージョンの履歴を自動的に管理し、いつ誰が保存したのか確認できる。さらに、旧バージョンのCAD図面と、今開いているCAD図面の違いを図面比較機能で即座に確認できる。その際、変更箇所は色分けされて表示されるので一目でわかる。同様に、外部参照ファイルの変更箇所の確認も行えるので、CAD図面の管理がスマートに行えるようなった。

ブロックパレットも強化され、 AutoCADのデスクトップ版で使っているブロックパネルの情報をクラウドストレージに保存できるようになった。これにより、AutoCAD Webアプリでも、クラウドストレージにアクセスすることで、ブロックパレットを簡単に取り込める。

グラフィックパフォーマンスも強化。新たにマルチコアプロセッサに対応したことにより、3Dモデルを使用しているときに、3Dオービットや画面移動、ズームなどの作業がより高速に行えるようになった。同様に、2D図面の画面移動  やズームも高速に処理されるので、ストレスなくスピーディーにCAD図面を作成できる。

AutoCAD 2021のみで利用できるAutoLISPの機能も強化された。従来のエディターに加え、新たにマイクロソフトのVisual Studio Codeを使用したプログラミング開発に対応。Unicode文字もサポートし、カスタマイズがより効率的に行えるようになった。

このほか、ディスプレイのタッチ操作の強化など、日常業務がスマートに行える工夫が随所に施されている。

また、新バージョンになっても図面のファイル形式は変わらない。旧バージョンで作成したDWG/DXFファイルもそのまま読み込める。旧バージョンのファイル形式での保存も可能なので、バージョンアップしていない相手とも安心してやりとりできる。

AutoCAD 2021とAutoCAD LT 2021は、Windows版と同時期にMac版を既にリリース済みだ。アップル社のMetalという新しいグラフィックエンジンに対応し、パフォーマンスが向上している。いずれも体験版を利用できるので、エンドユーザー様に提案してはどうだろうか。


AutoCAD 2021の画面。写真は新機能の図面履歴の画面。