2021年09月14日公開

小規模企業でも容易に導入できるDXをこれ一つで実現
クラウドベースの「Fusion 360」が製造現場を変える

Inventorをはじめとするオートデスクの3D CAD製品は高度な機能を備える一方で、小規模の企業にとっては環境構築のハードルが高いうえ、オーバースペックにもなりうる。こうしたケースに対応するには、同社の「Fusion 360」をおすすめしたい。クラウドベースなので端末の性能に依存せず、時と場所を選ばずに使えることに加え、直感的な操作ですぐに使い始めることができる3D CAD機能に加え、高度な解析やCAM機能も持ち合わせたこの「Fusion 360」の利点をものづくりに活かしたい。

幅広い設計機能をワンプラットフォームに集約

オートデスクのCAD製品といえば、3Dモデリング機能も備えた2D製図ソフトウェア、AutoCADが代表的だ。製造業向けのAutoCAD Mechanicalや電気制御設計のAutoCAD Electricalなど、対象業界に特化した固有ツールとの組み合わせにより、高精度の図面作成や3Dモデルを制作できる。また、高度な3Dモデリングが可能なInventorは、AutoCADのデータとも互換性が高く、より複雑な機械設計を効率よく行うことが可能だ。

ところが、その専門性の高さや高機能は、高性能PCなど動作環境の構築が必要となるうえ、環境を構築したところで小規模事業者にはオーバースペックとなることもある。同社がクラウドベースの3D CAD「Fusion 360」をリリースするのは、こうしたケースに対応したいという側面もある。

「Fusion 360」は、設計に関する多様な機能を、クラウドを活用したプラットフォームで実現するソフトウェアだ。コンセプトデザインから製造データ作成に至るまで、幅広い業界のものづくりを支援する。基本的には3Dモデリング用のソフトウェアだが、モデルを利用して2Dの図面を自動生成することもできる。

各ツールも高機能だが操作は簡単で、コンセプトデザインにおいては、フォームモデリングによる素早い成形が可能。モデリングにおいてはソリッドモデル、フォームモデル、サーフェスモデル、メッシュモデルをそれぞれ相互に変換できるため、取り込んだスキャンデータをメッシュで編集のうえ、3角メッシュを4角化・ソリッド化するといった複雑な工程を容易に行うことが可能だ。

シミュレーションやレンダリングは、クラウドならではのメリットを享受できる機能といえる。複雑な計算が伴うこれらの作業は、本来は高度なPCが必要だ。しかしFusion 360の場合は、クラウドクレジットを支払うことで、クラウドによる処理が可能となる(サブスクリプション購入時に100クレジット付与。不足の際には追加購入可能)。

ハイコストなPCを用意しなくとも、高度な解析を実現できるうえ、処理中はローカルで別の作業を進められる利点もある。ほかにも、デザインする製品の用途やコストといった諸条件の下に、自動的にソフトウェアが設計を提案するジェネレーティブデザイン機能もあり、作業効率の向上へ大いに貢献してくれる。

また、コスト面のメリットだけではない。3D CAD導入の障壁として習得に時間がかかるという認識が一般的だがこのFusion 360は、非常に直感的に使用できるように工夫されたユーザーインタフェースであるため、導入直後から運用開始までの時間も節約することができる。


画像提供:オートデスク株式会社、エンビジョン株式会社 STREEK

Webブラウザからのアクセスで利用可能

システムの性質上、3D モデル等のデータをクラウドに置ける点も大きなメリットだ。Fusion 360 ネイティブのデータに限らず、設計に関わるすべてのデータをクラウドストレージへ保存するため、ローカルのスペースを圧迫することがない。

Fusion 360は、クライアント アプリケーションをデスクトップ上にインストールして使用する点は従来の完全デスクトップ型ソフトウェアと同じだが、ローカルの端末の性能に対して過度に依存することなく、Fusion 360の全機能を扱うことができる。軽いノートPCでもネットワーク環境さえあれば使用できるうえ、ベースとなるAWSの堅牢なセキュリティもあり、コロナ禍におけるモバイルワークにも有用なシステムだといえる。

クラウドでのデータ共有がスタッフの円滑な連携を生む

このクラウドを活用してデータを取り扱う仕組みは、プロジェクト参加者の連携にも有効となる。既存の環境において、作成されたデータは社内の各部門や関連会社、取引先などさまざまな関係者間で、メールやサーバー、ストレージなどで共有されているが、Fusion 360の場合、プロジェクト関係者全員がクラウド上のデータを容易に共有できる。

Webブラウザ上で管理や閲覧できることから、全員がCADソフトウェアをPCに導入する必要がなく、効率の良い共有が可能なのだ。

データ共有は、Webブラウザからアクセスできる、「Fusion Team」という管理用のワークスペースで行う。ここではスペースへの参加メンバーおよび、プロジェクトごとの設計データへのアクセス権を、事細かに設定可能だ。Fusion 360では、これらにアクセスするユーザー権限を3段階で設定できる。チームに参加するメンバーと、各プロジェクトの設計データで、それぞれ3種類の権限が定められており、それぞれで行える作業が変わってくる仕組みであり、フルアクセスから閲覧のみまで、役割りに合わせて設定可能だ。

拡張機能を使ってハイエンドなニーズにも対応

Fusion 360単体でもさまざまな製造業向けデータ作成や解析の実行、製造データ(CNCツールパス)作成が可能だが、拡張機能を用いることで、従来であればハイエンド製品だけで利用可能な機能も部分的に利用することができる。高価なハイエンド製品を導入することなく、その一部の機能をリーズナブルな価格で道入できることも大きなメリットとなる。
現在可能な拡張機能は以下のとおり。

  • ・Machining Extension / CAM機能の強化
  • ・Nesting & Fabrication Extension /ネスティング、板取機能追加
  • ・Manage Extension / データ管理機能追加
  • ・Generative Design Extension / ジェネレーティブ デザインの無制限利用
  • ・Additive Build Extension / 金属積層造形サポートツール

これらの機能を拡張することで、用途に合わせてFusion 360を機能強化することができる。注意すべき点としては、拡張機能はそれぞれFusion 360本体の機能に対して追加して利用するため、本体1ライセンスに付き、拡張機能を追加で 1 ライセンスご購入する必要があることだ。

幅広く「ものづくり」に携わる人へ

Fusion360は、製造工程の上流から下流までに必要なさまざまな機能をオールインワンで備えた非常にユーザービリティの高い製品だ。それゆえ、ユーザー層は幅広く、インダストリアルデザイナー、機械エンジニア、電子基板設計者、製造・生産技術者などの企業内専門職から、スタートアップ企業まで、幅広く「ものづくり」に携わる人に、ぜひ本製品をご提案いただきたい。