2021年11月04日公開

ブラウザやアプリからいつでもどこでも図面にアクセス
オートデスクのクラウドソリューションで実現するDX

デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する潮流は、今や製造業にも押し寄せている。その手助けとなるのが、オートデスクのクラウドソリューション。クラウド上のAutoCAD図面へ、時と場所を選ばずアクセスできる環境により、社内外をスマートに連携し、設計業務の効率化を実現する。

製造業におけるDX

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授が「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」提唱したことに始まる。

日本では経産省が2018年に策定したDX推進ガイドラインにおいて、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義している。

具体例としては、それまで小売店の従業員が知識や経験を基に行っていた「客ごとへのおすすめ」を、レコメンド機能で自動化したWebサイトのように、ECサイトの事例が有名だ。国内でも販売経路として専用アプリを確立し、検品や検寸、進捗管理のデータ化などでDXを実現している。IT化ではなく、それにより仕事のありようを変革することをDXと呼んで差し支えない。

製造業においても、タイヤに高度設計シミュレーションを導入したタイヤメーカーや、AIの導入で技術継承を実現した製造業者、レガシーシステムをIT化で廃した食品メーカーといった成功事例がある。

設計業務の現場では、早くからCADを導入しデジタル化の恩恵を受けてきた。ところがCADを導入したにもかかわらず、いまだに紙で図面管理をしている企業も少なくない。また、近年、設計データと生産管理システムやIoTとの連携など、新たなニーズが生まれているが、図面の共有などで業務効率を高める余地がある。その点でAutoCAD Webアプリなどのオートデスク クラウドソリューションが注目されている。

アプリの使用で時と場所を選ばず図面にアクセス

AutoCAD Webアプリは、AutoCADのサブスクリプションの特典として使用できるクラウドベースのアプリ。Webブラウザからアクセスし、AutoCADの基本的な作図ツールやコマンドを使用できる。

インストールは不要でWindowsでもMacでもOSを選ばず使用でき、高度なPCスペックも要求しない。ノートPCと通信環境さえあれば、どこからでもクラウドストレージ上に保存してある図面にアクセスできるのが大きなメリットだ。


現場や外出先で、さまざまなモバイルデバイスから図面にアクセスして編集できる

パートナーシップのあるクラウドストレージプロバイダとの連携により、図面データをクラウドに置ける点もメリットの一つ。Microsoft OneDrive、Box、Dropbox、Google Driveに保存されたデータは、AutoCAD Webアプリから直接開くことができる。もちろん、Autodesk Drive や Autodesk Docs など、オートデスクのさまざまなサービスとも連携可能だ。

オートデスクは、同様の使い方ができるスマートデバイス向けの「AutoCAD モバイルアプリ」も提供している。Webアプリ版と同様、AutoCADのサブスクリプションの特典として使用できるが、こちらは単体購入も可能だ。AndroidやiOSのモバイル端末上で動くため、AutoCADの機能をより軽快かつ柔軟に使用できる。


AutoCAD Web アプリならソフトウェアをインストールする必要もなく、どのPCからでも Webブラウザで CAD 図面を編集、マークアップ、共有、表示できる

また、オートデスクの提供するクラウド環境はセキュリティ面でも安心して利用できるよう、以下の点に配慮されている。

  • ・すべてのデータは、政府が機密文書に使用する 256 ビットの高度暗号化(AES-256)で暗号化
  • ・アマゾン ウェブ サービス (AWS)が管理する最上級のデータ センターで、クラウド インフラストラクチャをホスト
  • ・災害時の影響を最小限に抑えるため、オートデスクのクラウド運用担当者は24 時間 365 日対応

今日、セキュリティ違反やデータ損失の脅威のほとんどは、クラウドとは無関係である。むしろ古いソフトウェアを使用していることやフィッシング メール、トロイの木馬など、標的型メールによる攻撃が脅威となっている。

さらに不十分なバックアップ、ファイルを共有するプライベート クラウド アカウントの使用や、USB キーの管理ミス、そして VPN で保護されていない回線を使用していることが原因であることが多い。

信頼のおけるクラウド環境を最大限利用することこそが、セキュリティ強化の大きなファクターといえる。

図面データを柔軟に運用

これらのアプリは、設計環境へさまざまな変革を起こせる製品だ。特に、図面を印刷して持ち運ぶ必要もなく、時と場所を選ばず手軽にアクセスできる点が大きい。オフィスでも自宅でも作業できる点はもとより、現場や外出先でも図面を閲覧・編集できる。

例えば、建築現場の作業中に変更が発生した場合でも、会社と図面を共有しリアルタイムに変更点を確認できる。レビューや変更をスムーズに伝達できるため、責任者が現場に足を運んだり、やりとりに時間を費やしたりといった手間がなくなり、ワークフローを効率化できる。

現場や外出先でプランのドラフトを作成したり、マークアップや計測を実行し、帰社してから更新した図面をAutoCAD上で利用したりと、柔軟な作業が可能だ。

クラウドでデータを共有できるため、社内外のコラボレーションが容易になる点も大きなメリットだ。プロジェクト参加者が同じ環境で図面を閲覧できるため、設計の意図についてコンセンサスを形成しやすく、共同作業やレビュー、編集をリアルタイムに行うことが可能だ。

また、近年のトレンドとしては、作成した3Dの設計データを組み立て指示書やマニュアルに展開したり、生産管理システムと連携するといった活用が進んでいる。このような設計データの共有は、社内での業務効率化を推進するだけでなく、設計データの新たな活用方法として広がりを見せている。

新機能で図面を安全に改良

設計データの共有において課題となるのは、オリジナルデータの保護だ。多くの人員が1つの図面に携わるため、人為的なミスでデータが意図せずに書き換わるリスクは常にある。この対策として、最新のAutoCAD 2022では「トレース」機能が追加された。これは、元の図面上に透明なトレーシングペーパーを重ね、その上に注釈や指示を書き込むといった使い方ができる機能だ。

オリジナルの図面データに含まれるジオメトリに編集を加えずに作業を進められるため、安全にデータを運用できる。修正案や先方の指示等が固まってから、あらためてAutoCADで図面を開き、トレーシングペーパーの内容を反映させるといった作業の進め方が可能となっており、より安心・安全なワークフローが実現する。


「トレース」機能を使うとAutoCADの既存のジオメトリを編集することなく、安全に DWG ファイルをレビューし、変更したい点を残しておける

なお、AutoCAD 2022では共有機能自体が強化されており、AutoCADから直接ほかのメンバーと図面を共有可能となっている。「表示のみ」または「コピーを編集して保存」など、メンバーごとにアクセス権を管理することもできる。共有のためのリンクを生成し、Webアプリで直接開くといった使い方も可能。きちんと権限管理をしたうえで、いつでもどこでも安全にコラボレーションを進められる。

 

このように、AutoCADのWebアプリとモバイルアプリは、設計にかかわる業務を大きく変革し、仕事のありかたそのものを変えられる製品といえる。端末を選ばず使用できるため、コスト面でも導入のハードルが低く、リモートワークや企業間のコラボレーションなど、幅広く活用できるはずだ。