2022年01月公開

BIM/CIM/i-Construction業務を支援するオートデスクのInfraWorks

国土交通省が推進する「i-Construction」の影響もあり、ニーズがますます高まるBIM/CIM。大前提である「計画、調査、設計段階からの3次元モデル導入」を満たすうえでは、現場の状態をすばやくモデル化できるBIM/CIMソフトが必須だ。こうしたニーズに特化したオートデスク「InfraWorks」の活用で、i-Constructionが目指す生産性の向上や安全性の確保を実現したい。

国交省の取り組みによるCIMのニーズ拡大

国土交通省は、建設生産システム全体の生産性向上を目指す取組みとして、2012年に「i-Construction」を提言した。2016年から「土工へのICT(情報通信技術)の全面的な活用」「コンクリート工の規格標準化など全体最適の導入」「施工時期の平準化」の3施策を柱に本格的な推進を開始し、2017年にはガイドラインが策定。

中でも「ICTの更なる活用」の項では、「CIMガイドライン」が定められ、公共事業に携わる関係者(発注者、受注者等)がBIM/CIM(Building/Construction Information Modeling/Management)をを円滑に導入できるよう、BIM/CIMモデルの基準や導入事例を分かりやすく提示している。これを受けて、全国の公共事業でもBIM/CIMの導入はますます盛んとなる見込みだ。

同ガイドラインではBIM/CIMを、「計画、調査、設計段階から3次元モデルを導入することにより、その後の施工、維持管理の各段階においても3次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にし、一連の建設生産システムの効率化・高度化を図る」と定義している。

建設対象とする構造物の3Dモデルと、部材の寸法や強度、数量といった属性情報から成る「BIM/CIMモデル」を関係者全体で共有し、計画、調査、設計、施工、維持管理の各プロセスで確認しつつ構築していく考え方だ。これを実現するうえで有用なのが、オートデスクの「InfraWorks」だ。

既存の地図情報データでモデルを迅速に作成

InfraWorksは、土木・インフラ設計に特化した3D CADソフトウェアだ。事業の準備段階における計画や検討、概略から予備設計と、建造物の維持といったシーンでの活用が想定されており、計画のビジュアル化を実現する機能を豊富に搭載。プロジェクトの3Dコンセプトデザインからプレゼンテーションに至るまで、強力にサポートする。

特筆すべきは、Autodesk Docs / BIM 360 Docs の契約がなくても利用できる「モデルビルダー」機能だ。多くの機関が作成した、世界中の地形や航空写真等のデータを収集し、現況地形を容易にモデル化できる。収集するデータは、スペースシャトルのレーダー画像から作成されたデジタル標高モデル「SRTM」。これを基にした、約30mメッシュの3D地形モデルを表示できる。

さらに、マイクロソフト提供の「Bing Maps」から取得した衛星画像と、無料の地図作成プロジェクト「OpenStreetMap」が公開している建物、道路、鉄道、水域も利用可能だ。モデルビルダーではこれらを基に、精度の高い地形データを数分から30分程度で作成できる。こうして制作した3Dモデルは、再配布や商用利用もできる。

加えて、国土地理院の地図データも活用可能。地理院地図のWebサービスで配信されている指定領域を切り出して、ファイル化することができる。また、esriが提供しているクラウドGIS(地理情報システム)、「ArcGIS Online」から、地図や環境、断層や土砂災害危険区域などのデータを直接取り込むことも可能だ。

ほかにも、基盤地図情報や市販地図、GISデータや地理参照付きラスターデータなどの2D情報を、3Dモデル作成に利用できる。こうした連携により、建設地域の地盤や流水量、交通量などをシミュレートすることも可能だ。

豊富な地形や付随情報データを取り込み、すばやくモデルを作成できる点は、InfraWorksの大きなメリットだ。BIM/CIMの基本である「計画段階でのモデル化」を早々に確立し、その後のプロジェクトをスムーズに進める一助となるだろう。

直感的にモデルを構築できる簡便な操作性

InfraWorksは、土木構造物の作成・編集機能を搭載。例えば、高速道路の完成をビジュアル化し、近隣住民に計画を説明するなど、検討やプレゼンテーションに役立てられる。ツールの使い方は非常に簡単で、例えば道路の敷設計画であれば、基盤地図データ上に始点と変曲点、終点等をクリックして指定するだけで、法面付きの道路が完成する。道路の勾配や屈曲といった仕様も細かく調整可能だ。

また、設計道路上には、任意の区間で橋やトンネルを追加可能。始点と終点を指定するだけで、自動的に橋桁や基礎などを追加できる。パラメトリックに寸法を変更したり、クリアランスを検証したりといった調整も容易だ。

土工や構造物に必要な資材等を算出する機能も搭載。土工の場合は測点ごとに平均断面法で概算土量を算出。構造物の場合は、舗装や道路装飾などの数量を規模から算出し、スプレッドシートにエクスポートすることが可能だ。

高度なビジュアライゼーションで住民説明等も円滑に

InfraWorksは視覚的な統合モデルを作成するうえでも有用だ。建物や車、樹木などのオブジェクトを設計データに組み合わせることで、よりイメージを完成形に近づけられる。

ほかのソフトウェアとの親和性も高く、Civil 3Dで作成した図面を設計データに統合することが可能。3dsMaxで作成した構造物を加えて情報量を高めたり、図面の情報を逐次モデルに加え、工事の進捗情報の差分を見せたりといった使い方ができる。

アニメーション機能も搭載しており、完成後の道路を走行しているイメージなどもより分かりやすく演出。日時による影の移り変わりや、雲の増減や移動速度まで、細かく指定できる。ほかにも、複数の案を提出する場合に、1ファイル内で全ての案を管理し、切り替えながら比較検討できるなど、プレゼンテーションに役立つ機能を豊富に搭載している。

プロジェクト全関係者が一つのモデルにアクセスし、あらゆる工程で確認や協議を重ねるBIM/CIMにおいては共有機能も重要だ。InfraWorksの場合は、共有ビューにより無償で3Dモデルをクラウド上に置いてレビューできる。

BIM 360 DocsやAutodesk Docsとの統合により、モデルをプロジェクトレベルで管理・共有することも可能だ。モデル制作や解析、検討に至るまで高度な機能を備えたInfraWorksは、BIM/CIM/i-Constructionを進めるうえで大きな力となる製品といえるだろう。