2012年1月28日発行

部門別オートデスク製品の展望。2012年のキーワードを聞く!

オートデスクの強みは、汎用性の高い『AutoCAD』ファミリーに加え、製造、建築、社会・公共など各業界に最適化されたSuite製品を取り揃えていることである。このSuite製品には、業務フロー全体をカバーするアプリケーションがバンドルされているので、その導入効果は大きい。また、それらを補完する形でクラウドサービスも拡充しており、今後の展開が注目されている。そこで今回、各部門のキーマンに2012年の製品戦略や販売戦略を伺った。

各業界向け製品を有する強みを活かし、多面的な提案でお客様満足度を高める

パートナーセールス 本部長
坂間 充氏

昨年は東日本大震災などの影響がありましたが、オートデスクは全般的に好調で前年度比で10%以上伸展し、新規のエンドユーザ様へのビジネスが20%以上も伸びたことは大きな成果でした。今年も円高など厳しい局面は続きますが、製造や建築などの業界別に適切なソリューションを提供することで引き続きビジネスを進展させていきたいと考えています。

その際に注力しているのは、弊社の製品を中心とした販売戦略の構築ではなく、エンドユーザ様が必要とされているソリューションを提供することです。エンドユーザ様の生産効率を高め、コストの低減に貢献する。そのためには、エンドユーザ様の業務フローを理解し、適切な製品の提供が必要です。このエンドユーザ様のご期待に添える製品が、Suite製品です。複数の製品やサービスを組み合わせることで付加価値を高めたSuite製品なら、データの連携や優れた操作性により、エンドユーザ様の業務課題を解決できます。エンドユーザ様の課題に応じたSuite製品を提案するとともに、それを補完する形でサブスクリプションの特典としてクラウドサービスを拡充していきます。

また、オートデスクの一番の強みは、さまざまな分野の製品を取り揃えていることです。その強みを活かすために、一つの窓口からエンドユーザ様に、オートデスクのあらゆる製品を提供できる体制を強化します。これにより、エンドユーザ様の課題解決に役立つ製品をタイムリーに提供し、エンドユーザ様の満足度を高めていきます。

他にもエンドユーザ様の規模に応じたサポートの展開が重要と考え、SMB市場に対しては、一昨年からサポートフォーラムを立ち上げました。ここではエンドユーザ様が必要なサポート情報が得られる環境づくりを行っており、好評をいただいております。

今後も製品販売だけに留まらず、製品の提供を通じて、コンサルティングや別の分野のソリューション提案を視野に入れながら、パートナー様が販売しやすい施策を展開していきます。

プラットフォームソリューション
販促用のシナリオなどを作成してパートナー様のビジネスをサポート

プラットフォームソリューション
本部長
草谷 裕信氏

プラットフォームソリューションの主力製品は『AutoCAD』と『AutoCAD LT』です。『AutoCAD』は、昨年から他社製品の3次元データを取り込めるコラボレーション・プラットフォームへ進化しました。今年はその点をさらに強化させる予定です。

今年のトレンドとして、仮想化の案件が増えると予想しています。そのためシトリックスのXenAppへの対応が注目されるのではないでしょうか。

その他にも、3Dビジュアライゼーションツールなどをバンドルした『Autodesk Design Suite』に力を注いでいますが、他のインダストリー系のSuite製品に比べると差別化するのが難しい面がありました。そこで今年は「better AutoCAD」のキャッチフレーズのもと、『AutoCAD』を単体で購入するよりもメリットがあることを訴求します。

具体的には、3Dビジュアライゼーションやアニメーションを用いた3次元モデルが簡単に作成できることや、サブスクリプション契約を結ぶことで、クラウド上でデータの保存やコラボレーション、レンダリングなどが行える環境が整うことをアピールしたいですね。

そのためにパートナー様のビジネスを支援する施策として、『AutoCAD』ファミリーの認知度を最大限化すべくマーケティング活動を強化するとともに顧客登録のデータベースを有効活用しながら、販促用のシナリオづくりを強化します。例えば、モバイルデバイスが得意なパートナー様に対しては、『AutoCAD WS』を導入することでiPhone/iPadやAndroid端末で図面を現場で確認できるようになる、といったわかりやすいシナリオを提示します。

また、『AutoCAD』や『AutoCAD LT』の大半のエンドユーザ様が全体の機能の10~15%程度しかご利用でないことが調査で分かりました。実にもったいない話です。最新の機能を活用することで更なる効率化が図れますので、これをアピールするためのプログラムも用意しています。こうした施策を有効活用しながらパートナー様のビジネスを拡大していただきたいと考えています。

製造分野向けソリューション
エンドユーザ様の課題を聞き、その解決策を提示することが重要

バーチカルソリューションセールス
製造ソリューション 部長
山田 繁寿氏

製造市場向けのソリューションは、昨年比で20%弱の成長と非常に好調ですが、2次元CAD『AutoCAD Mechanical』の比率が圧倒的に多い実情があります。その中で今年は、3次元CAD『Autodesk Inventor』を軸にした『Autodesk Product Design Suite』と『Auto desk Factory Design Suite』を拡販していきます。

2 次元CADと3 次元CADを両方利用でき、新たに『Auto desk Showcase』という3Dビジュアライゼーションツールがバンドルされた『Auto desk Product Design Suite』のご提案方法は、従来製品の『AutoCAD Inventor Suite』と基本的には変わりません。

業務フローを改善し、作業効率を高めるSuite製品なら、開発担当者だけでなく、営業担当者でも簡単に効果的なプレゼン資料を作成できます。この点で訴求力が高く、販売しやすい製品ではないでしょうか。

今年は製造ソリューションを3つの分野にフォーカスして拡販します。1つ目は従来からほとんどの大手企業が当社の製品を導入している産業機械分野。2つ目は建材メーカーなどのビルディング・プロダクト分野で、製造系と建築系のCADを持っている強みを活かしていきます。3つ目は部品メーカーなどの自動車業界です。各種シミュレーションツールも充実しているので、業務フロー全体をカバーできる総合力をアピールしたいですね。

製造業のSMB市場に対しては、『Auto CAD LT』ではなく、『AutoCAD Inventor LT Suite』を訴求したいと考えています。また昨年アメリカで『Autodesk 360 for PLM』を発表し、従来型とは異なるクラウド化によるPLM市場への参入を表明しました。このように、最近のトレンドであるクラウドサービスやモバイル端末への対応をより一層強化していきます。

そうした中でパートナー様に伝えたいことは、「正しい人に、正しい時期に、正しいことを話せば、必ず商品は売れる」ということです。特にエンドユーザ様が困っている課題に最適な製品を提案することが重要です。当社はそれを支援するためのパートナー向けのプログラムやトレーニングメニューを用意していますので、ぜひご活用ください。

建設業界向けソリューション
中堅・中小企業のBIM導入を強力に支援。3次元対応のクラウドサービスも計画

AECソリューション
AEC本部長
岡崎 健二氏

建設業界に向けたソリューションでは、引き続き『Autodesk Building Design Suite』と『Autodesk Plant Design Suite』に注力するとともに、今年はインフラ系のSuite製品もリリースする予定です。

この3つのBIM対応のSuite製品により、リアルな3次元モデルを駆使しながら建築、プラント、インフラの建造物におけるライフサイクル全般にわたる設計及び維持管理を強力に支援します。

BIMは、3次元モデルのデータベースを活用することでプロジェクトのコスト削減や工期短縮を実現し、さらに建造物をメンテナンスする際の手間も軽減します。そのため、アメリカや東南アジア諸国では、国を挙げてBIMの導入を支援しています。それに比べて日本は若干遅れていますが、今年は、オーナーをはじめ大手企業が様々な分野において本格的にBIMの導入に乗り出すことが予想されています。新しい技術も利用されるようになってきており、例えば、福島第一原発の建屋の囲いを作る際には、レーザースキャニングで3次元モデルを作成するなど、既存の建物を3次元化してBIMで改修、改築、管理する等の取り組みも活発化しています。それに伴い、中堅・中小の建設会社ではBIMへの対応が、否が応でも求められます。

その点、オートデスクのBIM関連のSuite製品は必要なツールをまとめて用意していますので、個別に製品を買い揃えるよりも安価で、パートナー様にとっては販売の手間を省けるメリットがあります。いずれのSuite製品も、Standard、Premium、Ultimateの3つのエディションがあり、エンドユーザ様の業務範囲に即した最適な提案が行えます。例えば、2次元と3次元を使い分けたハイブリッド設計にも柔軟に対応できます。

今年の展開としては、中堅・中小のエンドユーザ様がより導入しやすいように、BIMのコンサルティングに力を入れるとともに、BIM対応製品のLT版もリリースする予定です。さらに、クラウド上でレンダリングや各種解析が行えるようになっていますし、各種BIMデータもビューイングも可能となる予定です。こうした先進的な取り組みとパートナー様の販売力を借りて国内のBIMの裾野を広げていきたいと考えています。