2014年1月28日発行

「Autodesk University 2013」レポート
建築家、エンジニア、設計者、インダストリアルデザイナーおよびオートデスクユーザが集う国際的なプレミアイベント

オートデスク社が主催する「Autodesk University 2013」が2013年12月3日~5日に米国ラスベガスで盛大に開催された。世界74カ国の建築家、エンジニア、設計者、インダストリアルデザイナー、およびオートデスクユーザが一堂に会した。来場者は過去最多の約9300人。加えてオンライン参加者は3万5000人に上る。今後のものづくりの参考になる最新情報が得られることが、その人気の理由だ。今回は、その主な内容を紹介する。

650以上のクラスを自由に選択し今後のビジネスに活かす

「Autodesk University 2013」のコンセプトは大きく3つ。「Learn(学ぶ)」「Connect(つなぐ)」「Explore(探る)」である。このうち、「Learn」には、ものづくりに役立つ最新情報が得られ るという意味が込められている。

例えば、「Autodesk University2013」には650以上のクラスがあり、それぞれがホテルの一室を借りて同時進行でセッションなどが行われた。クラスは3種類に分かれており、その中から興味があるものを自由に選択して参加できる。

1種類目のクラスは、CADを使ったビジネスにおける世の中の流れや最新動向などを紹介し、それに対してどのように対処すべきかなどを学べる。
2種類目のクラスは、オートデスク製品のユーザが講師を務め、オートデスク製品を使いこなすための具体的な活用方法や運用方法を学べる。
3種類目のクラスは、オートデスクの開発スタッフが講師を務め、各種製品のコンセプトや最新機能などをわかりやすく学ぶことができる。

この中のいくつかのセッションはストリーミング配信されているので、会場に行けなかった人も視聴することが可能。ただし、今回はすべて英語で日本語の翻訳はついていない。
また「Connect」では、参加者同士のコミュニケーションを深める場を提供。例えば、朝と昼の食事では、同じテーブルに座った人たちが、自然に会話ができる雰囲気づくりを演出。パートナーやサードベンダーがブースを構えるスペースでは立食パーティを開き、ラウンジには、オートデスクの製品担当者がユーザの細かな質問に応じている。

特筆すべき点は、今回初めてソーシャルネットワークとの連動を実現したこと。オートデスクがスマートフォン用の専用アプリを無償で提供し、米国で主流のLinkedinやツイッター、フェイスブックを使って各セッションの感想などを言い合える環境づくりを行い、好評を得た。

さらに「Explore」では、参加者の今後のビジネスに活かせるように、各業界の最新トレンドなどを紹介。例えば、製造業では3Dプリンタを使った革新的な製造プロセスを、建設業では3Dスキャナーを用いた都市開発の実例などを取り上げた。

基調講演では不確実な時代に勝ち残るためのヒントを提示

「Autodesk University 2013」の基調講演では、オートデスク CTO(最高技術責任者)のジェフ・コヴァルスキが登壇。将来的に何が起こるかわからない状況下では、外側から自分たちをもう一度見つめ直す必要があると指摘し、「Tools(道具)」「People(人)」「Work(働き方)」「Insight(洞察、気付き)」の4つのキーワードを掲げた。

例えば、「Tools」の側面では、モバイル端末やクラウドコンピューティングの 有用性などに言及。「People」では、人のつながりによってコラボレーションできる環境が整ったと述べた。「Work」では、そうした環境下で仕事のやり方をいかに変革するか、「Insight」では、それを将来的にどのように活かしていくか考えることが重要だと強調した。

さらに、外に目を向けることで、これまで不可能だと思っていいたことが容易に実現できるようになると語り、その具体例として、3Dプリンタで作ったスピーカーの事例などを紹介した。

その後、オートデスク CEO(最高経営責任者)のカール・バスがスピーチ。『Autodesk 360』によるコラボレーションが進展していると述べ、いくつかの活用事例を紹介。例えば、デンバー国際空港では、3次元CADで作成したBIMモデルと実際の施工状況を検証するために、毎日3Dスキャナーで計測していることを取り上げた。

クラウド版で潜在需要を喚起

「Autodesk University 2013」では、オートデスク製品のクラウド版に関する発表が行われ、来場者の関心を集めた。だが、既存のデスクトップ版が今後すべてクラウド版へ移行するわけではない。あくまでも、メインはデスクトップ版である。

クラウド版は、一定期間の契約を結ぶことで手軽に利用できることが特長だが、使える機能は限定されている。一方、デスクトップ版は、一度ライセンス契約を結べば永久に使用でき、多彩な機能を使うことができる。その意味では、ユーザの選択肢が増えることになる。

例えば、3次元モデルをシミュレーションしたい場合に、まずは比較的安価なクラウド版で試してみる。そのうえで、これからも頻繁に使い続ける場合にはデスクトップ版への移行を促す。そうすることで、ユーザは初期投資を抑えて新たな取り組みを始められるようになる。特に小規模の企業では、クラウド版の潜在需要が多いのでビジネスチャンスが広がる。

オートデスクでは、日本版の「Autodesk University Japan」も毎年開催している。グローバル版と比べて規模は小さいが、CADを利用したビジネスに関して有意義な情報が得られるので、参加するメリットは大きい。今後、より一層盛り上げていく計画なので、国内市場を活性化するために、パートナー様にぜひご協力していただきたい。