2013年3月28日発行

『AutoCAD 2015』開発者インタビュー
製品コンセプトとセールスポイント
先進機能を使いこなして競争力を高める

オートデスクは、最新バージョンである『AutoCAD 2015』を2014年3月にリリースする。ユーザインターフェースの改善による使い勝手の向上と、クラウドサービスの接続性がより一層高まったことが主な特徴といえる。『AutoCAD』製品群の総責任者である副社長のAmyBunszel氏と、開発計画責任者であるRob Maguire氏に、新バージョンの開発コンセプトやお客様に拡販する際のセールスポイントなどをお聞きした。

UIの改善で作業効率が向上。クラウドの接続性もアップ

Amy Bunszel氏
AutoCAD プロダクツ 副社長 情報モデリング・プラットフォームプロダクトグループ

現在、オートデスク製品は、デスクトップ版、Web版、モバイルデバイス版の3つのデバイスに対応しているが、その中で最もパワフルな製品がデスクトップ版だ。そこでデザインした図面は、『AutoCAD360』というクラウドサービスにアップロードすることで、Webでもモバイル環境でも利用することができる。

2014年3月には、エキサイティングな『AutoCAD』の新バージョンがリリースされる。主な開発コンセプトは、①近代的なユーザインターフェースの実装、②使いやすさを追求して生産性向上に貢献すること、③クラウドサービスの接続性を高めること。とりわけ、エンドユーザ様の作業負担を軽減する細かな改善が随所に施されていることが大きな特徴といえる。

例えば、ライブマップ機能を活用することで、クラウド上にある地図データを3次元モデルに簡単に取り込める。これにより、『AutoCAD』でデザインした建築物をニューヨークのタイムズスクエアに設置した場合の見た目の変化などを事前に検証できる。古い工場やビルを建て直すときなどに役に立つ先進的な機能だ。

また、設計作業を長時間続けていると目が疲れるので、それを和らげるために、全体の画面を暗くできる機能を新たに実装。同時に作図する線はくっきりと見やすくなった。また、これから選択する項目と実際に選択した項目を二段階でわかりやすくハイライト表示。注釈を入力する画面も拡張し、Wordのように文字揃えなどが簡単に行えるように改良している。

さらに、コマンドを実行する前に事前にプレビュー画面で確認できる機能も追加。例えば、図面の一部をいったん切り取ると、後でやり直したいと思ったときに大変手間がかかる。しかし、事前にプレビュー画面で確認しておけば、そうした無駄な作業から解放される。

新バージョンは、クラウドサービスの接続性も非常に高い。『AutoCAD』上でいかなる作業をしていても。クラウド上のデータにすばやくアクセスできる。これはデスクトップ版に限らず、Web版やモバイルデバイス版でも同じことがいえる。

特にWebやモバイル環境でも利用できるクラウドサービス『AutoCAD 360』は、非常に大きな成功を収めている。これまでに専用アプリは1500万ダウンロードされており、5000万のファイルがアップロードされている。iPadやiPhone、Android端末から図面の閲覧などが行えるので、もはや大量の紙図面を抱えて現場へ出向く必要はない。モバイルデバイス1台で身軽に現場へ行ける時代だ。有償版のアプリを使えば活用範囲はさらに広がる。

Amy Bunszel氏は、「日本では『AutoCAD 360』をモバイル環境でも利用できることをまだ知らないエンドユーザ様が多いので、パートナー様にぜひアピールしてください」と訴える。

また、『AutoCAD』やSuite製品のレンタル版も提供し、月や年単位の期間限定でライセンスを付与している。フルライセンスを購入するのは価格面で難しいというお客様の声に応えたもので、レンタル版を利用することでイニシャルコストを最小限に抑えられる。

ちなみに、すべてのSuite製品には『AutoCAD』が含まれているので、最新のSuite製品を導入すれば、先に紹介した『AutoCAD』の新機能を利用できる。今後は『AutoCAD Mechanical』などにも同様の機能が実装されるので、『AutoCAD』ファミリ全体の使い勝手が向上する。

今年はBIM対応に注力。企業競争力の強化に貢献

Rob Maguire氏
AutoCAD プロダクトライン マネージャ

現在、『AutoCAD』が最も使われているのは建築業界である。例えば、建築業向けプロジェクトレビューツール『Navisworks』の利用者のほとんどが、そのモデルづくりに『AutoCAD』を活用している。そうした中、2014年から特に力を入れているのが『AutoCAD』のBIM対応だ。

新バージョンでは、オートデスクが提供しているクラウドベースのBIMソリューション『BIM 360』との融合性を強化し、新たに『BIM 360』のアドイン機能を追加。『AutoCAD』で作成したファイルをダイレクトに『BIM 360』にアップロードし、クラウド上でシミュレーションやコラボレーションなどを手軽に行えるようになる。

その一方、日本は海外に比べてBIMの普及があまり進展していないという現状がある。しかし、諸外国では、国家レベルの記念碑的な建築プロジェクトを契機に、BIMが急速に普及しはじめるケースが多い。その意味では、2020年に開催予定の東京オリンピックは、まさにBIMが国内で普及する大きなきっかけになる可能性が高い。そのため、建築関連企業は、いち早くBIM環境に適応したインフラを整備しておくことが重要だ。それによって、他社よりも一歩先んじた取り組みを実践できるようになる。

また日本では、セキュリティの観点から設計図などを社外に持ち出すことを制限し、外部のクラウドサービスを利用することに不安を抱いている企業も多い。

その点について、Rob Maguire氏は、「クラウドは当社の製品を有効活用していただくためのオプションの一つです。しかし、その便利な機能を取り入れない企業は、おそらくビジネスにおいて二番手に甘んじてしまうでしょう。逆に、クラウドの先進的な機能を使いこなすことで自社の競争力を高められます。パートナー様は、この点を踏まえてオートデスクのクラウドを活用する利点をエンドユーザ様にお伝えいただきたいです」と助言する。

例えば、ライブマップ機能は、エンドユーザ様の設計データをクラウド上にアップするのではなく、クラウド上にある地図データを手元に取り込むかたちなので外部に情報が漏れる心配はない。そのため、クラウドに抵抗を感じているエンドユーザ様も安心して活用できる。

また、Windowsのマルチタッチへの対応については、基本的にCAD上では指を使った操作は難しいのが実情だという。しかし、新バージョンでは、一部の機能で指を使った操作にも対応している。今後、マイクロソフトの動向を見極めながら開発の方向性を検討していく考えだ。

最後にAmy Bunszel氏は、「オートデスクは、常に数歩先を見据えた開発を進めているのが強みなので、今後の展開にも大いに期待してください」と笑顔で語った。