2016年5月28日発行

「ONE TEAM Extension - Japan」レポート
これからの市場をリードするのは、安定した収益をもたらすサブスクリプションモデル

オートデスクは、2016年4月13~14日に東京港区の八芳園でパートナー様向けカンファレンス「ONE TEAM Extension - Japan」を開催。本年をオートデスクがサブスクリプションモデルへの完全以降の年であると位置付け、2017年度のセールスシナリオなど、パートナー様の日々の販売活動に役立つ有意義な情報を包括的に提供した。今回は、その中で日本の二人のキーマンによる基調講演の内容を中心に紹介する。

時代の大きな変化の流れがサブスクリプションに帰結

 「ONE TEAM Extension - Japan」(OTx Japan)は、2016年3月上旬に米国ラスベガスで行われたパートナー様向けのグローバルイベント「ONE TEAM CONFERENCE」(OTC) を受けて開催されたもの。「ONE TEAM CONFERENCE」で発表された2017年度のオートデスクのビジネス戦略やセールスシナリオなどを日本市場向けにフォーカスして紹介した。

そのうち、午前中に行われた基調講演では、APAC(アジア太平洋)地域の首脳陣らに引き続いて、オートデスク株式会社 マーケティング統括本部長の田中克典氏が登壇。パートナー様がサブスクリプションビジネスで成功するための具体的な戦略などを紹介した。

冒頭、現在はPCやモバイル端末が常時ネットワークとつながり、いつでも最新のソフトウェアをアップロードして利用できる時代となったと指摘。以前はソフトウェアを事前に購入する必要があったが、今はお試し版を使って、実際に役立つと思ったら翌月から課金して本格的に利用する。そうしたサービス形態が当たり前になっている。

一方、テクノロジーは大きく進化し、その最たるものがクラウドだ。クラウドのコンピューティングパワーを活用することで、マルチデバイスでいつでもどこでも仕事が行える。こうした時代の大きな変化の流れが、サブスクリプションにすべて帰結している。

サブスクリプションは、パートナー様にとっても大きなメリットをもたらす。例えば、従来のパッケージモデルでは、来期の売上予測をするのは難しい。しかし、サブスクリプションモデルの場合は、売上が月単位、年単位で按分されるので、来期の売上予測が立てやすくなり、長期的に安定した収益が見込めるようになる。

では、具体的にどのようにして売上を伸ばせばよいのか。その方法は2つある。

まず、AutoCADとAutoCAD LTは、認知度が高いため販売しやすいが、比較的低価格なため、まとまった利益をだすためにはライセンス数を多く販売する必要がある。そのため、ボリューム重視のビジネスを実践することがポイントになる。

一方、スイート製品のような付加価値の高い製品は比較的高額で、その価値を理解してもらうまでに時間がかかる。そのため、エンドユーザー様と対話を重ねて納得していただいたうえで購入してもらう、付加価値重視の販売方法を実践することがポイントになる。

さらに、サブスクリプションモデルは、エンドユーザー様に継続的に契約を更新してもらうことが最も肝心だと強調。それによって、長期的なビジネスが可能になるからだ。

そのためには、エンドユーザー様と積極的にコンタクトを取り、有意義な情報などを定期的に提供することで顧客満足度を高めていくことが重要だと指摘。それにより、サブスクリプションの更新時期にアップセルやクロスセルの拡販チャンスが生まれる。要は、エンドユーザー様と強固な信頼関係を築いて囲い込むことがポイントになる。

また、サブスクリプションのビジネスチャンスは今後大きく拡大すると予測。新しい製品やサービスは立ち上げは非常に苦労するが、ある一定の普及率を達成した瞬間、飛躍的に売れるようになる。オートデスクのサブスクリプションは、今まさにその時期を迎えているので、これから加速度的に普及する可能性がある。

例えば、製造分野では3Dプリンターが本格的な普及時期を迎え、経済産業省は3Dプリンターの技術を用いた新サービスやビジネスが今後10.7兆円規模になると予測。製造業のものづくりが2Dから3Dへと大きくシフトしている。土木分野では、公共事業などの作業効率を高めるために、国土交通省が3億円以上の大型プロジェクトのICT活用の義務化を推進。クラウドを活用したコラボレーションのニーズがますます高まっている。

その意味では、オートデスクの製品はあらゆる分野で求められている。「パートナー様のビジネスを強力にサポートするWebコンテンツも豊富に用意しているので、時代を変革する大きなビジネスを一緒に展開しましょう」と田中氏はパートナー様の協力を仰いだ。

顧客対話力をさらに高めて新規加入者と更新率を増やす

続いて、オートデスク株式会社 チャネルセールス部長の草谷裕信氏が登壇。このようなエンドユーザーをとりまく環境の変化に呼応する、2017年度のオートデスクの営業戦略について語った。

冒頭、「2016年7月末にスイート製品の永久ライセンスの販売が終了し、2017年度はサブスクリプションモデルに完全に移行する年になる」と述べた。実際のところ、昨年度同期と比較でも日本のサブスクライバー数は順調に増加しており、これはひとえにパートナー様の支援による賜物だと感謝した。ただし、今後解決しなければならない課題もある。

例えば、新規でサブスクリプション購入する場合にAutoCADとAutoCAD LTが選ばれやすいが、そのほかの製品のサブスクリプションメンバーをいかに増やしていくかが大きな課題の一つ。さらに今後は、サブスクリプションのメリットをお知らせしながら、更新率を高めていくことが必要だ。特にボリューム製品のAutoCADとAutoCAD LTの更新率を増やすことがもう一つの課題だ。

サブスクリプションの新規加入者を増やすためには、1.新規のお客様を獲得すること、2.一つひとつの商談をより大きなものにすること。3.サブスクリプションの未加入者をサブスクライバーにすることの3点がポイントになる。例えば、直感的で使いやすいクラウドサービスであるA360、AutoCAD 360 Pro、あるいはFusion 360を通じて新規顧客を獲得したり、まとまった数の購入になりやすいAutoCADやAutoCAD LTは拡販に注力し、付加価値の高いソリューション系の製品は、ストーリーテリングで活用効果などをわかりやすく伝えることが重要となる。

さらに、エンドユーザー様との強固な信頼関係を築くために、顧客対話力をより一層高める必要があると指摘。具体的には、市場の劇的な変化に対応するために、今何をすべきかを明確にして、理想的なあるべき姿に近づくための行動を促すことが重要だと述べた。

そのうえで、草谷氏は「オートデスクとパートナー様が“ONE TEAM”となり、一丸となって取り組めば高い目標も必ず達成できます。明るい未来のために、ともに全力で駆け抜けましょう」と力強く呼びかけた。