2017年11月28日発行

AutoCADとAutoCAD LTの違いを理解しよう
意匠設計から詳細図まで設計のすべてのフェーズに対応できるAutoCADをサブスクリプションで手軽にスタート

パートナー様がCADビジネスを推進する際に、AutoCADとAutoCAD LTの違いについての理解を深めておきたいというご要望がある。その違いを再確認しておくことで、エンドユーザー様に最適な提案ができるだけでなく、CADビジネスをより展開しやすくなるからだ。その最大の違いは、AutoCAD LTは図面作成・編集のみだが、AutoCADは、高精度の詳細図面だけでなく、コンセプトモデルの作成やアニメーション、3Dプリンターへの出力といった3Dデザインに対応していることだ。さらに、仕事の内容に合わせて柔軟にカスタマイズが行えることも、AutoCADの大きな利点の一つ。今回は、AutoCADとAutoCAD LTの違いについて紹介したい。

あのレギュラー版が手軽に導入できるサブスクリプション

AutoCADには、AutoCADとAutoCAD LTの2種類がある。このうち、AutoCADは、2次元設計と3次元設計の両方に対応しており、自社の業務用途に応じてカスタマイズが行えるので拡張性や柔軟性に優れている。一方、AutoCAD LTは図面の作成・編集のみに対応し、AutoCADに比べて使用できる機能が限定されている。つまり、LTはAutoCADの一部の機能のみを備えたいわば「ライト版」であり、フル機能が使えるAutoCADの方が勝っていることは言うまでもない。

だが、日本国内の中堅小企業では、AutoCAD LTを導入しているところが非常に多い。その理由の一つは、買い取り式のライセンス方式ではAutoCADの導入コストが中小企業には大きな負担になっていたからである。しかし、この問題はサブスクリプションによって解決できる。もう一つの大きな理由は、設計業務の大半が図面の作成・編集にとどまり、レンダリングやアニメーション、3Dプリンターへの出力といったニーズが身近に感じられなかった背景がある。

ところが、近年では、3Dスキャナーや3Dプリンターなどの周辺機器の普及やCIMに代表される3Dデータ活用の推進により、3Dモデルをベースにしたプロジェクトが増え、中堅中小企業でも3次元設計への対応が求められるようになってきた。このニーズに対応するには、2D&3Dの統合設計環境を備えたAutoCADの導入が必要になってくる。

3次元設計へ移行しやすいAutoCADの導入メリット

AutoCADの最大の導入メリットのひとつが、3次元設計が行えることだ。とはいえ、これまで3次元設計に携わったことのない利用者が、実際に3Dで製品や構造物のコンセプトを考え、部品の詳細な属性や振る舞いを頭に入れながら設計していくのは難しい面があるかもしれない。特定の業種に精通した熟練の設計者でないと、部品の規格やコストにまで意識が届かない場合もある。その点、AutoCADは、汎用CADソフトウェアなので、3Dで表現するコンセプトモデルの作成をシンプルに実現し、あらゆる業種に柔軟に対応できる。

例えば、AutoCADの3D機能で扱う3Dオブジェクトの種類は、3Dソリッド、サーフェス、メッシュの他、フリーフォーム、点群、3Dスプラインなど3DCADで使われるほとんどの種類を扱うことができる。これらの3Dオブジェクトを活用することで、あらゆる業種のあらゆる3D形状を表現することが可能になる。特に日頃からAutoCAD LTで2D図面の作成業務を行っている人が、新たに3Dでコンセプトやプレゼンテーションを作成する場合には、従来と同じ操作環境やコマンドを利用しながら、3D対応へスムーズに移行できるAutoCADは最適なツールといえる。

具体的には、3Dオブジェクトの作成から3Dに対応したパンやズーム、オービットなどの視点変更、3D空間の背景色の指定に至る多種多様な機能を実装。2Dの作図機能で描画したオブジェクトをもとに3Dオブジェクトを作成したり、四角柱や円錐などプリミティブと呼ばれる基本的な3D形状を組み合わせたりすることで複雑な3Dモデルも作成できる。

また、さまざまな3Dオブジェクトの種類の中から、作成したい形状に一番あったタイプを選択して3Dのモデリングが行える。途中で別のタイプのオブジェクトに変換する機能もあるので、目的に応じて柔軟にモデリングを進めていける。

さらに、作成した3Dモデルにマテリアルと呼ばれる素材感を与えて、写真のようなレンダリング画像を作成したり、特定のオブジェクトに沿って視点を移動させるアニメーションを作成したりできる。レンダリング時には、緯度経度と日時を指定することで、太陽光や影を反映させることも可能だ、これにより、効果的なプレゼンテーションなどが行える。

AutoCADは、3Dモデルを作成するだけでなく、他社製品の3DCADソフトウェアで作成した3Dデータファイルを読み込んで、3Dモデルをモデル空間に挿入することができる。インポートできるファイルは、CATIA V4やCATIA V5はもちろん、STEPファイル、IGESファイルやFBXファイルなど主要な3Dフォーマットに対応している。

モデル空間に読み込んだ3Dモデルは、AutoCADで作成した3Dモデルと同じように、レイアウト(ペーパー空間)で2D図面化できるので、便利な機能として提案したい。さらに、必要に応じて、AutoCADで3D オブジェクトを追加するなどして、3Dモデルを流用設計で利用することも可能だ。その他にも、AutoCADに取り込んだ3DモデルをSTLファイルにし、PrintStudioを使って、3Dプリンターで出力することもできる。

自社の業務内容に応じた柔軟なカスタマイズを実現

AutoCADのもう一つの大きな導入メリットは、自社の業務内容に合わせてカスタマイズできる機能が豊富に用意していることだ。設計ルールに従った自動作図などを容易に実現し、個人の生産性だけでなく、チームの生産性の向上に寄与する。

例えば、ユーザーインターフェースの変更は、コマンドのリボンパネルへの配置、リボンパネルやツールパレットの作成、ワークスペースで表示するアイテムの設定など複数の方法で行える。その際、カスタマイズした内容を共有フォルダに保存することで、チームメンバーは共通の作業環境で日々の業務を遂行できるようになる。

頻繁に使用する一連の操作をアクションレコーダーで記録することで、繰り返し実行できるアクションマクロも作成できる。これにより、繰り返し行う作業の手間が大幅に軽減される。アクションマクロのファイルを共有フォルダに保存すれば、チーム内で共有もできる。

また、AutoCADには、VisualLisp、ObjectARX、ActiveX、.NETなどの開発環境が用意されている。そのため、エンドユーザーに最適な環境でプログラミングを施すことで、複雑な設計ルールが伴う自動設計や、ほかの業務システムとの連携なども柔軟に行える。

AutoCADのカスタマイズやプログラミングは、パートナー様が支援することも可能だ。その意味では、パートナー様のビジネスチャンスも大きく広がる。