2018年1月28日発行

Autodesk University Las Vegas 2017レポート
最新のテクノロジーや今後のビジネストレンドを紹介。オートメーション化が新たなビジネスチャンスをもたらす

オートデスクのグローバルイベント「Autodesk University Las Vegas 2017」が2017年11月14日~16日、米国ラスベガスで開催された。参加人数は過去最多の1万人以上で、日本からも100名以上のユーザーが参加。オートデスクの最新のテクノロジーや今後のビジネストレンドを、事例を交えて紹介するとともに、パートナーも含めた活発なセッションを通じて、ユーザーが直面している課題解決に役立つ情報を提供し、大きな注目を集めた。

【オープニング キーノート】AIやロボット化により雇用はさらに拡大する

オープニング キーノートでは、オートデスクの社長 兼 CEO のアンドリューアナグノスト氏が登壇。現在は、人工知能やロボットが急速に進歩しており、それによって雇用が減少してしまうのではないかと危惧している人が多い。しかし、実際にはそうではない。ユーザーにとって最適なものをより多く、より良く、より早く市場に投入できる時代が到来し、新規市場の創出や雇用の拡大につながると指摘した。

例えば、金融機関にATMが初めて導入されたときは、従来の窓口業務の雇用が不要になるのではないかと激震が走った。ところが、逆に雇用は増えている。単純にお金を出し入れしていた業務を担当していた人たちを、ほかの業務に配置転換することで新たな金融サービスが創出され、結果的に雇用の拡大につながっている。

また、10年前はスマートフォンがまだ市場に存在していなかった。しかし、現在はスマートフォンを携帯するのが当たり前の時代となり、新たなビジネスチャンスを生み出している。

特に効率的な設計や製造を実現するためには、人工知能やロボットなどを活用したオートメーション化が必要不可欠である。そのために、オートデスクでは、ジェネレーティブ・デザイン(自動生成技術)を実現。人間が思いつかないようなデザインを大量にコンピューターにつくらせ、その中から最適なものを選んで仕上げていく時代が現実のものになっていると述べた。


Autodesk University Las Vegas 2017のホームページでは、基調講演をはじめ、さまざまなセッションを動画で閲覧できる。
http://au.autodesk.com/au-online/overview

【テクノロジー キーノート】パイロットを補佐する副操縦士の役割を担う

テクノロジー キーノートでは、ユーザーがパイロットで、オートデスクの開発部門はそれを補佐する副操縦士の役割を担っている関係性にあると説明。具体的には、さまざまな製品開発を通じて「スムーズな飛行」「障害の回避」「進路通りの航行」を支援している。

「スムーズな飛行」には信頼性と効率性を高めることが重要になる。そのために、オートデスクは、エンドユーザーの意見を反映させながら、数カ月単位で製品のアップデートを提供している。また、米国では人工知能のアシスタントが、ユーザーの質問に答えている。これにより、これまで約2週間かかっていた回答時間がわずか10分に短縮された。2018年には日本語版も提供する予定だ。

「障害の回避」では、あらゆる条件や環境をデータ化し、そのデータを中心に物事を考えていくことが重要になると指摘。そのために、オートデスクでは、製品間のデータ連携がスムーズに行える環境づくりを積極的に行っている。

「進路通りの航行」では、ユーザーの目的遂行をサポートするために新技術の開発に着手している。具体的には、製造業や建設業向けの各種シミュレーションツールを今後拡充していく。

最後にビッグニュースとして、GISのソフトウェアベンダーのESRI社と業務提携したことを発表。今後、両社の技術を融合することでより良いサービスを提供していくと述べた。

【製造業界向けキーノート】ボタンを押すだけで完成する夢のような世界を実現する

製造業界向けキーノートでは、製造現場のオートメーション化は創造性と革新性をもたらし、さまざまな制約から解放し、人の能力を補完する役割を担うと指摘した。例えば、ロッテルダムの港では、船のスクリューを3Dプリンターで製作することで開発期間を大幅に削減し、コスト削減を図ることに成功している。

さらに将来的には、プッシュ・ボタン・マニュファクチャリングが実現されると指摘。すなわち、ボタンを一つ押すだけで必要な製品や建築物ができ上がる。夢のような世界だが、さまざまなオートメーション技術を組み合わせることで、ぜひ実現したいと語った。

また 、ジェネレーティブ・デザインを具現化する『Generative Design』と、部品の加工状況などをモバイル端末で管理できる『Fusion Production』を製品化すると正式に発表。今後、Inventorに板金加工用のネスティング機能が実装されることなども併せて紹介した。

【建築・土木業界向けキーノート】BIM 360を有効活用することで共通のデータ環境を整備する

建築・土木業界向けキーノートでは、フランスの鉄道や中東の美術館の事例を通して、建築や土木分野でもジェネレーティブ・デザインの技術が既に活用されていることを強調。また、小型のセンサーを建設現場作業員の作業服に装着し、作業手順をトラッキングすることで危険な動作を事前に防ぐ取り組みや、 IoTを活用して建設現場の施工状況をタブレットで管理できる最新のテクノロジーなどを紹介した。

そのうえで、今後は、プロジェクトメンバー間でさまざまなデータを活用できる共通のデータ環境を構築することが重要になると指摘。その中心となるキーテクノロジーがBIM 360である。実際に多くの企業がBIM 360を効果的に活用しており、データのやりとりや確認作業の時間を大幅に短縮することに成功している。

また、壁など規格化できるものは製造工場で生産し、建設現場では組み立てるのみとすることで精度や生産性を向上させ、さらに製造データを建物の維持管理にまで活用するなど建築物も工業化する事が重要であると強調した。


Autodesk University Las Vegas 2017の会場レイアウトは、ジェネレーティブ・デザインによって、デザインされたとのことだ。