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SIMフリースマホビジネス特集
第4回 〜Windows Phoneの開発秘話とビジネスの可能性〜

スマートフォンの新たな潮流として、SIMフリー端末がにわかに注目を集めている中、BTOを中心としたPCメーカーであるマウスコンピューターは、スマートフォン市場に積極的に参入。現在、Windows Phoneの最新モデルの開発を進めている。最新機種は完全SIMフリー対応が大きな特長だ。株式会社マウスコンピューター 製品企画部 部長の平井 健裕氏に、Windows Phoneを選定した理由や今後のビジネスの展望について話を伺った。

iPhoneとAndroid端末が主流の中でWindows Phoneを選定した理由とは?

株式会社マウスコンピューター 製品企画部 部長 平井 健裕氏
株式会社マウスコンピューター
製品企画部 部長
平井 健裕氏

 BP:「PCメーカーである御社が、スマートフォンを、特にiPhoneとAndroid端末が主流の中でWindows Phoneを開発するに至った経緯について、聞かせてください」
 平井:「もともとのスタートは、PCメーカーだったから、という点です。PCメーカーとしてWindows PCを製造・販売していく中で、複数のデバイスを用途に応じて使い分けるマルチデバイスの時代に即応するために、まずはタブレットPCの開発に、そしてスマートフォンの開発に着手したのは自然な流れでした。
 その中で、Windows Phoneを選んだのは大きく2つの理由が挙げられます。一つは、長年開発してきたWindows PCと最も親和性が高く、Windows PCと同じアカウントを使ってデータの同期が取れるなど、PCとの連動がスムーズに行える利点があります。

 もう一つは、Windows Phoneの市場は、ここ数年キャリアの取り扱いがなく、非常にニッチなマーケットであるということ。一方、Android端末は既に市場に多くの製品が出回っており、そこに新規に参入しても競争に勝つのは至難の技です。Windows Phoneは企業の業務端末として活用したいという声が数多くあるため、この市場であれば、一定のシェアを獲得できるのではないかと考えました」
 BP:「確かに、日本国内においてWindows Phoneはまだ広く浸透しているとはいえない状況ですね。この現状は、日本特有のものでしょうか?」
 平井:「海外ではマイクロソフトがLumiaという端末を発売しており、既にローエンドからハイエンドのモデルまで網羅されています。Windows Phoneは海外では一定のシェアを獲得しているといえますが、日本ではLumiaは発売されていません。また、日本の他メーカーでも、まだまだ積極的にWindows Phoneを開発しているとは言い難い状況です。そういった意味では、日本は特有の環境にあるといえます」

 そうしてWindows Phoneの開発に踏み出したマウスコンピューターだが、当初は少なからず苦労があったという。例えば、Windows PhoneのOSには、当時から日本語サポートはあったものの、いざ開発に着手したら、それに不備があることに気づいたという。
 平井:「1つ前のバージョンになりますが、Windows Phone 8.1は既に開発がほぼ完了していたので、その段階で日本のPCメーカーの改善要望が反映されることはまさに異例の出来事でした。これはひとえに日本マイクロソフトさんが積極的に協力してくれたおかげです。その後、次期OSのWindows 10 Mobileからは日本語サポートのスキームを改善してもらえることになり、開発が非常にストレスなく行うことができました」
 BP:「それは大変な問題でしたね。そのほか、Windows OSならではの苦労はありましたか?」
 平井:「日本にはLumiaのようにWindows Phoneの標準機となりうる端末がないため、動作検証をしていてもこれはWindows Phoneとしての通常の動作なのか、それとも端末独自の動作なのか、切り分けをする指標がないこともしばしばでした。一つ一つの動作を洗い出し、修正していく作業は膨大な量で、ここも苦労した点といえます。また、中国の共同開発チームからは、Android端末なら高性能のものが安価に作れるのに、なぜWindows Phoneなのかと不思議がられました。しかし、Windows Phoneは法人市場で今後大きなビジネスになると粘り強く説得し、ようやく理解を得ることができました」

 こうした苦労を経て、マウスコンピューターは、他社に先駆けてWindows Phoneを自社開発し、世に送り出した。さらに現在は、Windows 10 Mobileを搭載した最新モデル『MADOSMA Q601』の開発が順調に進んでいる。発売日や価格は未定だが、潜在需要を喚起する大きなビジネスに発展する可能性があると、平井氏は大きな期待を寄せている。

「当時のWindows OSの日本語サポートは、英文をそのまま日本語にしただけの内容で、全容を読み取る作業には多大な労力を費やしました。日本マイクロソフトさんには、改善に大変な尽力をいただき、本当に感謝しています」と語る平井氏。

法人ユーザーにメリットをもたらすWindows 10 Mobileでビジネスを拡大

 BP:「2016年夏からいよいよ、各メーカーが日本市場に向けてWindows Phoneを本格展開してきます。活性化するWindows Phone市場に向けて、どのように期待していますか?」

マウスコンピューターの開発中の新製品『MADOSMA Q601』。デュアルSIMスロット搭載で、完全SIMフリー対応、海外利用も視野に入れている。
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 平井:「仰る通り、今年1年はWindows Phoneが本格的に市場に広がっていくかどうかを占う重要な年だと感じています。今後、Windows Phoneが盛り上がりを見せるためには、それを支持する一定のシェアが必要となります。今年どのような市場価値を訴求できるかで、Windows Phoneを知らない層も含めたシェアをどれだけ獲得できるかにつながりますし、『MADOSMA Q601』も市場に新しい価値を提供できる製品だと期待しています」
 BP:「そうすると、その動向はビジネスパートナー様も注視しつつ、流れに乗り遅れないよう情報収集することが重要になりますね」
 平井:「Windows Phoneは、法人のお客様にこそメリットが感じられるスマートフォンです。例えば、スマートフォンを企業で使用する場合は、セキュリティ対策が重要になりますが、Windows 10 Mobileでは新たにセキュリティホールが見つかった場合、マイクロソフトが個々の端末に直接パッチを自動配信してくれます。対してAndroid端末では、バグなどが発見された情報が流れた段階で、それぞれの端末メーカーの判断によって対応策を講じるケースが多く、新しいセキュリティホールに未対応の状態で使用せざるを得ない可能性もありました。その意味では、Windows 10 Mobileの方が安全性に優れ、企業が選定しやすいスマートフォンといえるでしょう。

 また、Android端末は、ゲームやSNSの最新機能など利用できるものが豊富にありますが、企業の業務用途では、むしろ利用してほしくないものもあります。その点、Windows 10 Mobileは、Office 365などのビジネス向けのアプリケーションの利用が中心なので、企業の業務端末として適していて、PCで使っている既存のアプリケーションを移行しやすいという利点もあります」

Windows 10 Mobileでは新たにセキュリティホールが見つかった場合、マイクロソフトが個々の端末に直接パッチを自動配信される。

 BP:「さらに、『MADOSMA Q601』は、Windows 10 Mobileの新機能「Continuum」にも今後対応する予定と伺っています。この点も、法人利用においては期待されている部分だと思います」

Windows 10 Mobileの新機能「Continuum」。Windows Phoneを外部ディスプレイに接続し、Windows 10搭載PCと同じように操作可能。
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 平井:「「Continuum」は、Windows Phoneを外部のディスプレイに接続することで、Windows 10を搭載したPCと同じようなことができるというものですが、最大のメリットは企業が管理する端末を減らすことができる点です。現在ではPCだけでもデスクトップ型、ノート型、スティック型と数多く存在し、さらにタブレット、スマートフォンとモバイル端末も含めると管理数は膨大なものになります。
 これがWindows Phone1台で完結することで、管理の負担は劇的に削減できるのです。現段階では利用できるアプリケーションなどは限られるので、今すぐにPC並みの機能を有することは難しいですが、今後の技術革新が進んでいけば、ユーザーだけでなく管理する側にとっても、Windows Phoneは魅力的なスマートフォンとして企業に受け入れられるはずです」

最新機種は完全SIMフリー対応で海外でも利用できる可能性も

 BP:「『MADOSMA Q601』の開発コンセプト、アピールポイントを改めて教えてください」
平井:「まずはやはりWindows 10 Mobileを搭載することで、「ポケットに入るPC」として使えるスマートフォンを目指しました。現在、スティックPCのように持ち運べる端末も発売されていますが、大きな違いは移動中でも使えることです。移動しながらでもオフィスと同じ作業を継続し、またモニターのある場所では「Continuum」を利用してオフィスのPCと同じように使えるようになります。この点は、ビジネスユーザーにメリットを感じていただけるポイントだと思います。

 また、SIMフリーに完全対応していることも大きなセールスポイントです。MVNO(仮想移動体通信事業者)のプリペイドSIMを端末に差し込むことでデータ通信などが手軽に行え、各社の多種多様なサービスから自由に選択することができます。

 さらに、『MADOSMA Q601』はデュアルSIM仕様で、国内の周波数帯はもちろん、ビジネス利用での要望の多い海外の周波数帯にも対応します。具体的には、アメリカ、ヨーロッパ、中国、台湾、香港などで利用可能な仕様になっており、SIMスロットの1つ目に自国のSIMを、2つ目に海外の訪問国の通信事業者のSIMカードを装着しておけば、海外に到着した際にSIMスロットを切り替えるだけで、すぐに利用ができるのです。実際の利用には、各国での実用に即した細かな評価など、クリアすべき問題はありますが、海外に頻繁に出張される方にはぜひ検討していただきたいですね」

自信を持って『MADOSMA Q601』をアピールした平井氏は、「Windows Phone市場にパートナー様が興味を注いでいただくことが、今後の技術革新から一定シェアの獲得まで、市場を育てていく大きな力となります。ぜひ、一丸となって、この市場を盛り上げていきましょう」と笑顔で語った。

 BP:「日本におけるWindows PhoneやSIMフリー端末の認知度、注目度はまだまだ低いものの、御社の『MADOSMA Q601』開発にかける情熱、そして今後のWindows Phone市場への期待の高さなど、大変貴重なお話を伺うことができました。ありがとうございます。最後に、大塚商会のビジネスパートナー様に向けて、メッセージをお願いします」
 平井:「Windows Phoneは、アプリケーションの拡充など課題もありますが、法人のお客様に確実にメリットをもたらします。パートナー様にはぜひ興味を持って情報を集めていただき、実際にWindows Phoneに触れて、試していただきたいです。直接触っていただくことで、きっと将来のビジネスに向けた新しい可能性を感じ取っていただけるはずです。そのうえで、エンドユーザー様にWindows Phoneのメリットや活用シーンなどをうまく伝えることができれば、活用事例も増え、一気にビジネスチャンスが広がります。ぜひ、パートナー様と共に大きな市場を形成できるよう、我々も引き続き開発を進めてまいりますので、なにとぞご協力をよろしくお願いいたします」

 Windows Phone、そしてWixdows 10 Mobileが、SIMフリースマホ市場に新たな、そして確固たる価値を提供できるかどうか、今年2016年は勝負の年となる。ぜひとも、最新の動向をチェックしていただき、いち早くビジネスチャンスを掴み取っていただきたい。

マウスコンピューター MADOSMA Q601

『MADOSMA Q601』は、6インチフルHD液晶を搭載したWindows Phone。メインメモリー3GB、記憶容量メモリーも32GBと、十分なスペックを備えている。 Snapdragon 617プロセッサーを採用することで、今後Windows 10 Mobileに追加される新機能「Continuum」にも対応予定だ。発売日、価格等は未定。

OS Windows 10 Mobile
Office ソフト Office Mobile
プロセッサー Snapdragon 617 (MSM8952)
メインメモリー容量 3GB
記憶装置(フラッシュメモリー) 32GB
本体寸法(W×D×H) 82.3×7.9×160mm(計測中)
本体重量(付属品を含まず) 176g(計測中)

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