SIMフリースマホビジネス特集
第6回 ~SIMフリー市場を牽引するメーカーの製品戦略 編~
現在、日本のスマートフォン市場では、通信コストの大幅な削減が可能になるSIMフリー端末の認知度が高まり、そのシェアをにわかに拡大しつつある。その実質的な牽引役を果たしているといっても決して過言ではないのが、ASUSが開発・販売しているSIMフリーのスマートフォン『ZenFone』シリーズだ。ASUS JAPAN株式会社 システムマーケティング部の責任者に、日本市場における製品戦略や今後のビジネスの展望について話を伺った。
ほかにはない独自の製品戦略で、日本のSIMフリー市場を牽引
ASUSは1989年に台湾に設立されたコンピュータメーカーで、当初はPCのマザーボードのビジネスを展開していたが、1990年代から自社ブランドPCの開発・販売に着手。2008年にリリースしたノートPC「Eee PC」がヒットし、その後、2012年にAndroidタブレット『Nexus 7』を世に送り出し、知名度がアップ。さらに、2014年11月に今までにないハイコストパフォーマンスのSIMフリーのスマートフォン『ZenFone 5』の販売を日本で開始し、スマートフォン市場に大きなインパクトを与えた。

以来、日本におけるスマートフォンのSIMフリー端末の市場で、ASUSの『ZenFone』シリーズがトップシェアを占めるようになり、今では、日本のすべてのスマートフォン市場の中で3位のシェアを獲得するまでに急成長を遂げている。
『ZenFone』の名前の由来は、意外にも仏教の座禅の“ZEN”だという。そこには、美しくてシンプルで無駄がないという意味が込められている。
その製品戦略も、他社とは一線を画している。まず、ハイエンドの最上位機種を市場に投入し、その後、特定の機能に特化したユニークな製品を次々に発売し、“ほかではできない体験”を味わってもらうことで、ASUSのファンを広げている。
ASUS JAPAN株式会社 システムマーケティング部 部長の 滕 婉華(シンシア)氏は、「ZenFoneのキャッチフレーズは、“ワンランク上の贅沢を誰にでも”です。低価格を売りにするのではなく、同じ価格帯でより良いものを提供することをポリシーに掲げています。それが日本の消費者のニーズと合致したのです」と語る。
特定の機能に特化した豊富なラインアップを用意
『ZenFone』シリーズの製品ラインアップは、非常に充実しており、利用者の用途や目的に応じて、最適なSIMフリー端末を選択できる強みがある。
2015年5月に発売した『ZenFone 2』は第二世代のSIMフリー端末で、美しさ、使いやすさ、楽しさ、心地よさ、そのすべてを進化させたASUSの主力製品の一つだ。
さらに、2015年8月に発売した『ZenFone 2 Laser』は、最速約0.03秒の速さで被写体へフォーカスするレーザー・オートフォーカスを搭載していることが大きな特徴。この1年間で最も売れた人気商品で、5インチと6インチのモデルが用意されている。
その後、リリースした『ZenFone Zoom』は、光学3倍ズームを搭載し、限りなくクリアな写真撮影が体感できることが大きなセールスポイントだ。
また、『ZenFone Selfie』は、高画素(1300万画素)の背面カメラと前面カメラを搭載し、自分撮り機能を大幅に強化。前面カメラで最大約140度のパノラマ撮影も行える。
一方、『ZenFone Max』は、大容量のバッテリーを搭載し、連続待受時間は、驚愕の38日間。最大約37.6時間の連続通話が可能になる。まさにほかにはないユニークな製品といえる。このほか、SIMフリー端末で2万円を切るエントリーモデルもリリースしている。
ASUS JAPAN株式会社 システムマーケティング部 プロダクトマネージメント アカウントマネージャーの李 嘉樂(レイレン)氏は、「SIMフリーの最大の魅力は通信コストを飛躍的に軽減できることです。大手キャリア向けのスマートフォンから移行すれば、1年間で6~7万円のコスト削減が可能になります。しかし、SIMフリーの認知度はまだまだ低いのが実情です。そのため、『SIMフリーがどういうものかよくわからない』、『SIMフリー端末に変更するのが面倒くさい』といったイメージさえ払拭できれば、今後一気に市場が拡大する可能性があります」と語る。

タブレット『ZenPad』も好調。パートナー様との協業も強化

システムマーケティング部
プロダクトマネージメント アカウントマネージャー
李 嘉樂氏
ASUSはタブレットの販売も非常に好調だ。その主力製品である『ZenPad』は、7インチ、8インチ、10インチのモデルが用意されており、特に日本では7インチのモデルが予想以上に良く売れているという。
「海外では10インチが主流ですが、日本人は電車による通勤時間が長いので、電車の中で本を読んだりするときに、7インチのタブレットはちょうど良い大きさなのです」と滕氏は語る。
また、8インチのタブレットは、自宅やオフィスと外出先の両方で利用するケースが多い。例えば、出張にノートPCは大きすぎて持っていきたくないので、8インチのタブレットで代用している人が多い。一方、10インチは、自宅やオフィスで利用するケースがほとんどで、画面が大きくて見やすいため、7インチと同様に非常に良く売れているという。
「ASUS ZenPadは、SIMフリーモデルとWi-Fiモデルがあります。自宅やオフィスではWi-Fi環境が構築されているケースが多いので、10インチのWi-Fiモデルを提案することで、通信コストの見直しを図ることもできます」と滕氏は語る。
『ZenFone』や『ZenPad』は、端末価格も比較的安価なので、既に1000台規模で大量導入している企業も少なくない。そこで、ASUSでは、日本のパートナー様向けにボリュームディスカウントの販売キャンペーンなどの施策を展開することも検討している。
「日本のエンドユーザー様は、デジタルデバイスに目が肥えているので、日本市場で受け入れられれば、グローバル市場でも必ず勝てます。そのためにも、パートナー様には、製品に関する要望や意見を積極的にフィードバックしていただきたいです。それらに一つひとつ応えていくことで、パートナー様と一緒にビジネスを加速させていきたいと考えています」と滕氏は語る。