SIMフリースマホビジネス特集
第7回 ~SIMフリーデバイス 編~
日本のコンシューマー市場では、SIMフリースマホとMVNOが普及の兆しを見せ、ビジネス分野でもSIMフリービジネスが注目されるようになっている。SIMフリーデバイスも、ドコモ系のSIMだけでなく、au系SIMにも両対応する製品も登場しはじめ、いよいよ本格的なSIMフリー時代の幕開けといえるのではないか。そこで今回は、スマホ以外のSIMフリーデバイスに注目したい。また、来るべきIoT時代に対応するという意味で、無線モジュールについても紹介したい。
Aterm MR05LN
SIMの組み合わせで使い方は自由自在!
高速・快適モバイルルーター

SIMフリーデバイスのなかで、スマホとともに定番ともいえるデバイスが「ルーター」だ。なかでも「Aterm MR05LN」は、「通信速度」と「搭載できるSIMスロットの数」で人気の機種といえる。
まず、通信速度は、次世代通信方式LTE(受信最大375Mbps、送信最大50Mbps)のLTEAdvancedに対応。CA(キャリアアグリゲーション)と呼ばれる複数の周波数帯を束ねる技術を用いることで、高速な通信を実現している。受信最大300Mbpsの高速通信は、ビジネスで使うモバイル機器として最高水準にある。また、IEEE802.11acに対応しているので、この規格に対応するスマホやタブレットであれば、最大867MbpsによるWi-Fi通信が可能となる。
そして、搭載できるSIMスロットは、モバイルルーターとしては珍しいデュアルSIMスロットに対応。ドコモやソフトバンク、あるいはauなどのSIMが一度に使えるSIMフリーモバイルルーターの最大の特徴に加え、それぞれ異なるSIMを同時にセットし、切り替えて使えるメリットは計り知れない。例えば、サービスエリアや電波のつかみ易さに応じてキャリアを変更するといった使い方ができ、しかもMR05LNでは、「自動SIM切替」機能を搭載し、利便性が向上している。
モバイルルーターは、スマホと違いデータ通信以外に使う機能が大きく省かれているため、相対的にバッテリー消費量は少なくてすむ。また、スマホやタブレットをBluetoothで接続した場合だと最大で24時間の接続が可能。ビジネスのオンタイムはすべてカバーできるのは頼もしいかぎりだ。
PC、スマホ、タブレットといったデバイスに高速通信環境を提供できるSIMフリーモバイルルーターをぜひご提案いただきたい。
無線モジュール

超小型、省電力、長距離通信を
実現する無線モジュール
無線モジュールとは、小型サイズで、HEMSや省エネシステム、エネルギーの見える化システムへの活用、防犯、物流管理、工場製造ライン監視など、さまざまな用途に利用することができる無線通信可能なモジュールのことで、IoTの中核をなすセンサーデバイスとして注目されている。これらのデバイスは長時間放置されることが前提であるため、電源供給とコストが課題だった。近年、転送可能距離が短く転送速度も非常に低速である代わりに、安価で消費電力が少ないという特徴を持つ「ZigBee」の普及より、センサーネットワークを中心とするサービスへの着手が急速に進んでいる。
なかでもグリーンハウスの無線モジュールは、小型化、低消費電力を実現し、アンテナ設計とマッチング回路設計に関するスキルと経験により、長い距離の通信を可能とした高性能無線モジュールだ。これらの無線モジュールは、単体販売されるよりは、サービスとセットに導入されることが一般的だ。例えば、ビニールハウス内の温度・湿度の変化を検知しデータ送信することや、スプリンクラーを作動させるなど、ビニールハウス側の機器の制御も可能だ。

また、圧力センサーと無線モジュール内蔵ドアマットの組み合わせであれば、入退室のログを管理でき、確実に自動ドアを起動すると同時に入退室のログを管理することができる。
M2Mなどのセンサーネットワークは、近年世界規模で急速に市場が拡大している。もし、エンドユーザー様がお困りの案件がある場合、無線モジュールを活用したセンサーネットワークが解決できるかもしれない。
ヤマハ NVR700WLTEアクセスVoIPルーター
既存の公衆回線網が停止する「2020年問題」接近
ISDN終了を見すえたヤマハのVoIPルーター
2020年に停止する
ISDN回線の代替に

固定電話の利用者減少を受けて、NTTは通信インフラをすべてIP網に移行することを決定。2020年から既存の公衆交換電話網を随時廃止する予定だ。これに伴い、同年後半にはISDNサービス「INSネット」のデジタル通信モードも終了する見込み。INSネットを利用したPOSや基幹システムを採用している事業者には死活問題だ。
そういった背景から開発されたVoIPルーターが、ヤマハの『NVR700W』だ。大きな特長は、本体に4バンドの無線WANモジュールを内蔵している点。NTTドコモやMVNO事業者のSIMカードを装着することで、無線通信環境を実現できる。従来機のように別途USB接続のデータ通信端末を用意する必要はない。有線回線の代替手段としても、仮設店舗など短期間の通信環境が必要なケースでも、最適な製品といえる。もちろん、既存のISDN回線からの置き換えにも有用だ。
ヤマハ株式会社 音響事業統括部 営業推進部 ネットワーク機器営業グループの小島務氏は、「小売りのチェーン店のお客様には、ISDNサービスを利用してバックアップを行う需要が多くあります。LTEを搭載できる『NVR700W』は、お客様のご要望にお応えできます」と製品の重要性について話してくれた。
ONUポートの搭載で
省スペース化も実現


ONUポートの搭載もメリットの1つ。小型ONUを装着することで、据置型のONUやVoIPアダプターを接続することなく、ルーター単体で光回線へ接続可能。これにより、省スペース化と省電力化を実現できる。
LAN間でのスループットは、2Gbit/sに向上。IPsec環境でも700Mbit/sを実現し、快適な通信環境を提供している。管理用のGUIも刷新され、配下の対応スイッチや無線LANアクセスポイントの接続状態を確認できるほか、電話の利用状況も、容易に把握できる。通信網事情が大きく変わる「2020年問題」へ対応するうえで、見逃せない製品となりそうだ。
また、『NVR700W』は、固定回線の代替としての利用にとどまらない。例えば、建設現場や土木工事、各種イベントなど、一時的に通信環境が必要な場所での活用も期待できる。「2020年には東京でオリンピックが開催されます。そのため、今後は、来日する外国人向けのサービスの充実が予想できます。インバウンド向けのイベントブースは、恒久的に通信回線を敷設するというより、一時的に『NVR700W』で環境を提供したほうが、効率の良い場合もあるでしょう」と小島氏は話す。
さらに、震災や事故で固定回線が利用できない場合の、緊急バックアップ回線としての提案や、あまりデータ量を必要としないIoTルーターとしての提案など、利用は広がるに違いない。