SIMフリースマホビジネス特集
特別企画 ファーウェイ・ジャパン トップインタビュー
ファーウェイのスマートフォンやタブレットなどの情報端末は、グローバル市場はもとより、日本市場においても急速にシェアを拡大し、ここ数年の間に驚異的な躍進を遂げている。ファーウェイが開発した製品が日本市場に受け入れられているのは、どのような要因によるものなのか。今後日本市場でどのような法人ビジネスを展開していくのか。華為技術日本株式会社 副社長 端末統括本部統括本部長の呉 波氏に話を聞いた。

副社長
端末統括本部 統括本部長
呉 波氏
日本市場で急速にシェアを拡大。法人ビジネスに本格的に参入
BP:ファーウェイ・ジャパンは2005年に設立されてから今年で12年目を迎えますが、これまで日本市場で主にどのような取り組みを行ってきたのですか?
呉:ファーウェイの本社は中国にありますが、ファーウェイ・ジャパンはあくまでも日本の企業としてビジネスを展開しています。2011年に経団連に加入することができたのも、日本の企業としての活動が認められたことが大きな要因だと思っています。非常に光栄なことに、JCSSA(日本コンピュータシステム販売店協会)にも加入することができました。
当社が日本市場で端末事業を本格的に展開したのは2007年からです。以来、10年間という短い期間の中で大きな成果を上げることができました。例えば、Wi-Fiルーターは2008年と2009年に連続でシェアNo.1を獲得しました。同様に、キッズケータイやタブレットでもシェアNo.1を獲得しています。スマートフォンについては、2016年にSIMフリー市場で売上高No.1を達成し、スマートフォンの全体の市場の中で第4位のシェアを占めるようになりました。そのほか、デジタルフォトフレームなど多彩な製品を提供しています。
そうした中、わたしはこれまでキャリア事業を中心にビジネスを行ってきましたが、2011年に来日し、翌年の2012年から法人ビジネスを本格的に開始しました。以来、教育機関や通信キャリアなどのパートナー様を通じてビジネスを展開してきました。日本の法人市場は規模が大きく、さまざまな製品ジャンルがあります。その中で当社は、新規参入企業として日本市場のルールをきちんと守りながら、日本の一企業として市場の活性化に努めています。
しかし、当社はほかのメーカーのような上場企業ではないので、利益を第一に追求しているわけではありません。当社が目指しているのは、消費者のニーズに応える良質な製品を提供することによって、パートナー様とWin-Winの関係を築き、パートナー様と利益を共有することです。当社と協業することによって、ほかの協業者よりも、パートナー様がより多くの利益を得られるように努めることが当社のミッションだと考えています。
品質第一を徹底して貫き、消費者に安心感を与える
BP:ファーウェイの製品が日本市場で受け入れられた要因をどのように分析されていますか?
呉:日本の市場は、全世界の中で消費者が求めている技術的な要求が最も厳しい市場です。そのため、品質を第一に考えて製品開発に取り組んできました。日本市場に投入した製品は、すべて先進的な技術を搭載しています。特に日本では、スペックなどの数字では表せない「安心感」が求められています。そのため、先進的な技術を安心して使い続けることができるように、品質管理を徹底して行っています。この点が、日本の目の肥えた消費者の皆様に受け入れられた大きな要因の一つだと思います。
とりわけ、当社の大きな強みは、グローバルでビジネスを展開していることです。現在、ロシア、ドイツ、アメリカ、韓国、インド、日本などに16の研究開発センターがあり、それ以外にも世界各地に36の共同イノベーションラボがあり、それぞれの拠点でさまざまな先端技術の研究を続けています。例えば、ロシアの研究開発センターでは、アルゴリズムの研究を行っています。世界で初めてデュアルレンズのカメラを搭載したスマートフォンを発売できたのは、その研究成果のおかげです。その後、iPhoneにもデュアルレンズのカメラが搭載されましたが、当社の映像技術には遥かにに及ばないと自負しています。ちなみに、日本の研究開発センターは横浜にあり、主に素材やデザインに関する研究を行っています。
また、グローバルでビジネスを展開しているスケールメリットを活かすことで、製品の部材を安価に仕入れることができます。実は、当社の製品部材の50%以上は日本のベンダーから仕入れています。おそらく、日本のほかのメーカーよりも日本製の部材をより多く使用しているのではないでしょうか。それができるのは、世界規模で製品を数多く販売しているからです。例えば、2016年はスマートフォンだけで1億3900万台を出荷しています。タブレットなどの製品も含めれば、出荷台数はさらに倍増します。
法人向けラインアップを拡充し、2017年も新製品を続々と投入
BP:既に日本市場で多彩な製品を発売されていますが、今後日本市場にどのような製品を投入していく予定ですか?
呉:2016年に法人向けの2in1ノートPCの第一弾として、Windows 10を搭載した「MateBook」を発売しました。スマートフォンで培ったノウハウを活かし、従来の2in1デバイスの概念を覆す、洗練されたデザインを施しているのが大きな特長です。2017年も引き続き、日本の法人のお客様をターゲットにしたPCやタブレット製品ラインアップを拡充していく予定です。そのほか、最先端の技術を搭載したスマートフォンやウェアラブル端末などの新製品も順次リリースします。
例えば、2017年2月にリリースしたSIMフリースマートフォンの新ブランド「novaシリーズ」は、若い世代を主なターゲットにしています。「novaシリーズ」では、カメラのセルフィー機能を強化し、「メイクアップモード」を選択すれば、ノーメイクで撮影しても、まるでメイクをしたときのような美しい写真が撮れます。また、若い 人たちは夜遅くまで活動しているので、長時間使い続けることができるように大容量バッテリーを搭載しています。
このような独自に工夫を重ねた新ブランドの製品を投入することによって、日本の幅広い世代のお客様を取り込んでいきたいと考えています。


基本性能を極めることで、長期的な経営基盤を確立
BP:日本市場において、さらなるシェア拡大に向けて取り組んでいることはありますか?

呉:まず、シェアを拡大することは当社の一番の目標ではありません。スマートフォンにしても、タブレットにしても、PCにしても、10%のシェアを獲得したいといった明確な目標があるわけではありません。当社の毎年の目標は、世界で最も要求が厳しい日本市場で生き延びることです。というのも、グローバルで成功しているIT企業が、日本市場で必ずしも成功を収めているわけではありません。実際、以前は日本市場で大きなシェアを獲得していたIT企業が、今ではほとんど影響力のない存在になっているところも少なくありません。
当社は、そうした二の舞を演じないように、いわば長距離ランナーとして、日本市場で長期的に安定した経営基盤を確立したいと考えています。そのために最も重要なことは、クオリティを高めることです。クオリティを高めることで、自ずとシェアも拡大し、パートナー様もより多くの利益を得られるようになります。逆に、もしもパートナー様が安心して販売していただける品質がなければ、また、消費者にとって魅力ある先端技術をきちんと搭載できなければ、製品としての競争力を失ってしまいます。そうならないように日々努力しています。
例えば、当社が自社開発したチップセット「Kirin」は競争力のあるコア技術の一つです。もともと「Kirin」は、携帯電話の基地局に使用していたのですが、2009年頃からコンシューマ向けの端末製品にも使用するようになりました。現在、当社のミッドレンジとハイエンドのスマートフォンには、ほぼ全部「Kirin」を搭載しています。競合メーカーのチップセットは、発熱などの問題を抱えていますが、「Kirin」は発熱の問題をクリアしています。
チップセットの開発は一時的なものではなく、戦略的な取り組みなので、今後も継続的に開発を続け、IT業界をリードしていきたいと考えています。
パートナーと利益を共有し、安定したビジネスを展開
BP:SIMフリー端末については、日本の法人市場でも認知度が高まり、今後ビジネスとして大きく発展する可能性があると期待されています。日本のパートナー様が、そうした新たなビジネスチャンスをつかむためには、どのような取り組みを行うべきだと考えていますか?
呉:2016年は、SIMフリー市場で当社の存在感を高めた年でした。当社のSIMフリー端末は、ブランドとしての品質、新たなユーザーエクスペリエンスの提供などにおいて、多くのエンドユーザー様から非常に高く評価されています。2017年は、それが大きく実を結ぶ年になります。
そうした中で、日本のパートナー様にお伝えしたいことは、まずは当社との協業を始めていただきたいということです。実際、当社と協業しているドコモやKDDIなどの大手通信キャリア様は、当社の製品を毎年500~600万台出荷しており、大きな利益を得ています。
当社は、日本市場が求めているものを深く理解しています。製品の品質管理にも万全を期しています。そのため、当社と協業するパートナー様は、安心して自社のセールスに力を注ぐことができます。
また、当社はチップセットからネットワーク、端末まで含めたエンド・ツー・エンドのソリューションを提供できる唯一のメーカーです。グローバルな製品展開によるスケールメリットを活かすことで、優れたコストパフォーマンスを実現しています。
さらに最も重要なポイントは、当社は非上場企業なので、株主に対して利益を提供するのではなく、パートナー様と利益を共有したいと考えていることです。どのような協業においても、双方がきちんと利益を得られなければ、決して長続きせず、長期的に安定した協業関係を築くことはできません。そのため、法人ビジネスなどにおい て、協業パートナーの皆様にできるだけ多くの利益が得られるように、これからも努力を続けていきます。当社の製品をパートナー様のビジネスの拡大にぜひ役立てていただきたいと思います。
