【連載】
作業を効率化させる Excelテクニック集(3)
第3回 基本的な関数を身に付ける
掲載日:2022/03/01

Excelのメイン機能の一つ「関数」。使い方が分かれば便利な機能だが、Excel初心者にとってはハードルが高いとも言われている。Excelには500近い関数がセットされているが、それを全て把握する必要はない。基本的な関数を押さえれば、後は必要に応じて教本やネットで調べればいくらでも応用がきくようになるからだ。まずは定番の関数を使えるようになろう。
目次
関数の入力方法
関数の入力の仕方は5通りある。
1. 「数式」タブ>「オートSUM」ボタンを使う
2. 「数式」タブ>「関数ライブラリ」から選択する
3. 「fx(関数の挿入)」から選択する
4. オートコンプリートを利用する
※関数結果を表示するセルで=または@を入力し、関数の頭の方の文字を入力すると候補が表示される(SUMなら「=su」または「@su」と入力する)
5. タスクバー(数式バー)に数式を直接入力する。

その1 オートSUMから挿入できる関数
「オートSUM」はExcel関数の最初の一歩だ。計算するセルを選択し、「オートSUM」ボタンをクリックし、表示された中かから関数の種類を選択する。ここでは例として「平均(AVERAGE関数)」を選択する。

平均値は、選択したセルの下に表示される。
関数は数式の1種なので、頭に「=」が表示される。次の「AVERAGE」は関数の種類。()内は引数と呼ばれ、選択したセル範囲を示す。ここでは縦に連続したセルを選択しているため、D4からD9を示す(D4:D9)が、(D4,D6,D8)などとコンマで区切って複数セルを選択することもできる。

オートSUMでは平均(AVERAGE関数)のほかに、合計(SUM関数)、数値の個数(COUNT関数)、最大値(MAX関数)、最小値(MIN関数)が計算できる。つまり、オートSUMの使い方を知っていれば既に関数を5つ使えるということになる。
MAX関数、MIN関数は極端におかしい値を見つけるのにも有用だ。
その2 金額の計算に便利な「ROUND関数」
簡単な例を挙げると、100を3で割ると割り切れない。これを四捨五入して表示するときなどに使うのがROUND関数だ。切り上げに使うROUNDUP関数、切り捨てに使うROUNDDOWN関数と併せて覚えておこう。
基本の式:
四捨五入:=ROUND(セル範囲,桁数)
切り上げ:=ROUNDUP(セル範囲,桁数)
切り捨て:=ROUNDDOWN(セル範囲,桁数)
桁数は、小数点以下何桁まで表示するのかを指定する。整数で表示するなら0を入力すればよい。

上記は、A1セルの数値を四捨五入した数値をB1に表示させた。
その3 条件を設定して答えを判定する「IF関数」
さまざまな条件を与え、それに対する答えを返すIF関数。条件(論理式)は自在に設定できるため、あらゆる場面で活躍する。
基本形は以下となり、FALSEの場合を入れ子(ネスト)にしていくことで、条件を増やしていける。
基本の式:
=IF(論理式,TRUEの場合の表示内容,FALSEの場合の表示内容)
この例では、D10に平均値が表示されており、平均以上の場合は○、平均未満の場合は×を表示させた。
=IF(D4<=$D$10,"○",IF(D4<$D$10,"×"))
平均以上の場合に○を表示させ、平均未満は空欄にするなら以下の数式になる。
=IF(D5<=$D$10,"○","")

平均値が表示されているD10セルを、数式では$D$10としている。これを「絶対参照」という。それに対して、D4のように$を付けないものは「相対参照」だ。
なぜこのような使い分けをするのかというと、この数式を5行目にコピーすると、=IF(D5<=D11,"○",IF(D5<D11,"×"))となってしまうからだ。最初のD4の部分は、数式と同じ行を参照させるよう変化させたいが、平均値については固定で10行目を参照させたい。このようなときに、絶対参照と相対参照を使い分ける。
等号、不等号の使い方は算数・数学とは異なるため、下表をご参照いただきたい。
論理式 | 演算子の意味 | 説明 |
---|---|---|
A1=B1 | 等しい | A1の値がB1と等しい場合にTRUE |
A1<>B1 | 等しくない | A1の値がB1と等しくない場合にTRUE |
A1<B1 | 小さい(未満) | A1の値がB1より小さい場合にTRUE |
A1>B1 | 大きい(超) | A1の値がB1より大きい場合にTRUE |
A1<=B1 | 以下 | A1の値がB1以下の場合にTRUE |
A1>=B1 | 以上 | A1の値がB1以上の場合にTRUE |
その4 条件に合うデータをピックアップして集計する「SUMIF関数」
特定の条件に合う値を参照し、合計値を集計するのがSUMIF関数だ。
基本式:
=SUMIF(範囲,検索条件[,合計範囲])
※[]内の合計範囲は、数式によって省略できる。
ここでは担当者別の売上を集計してみよう。以下の例で、担当者ごとの売上を集計する数式は
=SUMIF($B$4:$B$15,F5,$D$4:$D$15)
となる。
$B$4:$B$15は参照範囲、F5は検索条件(担当者)、$D$4:$D$15は合計範囲だ。

その5 条件に合うデータを数える「COUNTIF関数」
男/女、出席/欠席、あるいは「名前に”木”が含まれる人」などさまざまな条件に合うデータ数を調べる。
基本式:
=COUNTIF(範囲,検索条件)
47都道府県で、島を含む、川を含む場所をそれぞれ数えてみる。
島を含む:=COUNTIF($A$2:$A$48,"*島*")
川を含む:=COUNTIF($A$2:$A$48,"*川*")

検索条件を""でくくっているのは、数値以外の文字だからだ。検索条件をセルで指定する場合は以下のように、“”は不要になる。
=COUNTIF($B$2:$B$16,D2)

○○という文字を含む、△△という文字で終わる、などの曖昧な言葉の条件指定には「ワイルドカード」を用いる。これには「島を含む」「川を含む」の例のように*(アスタリスク)を挿入しよう。
ワイルドカードは、あらゆる関数で使えるので覚えておくと便利だ。
入力例 | 意味 |
---|---|
"島" | 島と等しい |
"*島" | 島で終わる |
"*島*" | 島を含む |
"<>島" | 島と異なる |
その6 表を検索して値を抽出する「VLOOKUP関数」
Excel関数の中で、使用頻度の高い関数の一つがVLOOKUPだ。見積書や請求書などを作成する際、品番や商品名を入力すると、あらかじめ用意した価格表から自動で価格を入力してくれる。
基本式:
=VOOKUP(検索値,範囲,列番号,FALSE)
検索値は、キーになる値。下の例ではA4(5列目の検索値はA5、6列目はA6...)。範囲は、引用元(緑の表)の範囲なので、I4:I9(数式では絶対参照)。番号は、引用元の表の左側から1列目、2列目...となるので、製品名は2、単価は3となる。最後のFALSEは、検索値と完全に一致する値のみを抽出する。FALSEの代わりにTRUEと入力すると近似値を抽出する。
B4セルに入る数式は以下となる。
=VLOOKUP(A4,$I$4:$K$9,2,FALSE)

なお、VLOOKUPは別シート、別ブックからも参照可能だ。別シートから参照する場合は、範囲のセル番号の前に「シート名!」を挿入する。例えば、シート名が「マスター」で、A1:C10のセルから参照するなら、以下のようになる。
=VLOOKUP(A4,マスター!$A$1:$C$10,2,FALSE)
ここでご紹介した関数はごく一部だが、業務に必要なものから覚えていこう。基本的な関数はオートSUMも利用するなど、シチュエーションに合った活用をおすすめする。
参考:『Excel最強の教科書』SBクリエイティブ