【連載】
HCIの売り方(3)
Windows Server 2012 EOSの移行先選択は?
掲載日:2022/06/14

Windows Server 2012が2023年10月にサポート終了する。ある調査では、2021年6月時点で約41万台の物理サーバーでWindows Server 2012が稼動しているという。EOSが迫る中、その移行先提案をどう考えるべきなのか。
第1回「予算上限500万円。この条件で使えるHCIは提案できる?」はこちら
第2回「アフターコロナのサーバービジネス」はこちら
国内のサーバー運用の実情
Windows Server 2012 EOSの対応策を考えるには、現在、サーバーがどのように利用されているのかを理解したい。数年前より、サーバーは国内外を問わずクラウドの活用が推進され、その流れはコロナ禍により、いっそう加速している印象がある。
クラウドサービスには管理の簡素さ、セキュリティ面の強み、そして拡張の容易さなどのメリットがある。また、新たなビジネスを立ち上げようとする場合、ハードウェア調達が不要で迅速にプロトタイプが構築できるクラウドの魅力は大きい。
DXの観点からも業務システムのクラウド化が進むと見られているが、この大きな流れの中で、特に中堅中小企業(SMB)のシステム移行はどのような方向に進むのだろうか。
ワールドワイドでは、SMBの業務システムは今後クラウドに流れるという見立てが主流となる。ただ、国内に限ると必ずしもそうではない。その理由はエンジニアリソースがSIerに大きく偏るという日本特有の理由があるからだ。
クラウドのメリットを最大化する上で、マルチクラウドに代表される複数サービスの組み合わせによる最適化は避けて通ることができない。しかし日本企業の場合、専門知識を持つエンジニアを社内に確保していることは少ない実状がある。
そうした理由で、社内にエンジニアを擁しスムーズにクラウド移行できる海外企業とは大きな違いがある。社内にエンジニアを確保し、クラウド利用に求められる知識への学習を進めることが理想だが、企業文化は一朝一夕に変わるものではない。特にSMBの場合、SIerのエンジニアによる手厚いサポートが期待できるオンプレの強みは決して小さくないと考えられる。
Windows Server 2012 EOSに向けた対応策として、マイクロソフトが提案する移行シナリオはMicrosoft Azureを基盤とした提案を主軸としている。確かにクラウドへの移行は、さまざまなメリットがあるものの、国内特有の事情もあり、一概には決められないのが実情だ。
ファイルサーバーの移行は絶好の商機

Windows Server 2012の用途の中で大きな割合を占めるとされるファイルサーバーの移行先としては、ハイブリッドクラウドが有力な選択肢だろう。なぜならクラウド事業者はデータの可用性を完全に担保しているわけではないからだ。バックアップは利用者側で対策する必要があり、オンプレミスで管理できるなら安心だ。
順当な対策としては、Windows Server 2019以降へのアップグレードだ。サーバーを購入している場合は最も安価な提案となるが、パートナー様のビジネスとしては物足りない。この場合、新しいサーバーのセキュリティ面や操作性について、リプレースを提案したい。
例えば、HPE(ヒューレット・パッカード エンタープライズ)のx86サーバーHPE ProLiantに搭載される管理モジュールHPE iLO(Integrated Lights Out)のセキュリティ機能だ。サーバー自身のリソースから独立した専用ICであるHPE iLOの役割はSilicon Root of Trustに基きセキュリティを担保してくれる。
近年、ファームウェアやBIOSへのマルウェア攻撃も目立ちつつあるが、HPE iLOなら、起動時にファームウェア、BIOSの改ざんを検知し、真正性を担保することで攻撃を無効化してくれる。
さらに最新のオンプレサーバーは、クラウドサービスのような操作性を実現している。例えば、HPE iLOの管理通報機能は、社内に点在するサーバーをクラウド上で一元的に監視・運用する機能をas a Serviceとして提供できるのだ。さらにData Services Cloud Console(DSCC)であれば、エッジからクラウドまでデータの保存場所を問わず、データ管理を一元化することが可能になる。
HCI提案の観点からは、HPE SimpliVityの絶好の提案機会となる。「秒速バックアップ」を売りとするHPE SimpliVityは、「独自の重複排除テクノロジー」と「専用のハードウェアアクセラレーター」を搭載することにより、1TBのバックアップ/リストアを60秒以内で実行できる。このバックアップに特化した機能は、可用性を実現するための提案として強力な武器となるに違いない。

Active DirectoryやWSUS、VDIの対応は?
Active Directory(ID・認証)やWSUS(Windows更新管理サービス)は、オンプレミスでの運用も良いが、この機会にActive Directoryを『Azure AD』へ、WSUSを『らくらくWSUS』(大塚商会)へ移行する方法もある。Azure ADなら、社外のリモートワークの管理に対応できる。WSUSのサービスも比較的安価に提供されているので、管理の手間を考えるとこちらへの移行をおすすめしたい。
同様にデスクトップ仮想化(VDI:Virtual Desktop Infrastructure)もクラウドサービスが有力な移行先といえる。物理サーバー1台の上にVDIを何台も詰め込むと、ハードウェア故障のリスクは高まるからだ。また、自社のオンプレサーバーへ外部から一斉にアクセスがあると回線容量の問題が新たに生じる。冗長化を考えると、クラウドサービスのWindows 365、もしくは、データセンターでのHCI(ハイパーコンバージドインフラ)の運用をおすすめしたい。
サーバー仮想化の場合なら、検証済みハードウェアで仮想環境を実現する、HCIソリューションである「Azure Stack HCI」に注目したい。Azure Stack HCIは、「Azure」と連携することで、ハイブリッドクラウドとして利用でき、一部のクラウドサービスをオンプレミス環境で利用できる。最少2ノードから利用でき、スモールスタート可能な点もメリットだ。
国内企業のクラウド移行は、エンジニアの偏在という特徴もあり、課題が多い。こうした中、エンドユーザー様に応じた最適解を提供するのがパートナー様の役割になると考えられる。
Windows Server 2012 EOS商戦では、エンドユーザー様の運用用途に合わせて、オンプレ、クラウドの切り分けを行うことで、課題に応じたシステム構築をサポートできるのではないだろうか。
