組織改革

ハイブリッドワーク時代に見逃せない
人事評価制度の見直し

掲載日:2021/07/27

ハイブリッドワーク時代に見逃せない人事評価制度の見直し

コロナ禍において、「ハイブリッドワーク」という新しい働き方が急激に増加している。しかし、働き方が多様になるにつれ、従来の社内制度での正しい人事評価に課題を感じる企業も少なくない。こうした課題に対し、解決の糸口を示すソリューションを紹介する。

新しい働き方「ハイブリッドワーク」

近年増加しているハイブリッドワークとは、出社勤務とリモートワークとを掛け合わせた働き方のことだ。コロナ禍に即した働き方であるうえ、オフィススペースの削減などの理由で固定費が削減され、さらに業員一人一人が満足に業務を行える環境を提供されるために生産性が向上し、働き方改革が実現するなどのメリットもある。

その一方で、ハイブリッドワークを導入した場合、旧来の人事評価制度では社員の評価が難しいという問題も存在する。

これまでの人事評価制度

これまでの日本企業では、能力主義をベースに成績や役職を加味した評価制度が主流だった。このような制度では行動プロセスも評価対象となる。従ってオフィスに集まって働くスタイルであれば、管理者がフロアにいる社員の様子を確認するだけで勤務内容を大まかに把握できた。

しかし、リモートワークでは勤務内容を直に確認することができないため、これまでの評価方法が通用しない。また、対面であれば社員の勤務態度を容易に確認できたが、ビデオ会議などの画面越しでは把握するのも困難だ。出社勤務を行う社員と、リモートワークを行う社員とで、勤務状況の把握に差が生じてしまうことになる。

働き方改革への注目度アップや、コロナ禍でのハイブリッドワークの普及により、従来の働き方が変わり始めている。従来の評価制度のままで人事評価を行うことは不十分だというのは、多くの企業が認識していることだろう。

リモートワーク下の人事評価の課題

株式会社あしたのチームが2021年5月に公表した「コロナ禍のテレワークと人事の課題に関する調査」によると、対象の管理職のうち61.1%が「リモートワーク時の人事評価は出社時と比較して難しい」と回答している。その理由は以下のとおりだ。

・勤務態度が見えない
・成果につながる行動を把握しづらい
・正確な勤務時間がわからない

同調査によると、このような状況を受けて14.4%が「リモートワークに合わせて人事評価制度の改定が行われた」と回答。25.5%が「まだ行われていないが、準備中」と回答したという。実態としては、8割以上の企業がいまだにに働き方に合わせて人事評価の改訂をしていないことになる。

しかし、同調査が2020年に公表した結果と比較すると、「リモートワーク時の人事評価は出社時と比較して難しい」という回答は12%ほど改善している。また、課題への対策としてミーティングの増加やスケジュール、タスクの共有を行ったという声が多く上がっていることから、各企業の改善意識がうかがえる。

適切な人事評価に向けた取り組み

時代に即した人事評価を実現するためには、適切な人材管理が欠かせない。そのための第一歩として、勤務状況を把握し、管理の手助けができるツールの利用をおすすめする。実際にさまざまなツールを活用し、リモートワーク下の社員の適切な管理に成功した事例を紹介しよう。

人材管理システムで、社員の勤務態度を確認

主に営業代行事業を営むA社では、人材の適正配置のために、社員のコンディション把握に有用な人材管理システムを導入した。このシステムは、対象社員に勤務態度を把握するための定期的なアンケートを共有し、その結果を集計・分析する機能を有している。素早いフォローが実現し、適切な人材管理が可能だ。

また、同社では設定した基準を下回る回答の社員には別途面談の機会を設けるなどしてメンタルケアを実施し、遠隔地にいても対面で接しているような素早いチェックとフォローが可能になった。

業務の動きを見える化し、社員の行動を把握

B市の自治体では、リモートワークの業務基盤として専用のデータ管理クラウドサービスを導入した。このサービスは業務上必要なデータのやりとりはもちろん、勤務進捗状況の分析機能やチャット機能なども利用できる。これを生かして社員の行動の把握が可能になった。

また、タスク把握にもこのサービスを利用することで、業務の動きを「見える化」。さまざまな場所で行われる業務の進捗を一元的にチェックできるようになったことで、管理者の負担も大幅に軽減されているという。

勤務時間を記録し、残業増加リスクも抑止

システム事業を営むC社では、リモートワーク下での勤務の実態を把握できるシステムを導入した。このシステムは勤務時間の記録に利用可能なほか、あらかじめ設定した時間になると各社員のPC画面上に残業を警告するポップアップを表示する機能も含まれている。

さらにC社では、ポップアップ表示後は残業理由と時間を申請するルールも設定。リモートワークならではの「ついつい勤務がだらけて、残業時間が増えてしまう」という問題を抑止しつつ、必要な残業が適切に行われているのかを上司が確認できるような仕組みを作った。

ここ1、2年で急速に普及したハイブリッドワーク。その普及とともに人事評価制度の見直しに関わる情報はより一層各企業から注目されることになる。人事評価システムや勤怠管理システム、コミュニケーションツールなどの需要もまだまだ高まるだろう。ビジネスチャンスを逃さないために、各企業の動向に注目していきたい。